踊り字
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踊り字、躍り字(おどりじ)は、日本文字表記で使用される約物(特殊記号)の一つで、々・ヽ・ゝなどの記号を指す。おどり、繰り返し符号(くりかえしふごう)、重ね字(かさねじ)、送り字(おくりじ)、揺すり字(ゆすりじ)、重字(じゅうじ)、重点(じゅうてん)、畳字(じょうじ)、などとも呼ぶ。
また、踊っているように書かれた下手な字のことも指す。
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[編集] 同の字点(どうのじてん)
- 々
-
- 々(Unicode U+3005、JIS X 0213 1-1-25)
由来は、「同」の旧表記である「仝」が変化したというものや、二の字点が変化したというものなど、諸説ある。字形から俗に「ノマ」とも呼ばれる。
- 同じ漢字を2つ重ねるときに、2文字目の文字の代用として用いられる。現在では「会社社長」「民主主義」のように意味が区切れる場合は使用しないことになっている。しかし、以前からの名残で現在でも「公演会々場 」のように使われる例も多い。
- 例:「時時」⇒「時々」
- 連続した漢字2字を連続したまま重ねるときにも使う。
- 例:「賛成賛成」⇒「賛成々々」・「後手後手」⇒「後手々々」
- 原稿用紙などで一番下と次の行の一番上のマスにかけて、例えば「散々」などと表記する場合は散散と書く。従って、行の一番上のマスに「々」が来ることはない。
- パソコンの日本語入力用ソフトウェア(IME)の内でもATOK、Japanistでは「のま」で変換が可能。これについては、元々はJapanistの前身である富士通OAKが便宜上用いた事がルーツとされる。
- また「ノマ」という読み方自体が世間に広まった理由としても、かつて富士通ワープロ・パソコンのコマーシャルに出演していた当時のタモリが、テレビで「のま」で「々」に変換できるという事をネタにしたことがきっかけであった、という説が存在する。
[編集] 一の字点(いちのじてん)
- ゝ ヽ ゞ ヾ
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- ゝ(Unicode U+309D、JIS X 0213 1-1-21)
- ヽ(Unicode U+30FD、JIS X 0213 1-1-19)
- ゞ(Unicode U+309E、JIS X 0213 1-1-22)
- ヾ(Unicode U+30FE、JIS X 0213 1-1-20)
平仮名を2文字重ねるとき「ゝ・ゞ」を、片仮名を2文字重ねるとき「ヽ・ヾ」を使用する。昨今の文章では余り用いられない。
- 例:「いすず」⇒「いすゞ」・「アーティスト」⇒「アヽチスト」
- 1文字目に濁点がつく場合は、「ゝ」は濁点のない仮名を重ね、「ゞ」は濁点のつく仮名をそのまま重ねる。
- 例:「づつ」⇒「づゝ」(旧仮名遣い)
[編集] 二の字点(にのじてん)
- 〻
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- 〻(Unicode U+303B、JIS X 0213 1-2-22)
「二」の字が崩されてできた記号。揺すり点(ゆすりてん)とも呼ばれ、主に縦書きの文章に用いる。「上の字を重ねて訓読みにせよ」というときに使用するが、現在は「々」で代用されることが多い。
- 例:「各各」⇒「各〻」(おのおの)・「窶窶」⇒「窶〻」(しばしば)
※文章を繰り返す際に使う「〃」は、「ノノ点」・「ノノ字点」と呼ばれ、二の字点とは別のものである。
[編集] くの字点(くのじてん)
- 〳 〴 〱 〲
- 〵 〵
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- 〳(Unicode U+3033、JIS X 0213 1-2-19)
- 〴(Unicode U+3034、JIS X 0213 1-2-20)
- 〵(Unicode U+3035、JIS X 0213 1-2-21)
- 〱(Unicode U+3031)
- 〲(Unicode U+3032)
平仮名の「く」の字を延ばしたように書き、縦書きの文章のみに用いるが、昨今は余り使われない。横書き時に同様の表記を行う場合には、二倍ダーシや二倍ダーシの上に濁点を付けた約物が使用されることが多いが、「へ」の字を横に伸ばした字形や、くの字点を左90度回転させた形で使用することもある。
- 2~4字の複数の文字を繰り返す場合に用いる。
- 例:「まあまあ」⇒「まあ〱」
- 繰り返した2字目以降の文字が濁音化する場合は、この記号に濁点がついたものを使用する。
- 例:「しかじか」⇒「しか〲」
一の字点とは違い、1文字目に濁点がつくときは、「〱」だけを用いると濁点のつく文字をそのまま重ねる。
[編集] 日本以外の用例
- 台湾でも踊り字が使われることがある。例えば中国語「謝謝」は「謝々」と書く場合もある。但し正書法ではないので公式の文書では用いない。