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躰道

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

躰道たいどう)とは祝嶺正献(しゅくみね せいけん)が沖縄に伝わる手(ティ)や空手を母体として、玄制流空手道を創始し、それらを元に昭和40年に創始し、体系化した武道である。なお、躰道創始後も玄制流空手道は独立して存続している。

目次

[編集] 躰道の創始者・祝嶺正献

  • 躰道は祝嶺正献によって創始された。大正14年、沖縄県名護市生まれ、昭和8年、佐渡山安恒に初めて空手を学ぶ。昭和12年、岸本祖孝に師事。昭和28年、玄制流空手道を創始。昭和40年に躰道を集大成し1月23日日本躰道協会設立同協会会長・日本躰道本院宗家・最高師範に就任。昭和58年、世界躰道連盟設立、同連盟総監就任。平成13年11月26日、静岡県伊東市の躰道本院「岳雲荘」にて没す。享年76。
  • 祝嶺正献には数々の人間離れした伝説(事実)がある。1・瓦36枚割。2・空中六段蹴り。3・ランニング中人越えバック宙。4・片手親指側転等...

[編集] 躰道の語義

    • =身が入る・身がこもる=心=意識的な精神活動
    • =動く基・行動・動作=からだ=行動的な肉体活動
    →主体的人間
    • 人の行うべき道=倫理的目標
    • 奥義に至る道=創造的目標
    →公道=ヒューマニズム

[編集] 躰道成立までの歴史

  • 昭和20年 - 第二次世界大戦の末期、旋運変捻転の運動原理を基にした動態に発想を得て、三次元の運動空間に適応できる技術を編み出す。
  • 昭和21年 - 大分県海部郡明治村の山中にあり技法の構想を得る。
  • 昭和23年 - 沖縄県国頭郡九志村の海上にある無人島で運技・変技・転技の一部を創作。
  • 昭和24年 - 静岡県伊東市で初めて技術を公開。
  • 昭和28年 - この年より約10年間、玄制流空手道として東京を中心に大学・自衛隊・会社等で実験的に指導を続ける中で新武道を創造するための基礎的な内容を整える。
  • 昭和37年 - 旋技・捻技を完成
  • 昭和38年 - 「躰道」として原理化をはかる。
  • 昭和40年 - 動功<操体の原理>制御<相克の原理>体気<呼吸の原理>法形<体・制・玄>経穴<陰陽の調整>などと「物理像」「生理像」「心理像」「情緒像」を一元的に体系化し、理論的な統括原理を確立して「躰道」を集大成。1月23日、日本躰道協会日本躰道本院設立。なお、1月23日は1・2・3と躰道のこれからの発展を祈ってこの日に設立したという経緯がある。

[編集] 躰道五条訓

  • 一、心明鏡にして諸行の実相を写し 心位正しきを得れば惑わされる事なし
  • 一、態端正にして心形の一体を図り 態位正しきを得れば侮られる事なし
  • 一、氣充溢にして精氣を丹田に発し 氣位正しきを得れば恐れ戦く事なし
  • 一、行実践するに倫理の常道を守り 行位正しきを得れば誤り行う事なし
  • 一、技応変にして身体を自在に写し 技位正しきを得れば制される事なし

[編集] 躰道歌 

  • 躰道には、躰道の歌がある。歌詞は投稿できないのが原則なので載せる事はできないが、歌詞のほとんどが七五調である。

[編集] 躰道の段級位

  • 躰道の段位は最高段位を十段として最低段位を初段としている。級位は最高級位を一級として最低級位を六級とする。
  • 十二歳未満の子供には上階・中階・下階の段階を設け各階最高を一級、最低を五級とする。
  • 躰道の昇段級審査は学科・実技(法形・攻防(級位は約束攻防、初段を含む段位受審は自由攻防))で行われ、学科・実技が共に80点以上で昇段級し、さらに実技90点以上であれば、飛び級することができる。段位はどんなに点が良くても一段位しかあがらない。
  • 各審査員の審査の範囲は最高師範及び範士は全段級位及び称号各位の審査を実施でき、教士は三段まで、練士は一級まで審査を実施することができる。

[編集] 躰道の術技

  • 躰道は原態の三つの構えと、空手とは違い運足と呼ばれる移動方法を用い、操体と呼ばれる五つの体の動かし方、操体時の注意点といえる動攻五戒、操体から蹴りや突きを出す基本技、が術技としての重要な事項である。
    *注:基本技はあくまで基本であり、創造進化・応用を求める躰道においてはさらに多くの技が存在する。

[編集] 構え

躰道には上段・中段・下段の三種類の構えがある。

====上段の構え==== - 立ち方・竜捻立、体の状態・直身の体-添え手を上段から払い落とした位置で本手の前腕を垂直に立て、主に上段部への攻撃を払い受けた状態での構えであり、自分を中心に全方位に対応するための構えである。

====中段の構え==== - 立ち方・後屈立、体の状態・半身の体-躰道の最も中心的な構えで、本手を帆立上にし四指をそろえ正中線の前方へ立て、主に中段部への攻撃に備えた構えであり、実技展開・相対・運足時・原態に戻るときに用いる。剣豪宮本武蔵は「五輪書=水の巻 五方の構えの事」の中で、「此道の大事にいわく、構えのきわまりは中段と心得るべし。中段、構えの本意也。」とし、中段構えの大切さを説いている。

====下段の構え==== - 立ち方・え字立、体の状態・開身の体-本手を下段払いのように斜め下方に出して引き手は引き拳で主に下段部への攻撃に備えた状態の構えであり、通常は法形や実戦等の実技展開の開始時や終了時に用いる場合が多い。

[編集] 運足(うんそく)

ここでいう運足とは躰道独自の移動方法である。三次元での動きを重視する躰道の中でも、殊に平面的移動(フットワーク)の方法として最も重視される。

運足は移動方法として八種類あり、それぞれ「送足・引足・加足・減足・交足・点足・追足・退足」と呼ばれる方法がある。これらを総じて「運足八法(うんそくはっぽう)」という。

運足は基本的にはこの八種類であるが、これらを応用し様々な角度に応用・創造したものが実戦的に利用されている。むしろ、そのように応用・創造していかなければ躰道の実技を用い相手を制することは難しい。運足八法のほかに、構えたままスッテプインして踏み込む「二の足」と呼ばれる技術は特に代表的な応用・創造的移動方法であろう。

[編集] 操体(そうたい)

操体とは躰道の基本的五動作であり、それぞれ旋体・運体・変体・捻体・転体と呼ばれる。また、ここでは動攻五戒基本技もあわせて紹介する。

  • 動攻五戒とは各基本技を行う際の五つの戒めであり、
    1. 攻撃の状態
    2. 防御の要点
    3. 動作の形態
    4. 攻撃の方法
    5. 攻撃の目標
    となっている。尚、各操体の動攻五戒の意味は後述する。

[編集] 旋体(旋技)

旋体(旋技)とは、前足または後ろ足を独楽の足のような中心軸とし、体軸(脊柱軸)を旋回させる事で、独楽状の旋回運動状態から行われる攻防一体の武技である。林の中を風が吹き抜けるようなイメージ。

  • 旋技の動攻五戒
    1. 旋体風林・・・林の中を風が疾風旋動して体を独楽状に早く旋回させながら技を施せという戒め
    2. 起発制肩・・・肩や胴を制される事がないように、すばやく旋回せよという戒め
    3. 楕円降下・・・同じ位置で回るのではなく、前進後退しながら降下するように身を低くして行えという戒め
    4. 三動一体・・・防ぎ手、差し込む二の足、回る腰の三つの動きが一体となるように行えという戒め
    5. 雁下即決・・・身体が回っていくので目標を真ん中に置くのではなく手前の雁下(脇腹)に置けという戒め
  • 基本技
    • 旋体直状突き、旋体斜状蹴り、旋体回状蹴り、旋体逆旋当て、旋体鉄肘当て、旋体膝頭当て
    • 旋体背面取り、旋体払い崩し

[編集] 運体(運技)

運体(運技)とは、体軸が演武軸に対して平行であり、後ろ足を勢い良く前方に移動させる、飛び跳ねて攻撃する等、身体全体を勢い良く移動させる事で生まれる全身移動の力を加えた動きである。荒れ狂う浪が岩に打ち付けるイメージ。

  • 運技の動攻五戒
    1. 運体激浪・・・上下しながら打ち寄せる荒浪が、固い岩を打ち砕くように激しく技を施せという戒め
    2. 起発制足(膝)・・・前に出る蹴り足やその膝を制されないように高足・鈍足・浮足に注意し素早く行えという戒め
    3. 足甲踏跌・・・防ぎ足や蹴り足が着地する際にその足を用いて相手の甲を踏み砕くように行えという戒め
    4. 三節一体・・・突き手の手、防ぎ手の肘、前に出る足の膝の各関節を前胸部に集めて防御しながら行えという戒め
    5. 関元即決・・・体が高い状態から低い状態でまっすぐに移動するので、目標を下腹部の関元に置けという戒め
  • 基本技
    • 運体え字突き、運体正面蹴り、運体飛燕蹴り、運体伏状蹴り、運体臥状蹴り、運体踏み当て
    • 運体前面捕り、運体逆手捕り、運体逆足捕り、運体押し崩し

[編集] 変体(変技)

変体(変技)とは、切られた木が倒れるように体軸を一定の角度を取りながら倒す事で相手の攻撃をよけながらも、その倒れる勢いを使い自らも攻撃することができる攻防一体の武技である。

  • 変技の動攻五戒
    1. 変体雲風・・・雲が風になびいてその影が変幻するように、身体を素早く倒し、変化させながら行えという戒め
    2. 起発制股(踵)・・・起発部位となる股間や軸足の踵を制されないように行えとの戒め
    3. 応変風靡・・・相手の動きに逆らわず身体が風に靡くように前後左右に倒しながら行えという戒め
    4. 三鼎共合・・・軸足と身体を倒した際に着く手の位置が正三角形になるように身体を安定させながら行えという戒め
    5. 気海即決・・・体を倒すため低い位置から斜め上方に向かって気海を目標に技を施せという戒め
  • 基本技
    • 変体海老蹴り、変体旋状蹴り、変体卍蹴り、変体水平蹴り、変体逆状蹴り、変体掛け崩し

[編集] 捻体(捻技)

捻体(捻技)とは、体軸、上半身と下半身ねじる・ひねることによって生まれる力を利用した動きである。

  • 捻技の動攻五戒
    1. 捻体渦生・・・渦が何かを巻き込み、吸い込むように行えという戒め
    2. 起発制背(胸)・・・気発部位となる背や胸を制されないように素早く行えという戒め
    3. 股間触発・・・相手の身体が自分の股間に触れるように深く挟むと同時に素早く捻れという戒め
    4. 両腿挟圧・・・相手の身体を両方の太腿の内側で強く締め付けるように捻りながら行えという戒め
    5. 天地即決・・・相手の首や胴から技が外れても下にある脚を狙うように目標を上下において行えという戒め
  • 基本技
    • 捻体順(逆)足絡み、捻体順(逆)胴絡み、捻体順(逆)首絡み、捻体半月当て


[編集] 転体(転技)

転体(転技)とは、体軸を前後左右上下へ回転させる運動によって生まれる勢いを利用した動きである。器械体操の床運動(前転・バック転・宙返り等)を利用した、躰道で最も他武道との違いを感じさせる動きである。

  • 転技の動攻五戒
    1. 転体雷動・・・雷が稲妻や雷鳴を放つように相手の的を打ち砕く勢いで行えという戒め
    2. 起発制腰(臀)・・・起発部位として回転する腰や臀部を制されないように素早く行えという戒め
    3. 急転雷火・・・相手の動きに逆らわず雷や稲妻のように自在にどこへでも動けるように回転して行えという戒め
    4. 三曲同折・・・首・腰・膝の三関節を同時に曲げて、滑らかに素早く回転しながら行えという戒め
    5. 間合即決・・・相手との間合いに応じて回転の距離や二の足の距離を調節しながら行えという戒め
  • 基本技
    • 転体(背)前転突き・蹴り、転体(背)後転蹴り、転体腕前(後)転(ハンドスプリング・バック転)突き、
    • 転体側転突き・蹴り、転体側宙突き・蹴り、転体宙前(後)転突き・蹴り、転体捻宙突き・蹴り

[編集] 躰道の競技

[編集] 法形

  • 法形とは空手で言うところのである。空手道の型は足技・肘技・呼吸法等によって種類が区別されているが、躰道では動功(操体の法則)に基づく体の操作による区別、制御(相剋の法則)に基づく区別、体気(呼吸の法則)に基づく呼吸法による区別によって各法形が構成されている。
  • 法形には一人で行う個人法形と、五人一組で行う団体法形と呼ばれるものがある。
  • 法形競技は、選手が正面に向かって行い、左側が赤で隣の選手とぶつからないように少し前へ出ており、右側が白で同じく少し後ろへ下がっている。審判は主審一人副審二人の三人制赤白の旗による判定で行われる。個人法形は畳のラインを出てもかまわない。
  • 団体法形競技は五人一組で行い、演技の隊形・方法・演出は任意とされる。団体法形は主審一人副審二人の各審判10.0点満点(少数第一位まで)最高30.0点の点数表示法で行われる。団体法形は法形の十大要素と調和・迫力を評価基準とされる。団体法形は畳のラインから出てはならず、一回場外に出るごとに一点減点される。
  • 法形の種類・・・旋・運・変・捻・転体の法形、旋・運・変・捻・転陰の法形、天・地・仁制の法形、勢・延・活命の法形、陽・陰玄の法形がある。

また、躰道の原型のものとして公相君(クーシャンクー)の型、体位の法形と呼ばれるものもある

[編集] 実戦

  • 実戦とは空手で言うところの組手であり、有効・技有・一本のポイント制である。有効二回で技有一回に、技有二回で併せ技一本になる。また、同じように注意・警告・失格(退場)の反則となるルールも存在し、失格は相手側の一本勝ちとなる。また、「限角ルール」・「運足20秒ルール」というものがあるが、素人目には何故そういう状況になっているのか全く分からない。
  • 実戦には個人実戦と五人一組の団体実戦がある。
  • 団体実戦では一人一人1~5の番号を選択し、1・旋運、2運変、3・変捻、4・捻転、5・転旋、の各技でポイントを取ると、本来与えられるポイントよりも高い評価がもらえる(例えば、1番を選択した選手が「旋体の突き」で相手を制し、その攻撃が「技有」程度の極め技であったとしても「一本」の判定になる)。勝ち数の多いチームが当然勝利になるが引き分けにより勝ち数が同数の場合は、一本勝ちの多いチームが勝利チームとなる。一本勝ちも同数の場合は代表者による決定戦を行う。代表決定戦を行っても決まらない場合は、審判の合議で延長戦を、さらに決まらない場合合議により再延長戦または試合内容による判定で決定される。

[編集] 展開

展開競技とは躰道独自の競技であろう。主役とされる人間一人に対し、五人の脇役とされる人間が一斉に襲い掛かるものであり、主役は25~30秒以内で脇役全員を倒さなければならない、実戦的要素と法形的要素の織り交ぜられた競技である。展開は各チームが任意に創作した実技を応用展開して競技する。脇役には背番号が与えられており、1・旋、2・運、3・変、4・捻、5・転の各技を主体にし、主役は五人の脇役の実技に対し任意の実技で応戦処理する。脇役が各番号主体の技(操体)以外の技を出すことは任意であるが、主役に対する極め技(死に際)は必ず各主体番号の技を出さなければならなず、また、それまでに最低2回主体番号の技を出さなければならない。主役がどの番号の脇役をどんな技で倒すかは自由であるが、しっかり極まらないと評価が落ちる。競技の判定は実技の内容・効果・間合・調和を基準として行われ、主役脇役各人に一人ずつ計六名の審判が付く。判定は点数表示法で、主審(主役並びに展開内容等全体の点数評価)が20.0点(少数第一位まで)、各副審(各脇役の点数評価)が10.0点(少数第一位まで)ずつ、主審副審計70.0点満点で競技内容が評価される。時間超過不足、場外に出る(死に際は除く)、技数不足、極め技間違い等の場合は合計点数から躰道競技規定に定められている点数が引かれる。

[編集] 躰道協会

  • 躰道は世界躰道連盟を元に、日本・フィンランド・アメリカ・フランス・スウェーデン・イギリス等に各国躰道協会が存在する。

[編集] 日本躰道協会

日本を統括する躰道協会である。略して日躰協(にったいきょう)と呼ぶこともある。日本躰道協会の元に各道府県躰道協会がある。その中で、市町村や地区によって道場が開かれ日々鍛錬に励んでいる。また、高校大学に躰道部が存在し、特に大学躰道部の活動は近年盛んになっており、活動大学が増加傾向にある。

[編集] 各躰道協会

北海道・青森県・山形県・宮城県・福島県・岩手県・新潟県・富山県・群馬県・千葉県・茨城県・埼玉県・東京城北・東京城西・東京城東・東京城南・東京多摩・神奈川県・静岡県東部・静岡県西部・山梨県・大阪河内・大阪摂津・愛知県・和歌山県・兵庫県・広島県・沖縄県に躰道協会がある(大学のみの協会を含む)。

[編集] 大学躰道部(サークル)

北海道大学(本校・函館)・北海道医療大学北里大学(十和田・三陸・相模)・東北学院大学東北福祉大学福島県立医科大学城西大学東京国際大学千葉工業大学防衛医科大学東京医科歯科大学大東文化大学二松学舎大学法政大学早稲田大学国士舘大学東京大学拓殖大学東海大学(湘南・清水)・神戸学院大学福山大学琉球大学等に大学躰道部がある。毎年10月に行われる全国学生躰道優勝大会ではこれらの大学のほかに道場の大学生個人選手が出場することも可能であり、幼いころから躰道の教育を受けている道場出身個人選手は高い能力を発揮し、大学からはじめたという人の多い躰道界では良い見本となる。

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