陸軍中野学校

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』

陸軍中野学校 （りくぐんなかのがっこう）は、諜報や防諜、宣伝など秘密戦に関する教育や訓練を目的とした旧日本陸軍の学校。現在は廃止されている。所在地は、現在の東京・中野駅前。通称号は東部第33部隊。

創設の動きは1937年(昭和12年)、戦争形態の加速度的進化で謀略の重要性が増し、日本が世界的な流れから置いていかれることを怖れた岩畔豪雄中佐が、参謀本部に「諜報謀略の科学化」という意見書を提出したことに始まる。同年暮れ陸軍省が中心となってその創設を決定。岩畔、秋草俊、福本亀治各中佐が中心となって開校された後方勤務要員養成所が前身である。1940年に陸軍中野学校と改名し、のちに参謀本部直轄の軍学校へ転身。

東京・九段の愛国婦人会本部の別棟が仮校舎で、その存在は陸軍内でも極秘であった。その後、空襲の激化に伴い群馬県富岡町に疎開する。当初は純粋なスパイ技術養成機関であったが、太平洋戦争の開戦を機にゲリラ戦術教育機関（米陸軍の特殊戦スクール相当）へと変貌する。

インドネシアはじめ、戦後の東南アジアの独立戦争に携わった卒業者も多くいると言われている。

戦後、用地は警察大学校へと転用されたが、警察大学校も2001年(平成13)に府中市へ転出しており、現在は校舎などは廃墟のまま放置され、再開発などが検討されている。

学生は、現役軍人や候補生から選抜され、軍服は着ず、平服姿で長髪が推奨されていた。 1938年に前身が開校するまでは統合された教育機関がなかったため、日本陸軍にとっては有意義であったが、遅きに失した観はある。各種遊撃、潜入、工作活動などを学習した中野学校出身者は太平洋戦争中も活発に活動をした。アジア各地で各種機関を設立して義勇軍の育成や諜報活動に任じたが、太平洋戦争末期は遊撃戦要員として戦闘に加入した者も多くいた。沖縄戦においても義烈空挺隊に数名が要員として参加している。太平洋戦争終結で幕を閉じたため活動は8年間、卒業生は2500余名である。

1966年から1968年にかけて5本が製作された映画、市川雷蔵主演「陸軍中野学校」シリーズ（大映）は、邦画では珍しいスパイ映画で時代劇スター・市川雷蔵の初めての現代劇での代表作として知られる。