集団安全保障
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
集団安全保障(しゅうだんあんぜんほしょう collective security)は、国際安全保障の方式の一種である。
[編集] 概説
集団安全保障とは全世界的な国家集合において、第一に紛争を平和的に解決すること、第二に武力行使した国に対して他の国家が集合的に強制措置を行い、侵略を阻止し、安全を確保する安全保障の国際的な体制をいう。これが現実的に実現するためには以下の条件が必要であると考えられている。
- (1)集団安全保障機構が構成国の中で最強の軍事力を有すること。
- (2)構成国、特に先進国が、自国の国益よりも国際社会の利益を重視して、機構の強制措置に協力すること。
- (3)維持すべき現状(どのような平和を維持すべきか)について、また平和を破壊する行為をどのように認定するのかについて、構成国、特に先進国が共通認識を持つこと。
しかし以上の条件を全て満たす国際機関は歴史的に例になく、またこれからも実現する可能性は極めて低い。
第一次世界大戦以降、国際安全保障体制が、結果として戦争の抑止にならず、世界大戦を起こす要因となったことから、アメリカのウッドロウ・ウィルソンアメリカ合衆国大統領により、新たな安全保障モデルとして提唱されたものである。この集団安全保障を実践しようとしたものが国際連合であるが、実際に考案した国連軍が編成されることもなく、計画通りに機能してはいない。ただし1990年の湾岸戦争においては多国籍軍が編成されて強制措置を行うことができた。
[編集] 参考文献
防衛大学校・安全保障学研究会 責任編集 武田康裕、神谷万丈 『最新版 安全保障学入門』 亜紀書房