053型フリゲート
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053型フリゲートは中華人民共和国が開発したフリゲート。多くのバリエーションがあり、この項ではその全てを扱う。
[編集] 歴史
1950年代、ソ連は中国に4隻のリガ型フリゲート(成都級フリゲート)および4隻のゴールドゥイ級駆逐艦(鞍山級駆逐艦)を供与した。これらの戦闘艦は1950年代から1960年代にかけて中国人民解放軍海軍の主力を成した。中ソ対立後、中国はソ連から新たな艦船を入手できなくなった。そのため、701機関はリガ級のリバースエンジニアリング を任されることになった。最初のリガ型のコピーは1963年に広州造船廠で完成した。その命名については二つの説があり、一部はそれが就役した年(1965)に因んで065型(江南型フリゲート)と名付けられたと主張し、他はこれが最初の053型フリゲートだと主張している。
1960年代、701機関はリガ型の船体設計を元に新たに2タイプのフリゲートを開発した。最初のタイプは防空用で、053K型(江東型フリゲート)と呼ばれている。053K型はアメリカのRIM-2 テリアSAMMk 10 2連装発射筒に似たHQ-61B SAM2連装発射筒を2基を装備されている。不満足な出来だったためか、053K型は1~2隻しか建造されなかった。第2タイプは対艦ミサイル搭載型で、053H型(江滬I型フリゲート)と呼ばれている。053H型はSY-1対艦ミサイル3連装発射筒を2基、100m単装砲を1基を装備している。053H型は対艦ミサイルを主武装とし艦船攻撃の役割を担っていた。053H型の初艦はHudong造船所で建造され、1970年代中期に就役した。少なくとも12隻の053H型フリゲートが建造され、中国人民解放軍海軍の東海艦隊に編入された。その後も、中国は053H型の改良型を開発しつづけ、それぞれNATOコードネームで江滬II型フリゲート、江滬III型フリゲート、江滬IV型フリゲート、江滬V型フリゲートと名付けられた。53H型の後継者たる053H2G型フリゲートはNATOコードネームで江衛I型フリゲートと名付けられた。その改良型である053H3型(江衛II型)フリゲートも開発され、おそらく053型フリゲートの最後の型になると思われる。
中国人民解放軍海軍に就役している最新型のフリゲートは054型(馬鞍山級)フリゲートである。
[編集] バリエーション
- 053型/6601型/065型(江南型): ソ連のリガ型フリゲートを元に開発された。100mm単装砲を3基、37mm2連装対空砲を4基装備している。1980年代に全艦が退役し、現在は大半が学生が行う軍事体験(中国の愛国教育の一環)用の訓練船として使われるか、宣伝、広報用の任務を行っている。これらの艦船は中国人民解放軍海軍が出資し造られた青島にある海軍博物館に係留されている。
- 053型:リガ型フリゲートの中国版コピー、ソ連が供給した部品と自国製部品を両方使用している。
- 6601型:リガ型の魚雷発射管を廃しSS-N-2 Styxの中国版コピーであるSY-1対艦ミサイル連装発射筒を装備したもの。
- 065型:100mm単装砲の配置を変えたもの。船首2基船尾1基の砲を船首1基船尾2基に配置換えした。
- 053K型 (江東型):防空フリゲートとして、HQ-61対空ミサイル連装発射機2基を搭載。他に連装100mm砲塔2基、37mm連装対空機関砲4基を装備した。1990年代初めに退役し、海軍の運営する青島海軍博物館に譲渡された。譲渡された中でも531号の鷹箪は、練習艦として愛国心教育・交流のために係留されている。
- 053H型 (江滬I型):対艦フリゲートとして、SY-1対艦ミサイル3連装発射筒2基、100mm砲塔2基、37mm連装対空機関砲4基、爆雷投下軌条、対潜ロケットを装備した。東海艦隊に12隻前後が就役中と見られている。
- 053H1型 (江滬II型):053H型の発展型で、レーダー・ソナー・エンジン・装備を一新した。SY-1対艦ミサイル発射筒2基、連装100mm砲塔2基、37mm連装対空機関砲4基、爆雷投下軌条、対潜ロケットを装備した。 一部の艦の37mm対空機関砲は、PL-9C対空ミサイルが追加されている。8隻前後が就役中と見られている。
- 053HT-H型 (江滬IV型):後部甲板の武装を撤去し、Z-9の運用を可能とした試作艦。SY-1対艦ミサイル3連装発射筒、フランス製100mm砲、37mm連装対空機関砲2基を装備。544 四平のみが建造され、北海艦隊に在籍中。
- 053H2型 (江滬III型):053型の大幅改良型で、大型化しヘリコプター格納庫を持つ、中国初の近代型フリゲート。NBC防御、空調の集中制御、戦闘システム(イギリス製CTC-1629・国産ZKJ-3A)の搭載を行っている。ヨーロッパの設計の影響が見られ、YJ-8またはYJ-82対艦ミサイル8発の発射機、79A型連装100mm砲塔2基、76型37mm連装対空機関砲4基、81型5連装対潜ロケット2基、64型爆雷投下軌条4条を装備した。東海艦隊に3隻が就役中。
- 053H1G型 (江滬V型): 1990年代に入り、南海艦隊が速やかな増勢を必要としたため、広州黄埔造船廠が053H1型を元に建造した6隻の低価格フリゲート。053H2型から、艦内の空調制御・外気遮断・NBC防護・戦闘システムを取り入れているが、性能面で劣るSY-1A対艦ミサイル3連装発射筒2基を、YJ-8/YJ-82の代わりに装備している。性能面では、053H2型より劣ると考えられている。
- 053H2G型 (江衛I型): 1988年から1993年にかけて建造された、053H2型の防空型。この型からNATOコードネームが変更されている。YJ-8またはYJ-82対艦ミサイル3連装発射機2基、HQ-61対空ミサイル6連装発射機を搭載した。HQ-61は、射程が短く防空能力は限定された物である。4隻が東海艦隊に配備されている。近代化に伴い、HQ-61をHQ-7に換装しているが、これを055型とする資料もある。
- 053H3型 (江衛II型): 053H2G型の性能向上型。YJ-83対艦ミサイル4連装発射機2基、クロタル EDIRのコピーとされるHQ-7対空ミサイル8連装発射機を搭載。艦橋前の対空ミサイルと後部対空機関砲の装備位置が053H3は一段高くなっており、053H2Gとの区別は容易である。短期間ではあるがHQ-7ではなくHQ-61を搭載していた時期があり、HQ-7装備後を057型とする資料もある。現在、10隻が就役中。