9M14 (ミサイル)
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
9M14「マリュートカ」(ロシア語:9М14 «Малюткаヂェーヴャチ・エーム・チトィーリナッツァチ)は、ソ連で開発された対戦車ミサイルである。誘導装置などを含むシステム全体の名称は、9K14(9К14ヂェーヴャチ・カー・チトィーリナツァチ)である。北大西洋条約機構 (NATO) の使用したNATOコードネームでは、AT-3「サガー」(Sagger) と呼ばれた。現在では旧式化しているが、途上国では使用され続けておりコピー生産もされている。
愛称の「マリュートカ」(малютка) とはロシア語で「赤ちゃん、ちびっ子、ちいさなもの」のことで、小さなものに対してしばしば用いられる名称である。9M14「マリュートカ」も、その名の通り小型のミサイルである。
[編集] 概要
対戦車ミサイルの第1世代にあたり、射手が照準器を覗きながらジョイスティックで有線誘導するタイプであった。基本型は成形炸薬弾 (HEAT) 弾頭を装備し、最大装甲貫徹量は400mmであった。基本型は人員による携帯式であったが、BMP-1などの歩兵戦闘車やMRDM-2などの対戦車車輌にも搭載可能であった。また、ランチャーを介してMi-2、Mi-8、Mi-24Dなど各種ヘリコプターにも搭載された。
より能力の高いミサイルが開発され、ソ連での生産はそちらへ移行していったものの、9M14は世界各国で生産され続けた。スロヴェニア、イラン、中華人民共和国、朝鮮民主主義人民共和国、中華民国では、コピー型のほか独自の改良型も生産された。ロシア連邦でも改良型が開発されている。ワルシャワ条約機構のほかアラブ諸国など世界各地で使用されたため、東側対戦車ミサイルの中ではもっとも知られたミサイルとなった。
第二次レバノン侵攻でも、ヒズボラが9M14をより新しい対戦車ミサイルと混ぜて使用した。最新の戦車に対しては性能が不足しているもののなおも有効であると考えられているが、それにもまして陣地に対する攻撃で威力を発揮した。
[編集] 派生型
ソ連
ロシア連邦
スロヴェニア
- POLK - スロヴェニアで開発された9M14Pの発展型。
イラン
- RAAD - イランでの生産型。
- RAAD-T - 爆発反応装甲 (ERA) への有効性を高めた改良型。
中華人民共和国
- HJ-73(紅旗73 / Hongjian-73) - 1979年に部隊配備された、中華人民共和国での生産型。
- HJ-73B - 有線誘導型の改良型。
- HJ-73C - 有線誘導型。爆発反応装甲 (ERA) への有効性を高めた改良型。
朝鮮民主主義人民共和国
- Susong-Po
中華民国
- Kuen Wu 1 - 台湾での生産型。
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