Any key
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Any key(エニィ・キー)とは、コンピュータ操作において、ソフトウェアがユーザーに対して何等かの表示出力を行い、これを確認させ不特定のキー入力を求める際に使われる表現である。
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[編集] 概要
現在、一般に流通しているコンピュータに於いて、標準で『Any』という刻印のあるキー(入力スイッチ)はキーボード上に存在しない。英語の“Any”は疑問文や否定文では不定数(不定量)を表すが、肯定文で単数形を伴うと、anyは不定のものを表し、"Press any key" は「(どれでもいいので)何らかのキーを押しなさい」という意味である。コンピュータの画面上では、「 Press Any key to continue... 」ないし「 Hit Any key... 」と、何等かのキー入力を求める表示に使われる表現である。
[編集] 何故“Any”なのか
コンピュータプログラム内部では、入力されたキー操作を含む文字列は数値(デジタル)化されて処理されており、コンピュータのキーを操作するという事は、コンピューターのキーにそれぞれ設定されている数値を入力するという事でもある。コンピュータは、この数値をオペレーティングシステム(OS)なりBIOSで処理して、文字記号なり、何等かのキー操作であると認識し、画面に表示するなど所定の動作を行う。ゆえに「 Hit Any key... 」では、「(不特定な)何等かのキー入力を…」という意味になる。
しかし一般の利用者にとって文字キーは、空白(スペースキー)を含めて文字という記号である。anyという単語の「何らかの」という意味を正しく認識していない一部の日本人にとっては、「何か(Something)」の方がより理解しやすい訳ではあるが、コンピュータプログラムの世界(ないし業界)では、日本国内を含めて伝統的に“Any”が画面上の表記として使用されている。
ただこの辺りには諸説がある。「記憶容量の少ない8ビットパソコンやポケットコンピュータなど初期のコンピュータで、ソースコードの容量を少しでも減らし限界までメモリを有効活用するため」や「コンピュータプログラマは面倒臭がりなので、略語やより短い単語を使いたがる」など、単に「文字数が少ない」という理由だけでこじつけられたものだとする説もあり、そもそも同語を誰が使い始めたのかも不明である。
[編集] 同語に拠る混乱
ただ、一般にパーソナルコンピュータが普及し始めた頃から、特にコンピュータの内部処理に関して、詳しい教育を受けている訳では無い人でも、コンピュータに触れる機会が出てきて、ここで些か混乱を招いている。また、非英語圏の利用者の中には、この“Any”という刻印のあるキーが何処かにあるものだと信じて、キーボードの上を血眼になって探す者も見られた。Microsoft Windows普及に前後して、パソコンメーカーのサポートダイヤルにも、定期的にこのような問い合わせがあったという話も聞かれる。こういった現象を揶揄して、実際に“Any”と刻印されたキートップが(無論ジョークとして)販売されたことすらある。
ジョークでは「何でも構わないんだから、リセットスイッチを押してしまえ」という話もある「 Any key 」だが、現在ではグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)が普及し、マウスで画面上にあるOKボタンをクリックするようになっているため、一般でこのような話が出る事は稀である。現在ではコマンドプロンプトを操作するユーザーは、一部マニアや専門筋を除いては皆無であるためである。
また近年ではOSにヘルプ(→オンラインヘルプ)機能が装備されている事、また日本語で「続けるにはどれかキーを押して下さい」と表示される事から、同種の問題に惑うユーザーは、やはり稀である。
[編集] その他
これらは、主にコマンドプロンプトを操作するPC-DOS/MS-DOSといったGUIを持たないOSの時代の話では有るが、この世代に属する、あるいはそれ以前の、コマンド入力方式が常態であった8ビットパソコン時代のアドベンチャーゲームなどにも、しばしば画面を表示してユーザーの操作待ちをしている状態において、同様の表示が出る事があった。
やはりこの時代にも、この「 Hit Any key... 」の表示を見て、そのようなキーがパソコン上に有るのでは無いかと探し回ったという話が聞かれる。
なおザ・シンプソンズのホーマーも、Any keyを探したようである。