Delphi
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「Delphi」(デルファイ)は、米国ボーランド社の開発するMicrosoft Windows向け統合開発環境である。プログラミング言語として、教育用として見られる事の多い「Pascal」を大幅に拡張し、オブジェクト指向開発を可能とした「Delphi言語(Delphi6まではObject Pascalと呼ばれた)」を用いる。独自のフレームワークにより迅速なユーザーインターフェイスの設計、オブジェクト指向開発を可能とする。
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[編集] 概要
「コンポーネント」と呼ばれるソフトウェア構成要素を予め定義する事で、より少ない記述量でのコンピューターソフトウェアの開発が可能である。「フォーム」と呼ばれる基底コンポーネント上に各種のコンポーネントを設置する独自の手法により、ユーザーインターフェイスの設計を視覚的に行う事ができ、試作の迅速化を実現する。RADでデザインする部分、コードで記述する部分が適切に分かれているため、RADとコードがけんかすることがなく、RADを使ったため逆に生産性が落ちるということもない。
Delphiのプログラムのコンパイルに要する時間は、Visual C++などの他のソフトウェア開発製品に比べ群を抜いて短い。これは、Delphi言語(以前は「Object Pascal」と呼ばれていた)が引き継いでいるPascalの構文法に由来し、Delphiの前身であるTurbo Pascalから続く伝統的性質である。
参照カウントによるリソースのガベージコレクション機能を持ち、Microsoft Foundation Classなどよりも生産性が高い。
Delphiはまた、データベースとの親和性が高い。
Delphiで使われるコンポーネントの枠組は「Visual Component Library」(VCL)と呼ばれる。このフレームワークを用いてC++言語でのWindows向けソフトウェア開発を実現したものが「C++ Builder」である。また、Delphi自体はWindows専用の開発環境であるが、Delphi言語でのLinuxソフトウェア開発を可能とした製品として「Kylix」がある。
Delphiでは、ほとんどのWin32 APIが使えるようになっているうえ、関数を適切に宣言することにより、DLL内の関数も使える。
[編集] 歴史
[編集] 名前の由来
「Delphi」とは即ち、ギリシャの古代都市「デルフォイ」を意味する。 当初、Oracleデータベースサーバーのフロントエンドとしての採用を目論んでおり、古代ギリシャにおいてアポロンの神託(オラクル)を与えたのがデルフォイの神殿であった事からこの名前が付けられた。 これは元々はボーランド社内部のコードネームであったが、社外への漏洩から一般大衆の間で定着する事となり、最終的な製品名となった。
[編集] Delphi 1
1995年9月に発売。 最初のDelphi(Delphi 1)は、16ビットWindows(Win16)であるWindows 3.1向けに開発された。「コンポーネント」と呼ばれる設計部材による視覚的(ビジュアル)開発手法を採用するDelphiの基本的な性格は、この時既に定まっており、この画期的な製品はソフトウェア開発者らから大きな注目を浴びた。
Delphi1はまた、Delphiシリーズとしては唯一の16ビット開発環境としての側面も併せ持っている。
[編集] Delphi 2
1996年発売。 「Delphi 2」以降、Delphiは開発対象をWindows 95に代表される32ビットWindows (Win32)へと移した。マイクロソフト社のVisual BasicとVisual C++の長所を兼ね備えた開発環境として人気を博し、その後も順調にバージョンアップを繰り返した。
[編集] Delphi 3
1997年発売。ActiveXコントロールの開発をサポート。Webアプリケーション開発機能の提供。
[編集] Delphi 4
1998年発売。NTサービスアプリケーションの開発、CORBAをサポート。
[編集] Delphi 5
1999年発売。ADO対応、COMオブジェクトコンポーネントラッパーを提供。
[編集] Delphi 6
2001年7月9日発表。日本ではPersonal版が無償で提供され、多くの著名なフリーウェアがDelphiで作成された。 Borland Kylixと互換性のある、Borland Component Library for Cross-Platformを搭載。
[編集] Delphi 7
2002年8月22日発表。IntraWeb、RaveReportを搭載。Delphi for .NETのプレビュー版を添付。
[編集] Delphi 8
2003年11月3日発表。マイクロソフトの提唱する「.NET Framework」に対応すべく、Delphiに変更を加えたものが、「Delphi for the Microsoft .NET Framework」(Delphi.NET)である。Delphi.NETでは、それまでのDelphiから言語構文を殆ど変更する事なく.NETアプリケーションの開発ができる。 2003年に発表された「Delphi 8」が、Delphi.NET開発環境の最初の製品である。このDelphi8では、統合開発環境(IDE)のユーザーインターフェイスが一新され、「Galileo」と呼ばれるMicrosoft Visual Studioと似た外観が導入された。
Delphi8はまた、Delphiシリーズとしては唯一の.NET専用Delphiである。
[編集] Delphi 2005
2004年11月4日発表。「Delphi 2005」(Delphi 9)では、Delphiとボーランド社のC#言語開発環境である「C# Builder」とが統合された。この製品ではWin32用と.NET用のDelphiの二系統の開発環境もまた統合されている。Delphi 2005 には無償版が用意されていたが、実際に提供されたのは欧州など限られた国のみである。
[編集] Delphi 2006
2005年11月24日に「Borland Developer Studio 2006」が発表された。これは「Delphi 2005」の後継製品であり、Delphi及びDelphi.NETの開発環境として「Delphi 2006」が提供されている。Developer Studio 2006では、ボーランドのC++言語によるVCL開発環境「C++ Builder」が統合されている。
[編集] Turbo Delphi
2006年9月6日(英語版は8月8日)に「Turbo Delphi」が発表された。これは「Borland Developer Studio 2006」上で他の言語と統合されていた「Delphi 2006」を単体化した物である。Delphi2006 Update2 と同等の機能を持つ。無料版も提供された。
[編集] Delphi 2007
2007年2月21日に「Delphi 2007 for Win32」が発表された。Microsoft Windows Vistaに対応。Win32専用であり、.NETには対応しない。よって2007発表時点で、.NETでの開発は「Borland Developer Studio 2006」、つまり「Delphi 2006」の使用が推奨されている。
[編集] Delphiで開発されたアプリケーション
- Open Jane
- ギコナビ
- かちゅーしゃ
- TeraPad
- J-cref
- K2Editor
- ひまわり (プログラミング言語)
- なでしこ (プログラミング言語)
- InnoSetup
- SI Object Browser(&ER)
- Skype
- MDIE
- Irvineフリー版
- Iria
- JTrim
- WinShot
- QuickPopFile
- PowerChuteBusinessEditionコンソール
- 窓の手
- Leeyes
- Ad-Aware SE
- Share
- Lhaplus
- Win高速化 PC+
- 縮小専用。
- VirtualRD for Windows
- EditMTU
- MKEditor for Windows
- NoEditor
- Jane Doe Style
- TMPGEncシリーズ
- CPad for Borland C++Compiler* BCC Developer
- LiberalInstaller
- HelpDesigner
- ヘルプましん 〜 HTML Help Designer 〜
- ResourceHacker
- eXeScope
- Ad-Aware SE Personal Edition
- Spybot
- StartupScanner
- デーモンバスター
- CD2WAV32
- DriveDiet
- GrepReplace
- 株式投資ソフト「ストックナビ」
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- Borland - Delphi 公式サイト
- Turbo Explorer Turbo シリーズ公式サイト
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