HIDランプ
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HIDランプ(エイチ・アイ・ディ・ランプ、英: High Intensity Discharge lamp)は、金属原子高圧蒸気中のアーク放電による光源である。高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプの総称であり、高輝度放電ランプ(こうきどほうでん -)ともいう。
電極間の放電を利用しているためフィラメントがなく、白熱電球と比べて長寿命・高効率である。メタルハライドランプはテレビや映画などの演出照明分野でも、その高輝度、高効率、太陽光と色温度が近い、などの特徴をいかし、ロケーション照明の主力となっている。近年では、ハロゲンランプに代わって自動車や鉄道車両の前照灯(ディスチャージヘッドランプ)の他、二輪車用のヘッドライトにまで用いられる。
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[編集] 特徴・構造
[編集] 特徴
- 光束が大きく、大規模空間の照明に適している。
- 電球やハロゲンランプに比べエネルギー効率が良いため消費電力が少なく寿命も長い。
- 低圧放電灯に比べ、一般に演色性が高い。
- ハロゲンランプの光より指向性が高く、明るく遠くまでクッキリと対象物を照らしだす事ができる。
- 青みの帯びた光で、乗用車に装備すればファッション性のアップも期待できる。
- 色温度が4,000ケルビン (K) 以上の光になると雨天や降雪時の視認性は思わしくない。
[編集] 構造
水銀ランプは硬質ガラス製の「外管」の中に石英ガラス製の「発光管」があり、その発光管を物理的に支えながら電気を供給する「金属部材」が収容されている。発光管の両端に「電極」が装着され、その両極間で発生する放電作用により内部に封入された水銀とアルゴンガスの水銀原子が発光する。外管内には窒素ガスが封入されており、高温による金属部材の酸化を防ぐ。
水銀のほかにナトリウムやスカンジウムなどの金属ハロゲン化物(メタルハライド)を発光物質として封入したものをメタルハライドランプといい、発光管に高温ナトリウム蒸気に耐える透光性アルミナセラミックスを使用し、ナトリウムを封入したものを高圧ナトリウムランプという。
[編集] 原理
発光原理は電極から放出される電子が対極へ引かれる途中、水銀原子が光を放出する。基本原理は蛍光ランプと同じである。(蛍光ランプの発光原理を参照)低圧放電の蛍光ランプは紫外線が多いのに比べて、HIDランプは点灯中の水銀原子の密度と温度が圧倒的に高いため、可視スペクトルを多く放射する。ただし発光管が高温になることを必要とするため、スイッチを入れてから安定して発光するまで4~8分かかる。
[編集] 種類
- 高圧水銀ランプ:白熱電球の約3倍の発光効率を持ち、光束が大きく寿命も長い。ピンクがかった白色光。
- メタルハライドランプ:色温度が高く、演色性も高い。水銀ランプよりも効率がよい。
- 高圧ナトリウムランプ:色温度が低く標準的なタイプはオレンジ色の光を放つ。
発光効率は非常に高く水銀灯の半分程度の電力で2~3割増の明るさが得られるが演色性が悪い。 専用安定器が必要なタイプと水銀灯安定器で点灯可能なランプがある。
演色性を改善したタイプもある(効率はやや落ち色の見え方は普及型蛍光灯並み)。 ランプがやや割高なためメタルハライドランプに軍配が上がる。
さらに効率よりも演色性に重点を置いたランプもある。 安定器が極端に大きく明るさや寿命、ランプの価格など欠点が多いため、赤緑を鮮やかに演出する場所以外では使うメリットが余り無く、コンパクト蛍光灯に置き換えられつつある。
[編集] 点灯
HIDランプを点灯させるためにはフィラメントを内蔵した水銀ランプ(チョークレス水銀ランプ、バラストレス水銀ランプ)以外は蛍光ランプと同様「安定器」が必要である。
[編集] 安定器の種類
ランプ電流の制限、安定した点灯のためにランプの種類や電源電圧、使用目的などに応じて種々の安定器がある。
- 一般形
- 低始動電流形:始動時入力電流が一般型安定器と比べて少ない。
- 定電力形:始動時、無負荷時入力電流が安定時入力電流より少ない。