OTM
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OTM(オーティーエム、Over Technology of Macross)はSFアニメ『超時空要塞マクロス』および関連作品(マクロスシリーズ)に登場する、架空の科学技術の総称。作中では「オーバー・テクノロジー」と略称される例が多い。
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[編集] 概要
現代科学をはるかにしのぐ異星人の超先進科学技術を、地球側では一般にOTMと呼ぶ。太古のプロトカルチャー文明の遺産であり、彼らが製造した戦闘バイオノイド、ゼントラーディ軍や監察軍の兵器群もこの系統に属する。
地球に墜落した監察軍戦艦をSDF-1マクロスに改修する過程で、先進諸国の合同研究機関OTEC(おーてっく)社により分析され、以前は宇宙ステーション建設レベルであった地球の科学技術に爆発的進化をもたらした。従来の兵器系に幅広く導入されたほか、可変戦闘機バルキリーやデストロイドなどの新兵器も、OTMなしには構想すらなしえなかった。しかし、原理を根本まで解明できず、墜落艦のシステムをデッドコピーした部分も多く、初期には運用上の様々なトラブルにみまわれた。また、OTMの所有を巡り生じた利権争いが、統合政府と反統合同盟の衝突(統合戦争)の要因となったことも事実である。
のちにOTMは軍事から民間まで幅広く活用され、人類の宇宙進出を支える原動力となった。地球人とゼントラーディ人の共存時代には更なる研究が進み、両者の技術特性を兼ね備える兵器も登場する。とくにゼントラン系開発メーカー、ゼネラル・ギャラクシー社はOTMを積極導入した機体設計で知られる。2040年の「スーパーノヴァ計画」以降の次世代可変戦闘機(Adbanced Variable Fighter:AVF)では、フォールドシステムなどかつては艦艇クラスであった大型システムが軒並みコンパクト化され、随所に搭載されるまで進化している。
[編集] 重力制御システム
人工的に重力を発生・制御するOTMの核たる技術。巨大戦艦そのものを浮上させる大型システムから、艦内の居住空間を調整するサブシステム、デストロイド・モンスターの歩行系や、可変戦闘機の一部に応用された小型システムなど様々な応用例がある。後世の次世代可変戦闘機(AVF)では、VF-22シュトゥルムフォーゲルIIがゼントラーディ軍のバトルスーツクァドラン・ローから応用した反重力制御システムを搭載している。しかし、装置のサイズ・重量との兼ね合いから、空力(揚力)設計も依然重視されている。
[編集] フォールド航法
空間歪曲型ワープの一種である超時空航行技術。原理的には重力制御により宇宙空間を折り曲げ(=fold)、現座標と目的座標を隣り合わせ、艦の周辺空間ごと転移する。この際、転移先の空間は等価交換式に差し戻され、物理的整合が図られる。つまり「出発地と到着地の空間を入替える」ことになる。通常空間から超時空への突入をフォールド・イン、超時空から通常空間への脱出をフォールド・アウト(ゼントラーディ語ではデフォールド)と呼ぶ。超時空移動中は通常空間との時間差が生じ、フォールド中の1時間が通常の10日間に相当する。
フォールドの座標設定には精密な計算が必要で、重力場に影響されるため通常は惑星などの大質量物体の近くでは行われない。地球初の超時空航行戦艦=Super Dimension Fortress-1(SDF-1)マクロスはゼントラーディ軍からの緊急避難手段として地球上で行ったため、予定の月裏側から大きく逸れた冥王星付近に転移してしまい、周辺の南アタリア島海域まで巻き込んでしまった。作中では描かれないが、理屈的にはフォールド後、南太平洋上に冥王星付近の宇宙空間が出現したことになる。
後の宇宙移民時代には、ゼントラーディ技術の導入もあり、フォールドシステムは宇宙艦船の標準装備となった。さらに脱着式の可変戦闘機用システム(フォールド・ブースター)も開発されたが、小型のため片道20光年分の性能しか保証されない。
[編集] フォールド通信
フォールド航法技術を応用し電波を空間転移させる超広域通信システム。『マクロス7』作中の時代には銀河系内でほぼタイムラグ無しに交信可能な「ギャラクシー・ネットワーク」が構築されており、軍事用だけでなく民間放送局の中継や音楽ヒットチャートなどが放送されている。
[編集] 熱核反応システム
従来の核反応理論に重力制御技術などを導入したもの。艦艇やデストロイドの動力(熱核反応炉)、航空機の推力(熱核タービンエンジン)、兵器(反応弾)などに幅広く活用された。
[編集] 熱核タービンエンジン
可変戦闘機などに搭載される小型原子力エンジン(Thermo-Nuclear Reactor Turbine Engine)。反応炉(核融合炉)の熱エネルギーでプロペラント(推進剤)を加熱・膨張させ、高温プラズマ流として噴射し推力を得る。従来のジェットエンジンと比べた利点は
- エンジン換装せず、プロペラントの交換により大気圏内外の全領域で使用可能。
- 空気を圧縮しプロペラントとして使用できる大気圏内では、ほぼ無限の航続距離を得られる。
- 従来の化学燃料に比べ反応剤(核燃料)の消費が極めて少量なため、胴内燃料スペースが大幅に削減され、変形機構導入が可能となる。
推力の点ではVF-1バルキリーに搭載された初期型はジェットエンジンと大差なかった。また、大気圏外でのプロペラント(水素化合物)の容量不足も問題であったが、これらはブースターと増槽を兼ねる追加装備(FASTパック)により解決が図られた。さらにVF-17ナイトメア以降の可変戦闘機に搭載された次世代型熱核バーストタービンエンジン(Thermo-Nuclear Reactor burst Turbine Engine)では熱交換理論が進歩し、大気圏外でのプロペラント消費率が大幅に改善され、推力も従来型の2倍近くに達した。これにより単独での大気圏突破とFASTパックなしでの宇宙巡航が可能となった。
[編集] 反応兵器(反応弾)
従来の核兵器を改良し、おもに宇宙空間での威力を向上させたもの。原料となる放射性物質も半減期の極めて短いものが使用されている。30m長の対艦大型ミサイルから、宇宙戦闘機搭載の迎撃小型ミサイル、デストロイド火器用の弾頭まで様々なタイプがある。統合戦争中、統合軍が反統合同盟軍の火星開発船団への攻撃に対する報復攻撃で初使用し、グランドキャノン建設現場でも掘削用に使用された。ゼントラーディ軍との緒戦時、対艦攻撃において絶大な威力をみせたが、まだ配備数が不十分なため、本土決戦に備えて温存する策が採られた。
一方、修理や改良などの知識を持たない戦闘種族ゼントラーディ人にとって、反応兵器はプロトカルチャー絶滅によって失われた幻の技術であった。地球人がこれを保有することに衝撃を受け、その技術を盗み取らんと、彼等は、殲滅しようと思えば簡単に潰せる地球に敢えて侵攻せず、同じく、マクロスを敢えて泳がせ、執拗に追い回すことになる。
戦後、宇宙移民が進み移民惑星間の衝突が起こる時代になると、大量殺戮兵器である反応兵器の使用は政治問題を招くため銀河条約により凍結された(一部、闇ルートで売買された例もある)。これを一因として、特殊作戦用の高性能な次世代可変戦闘機(AVF)開発が計画されることになった。ただし、未知の強大な敵対的異星人勢力との交戦における特例として、マクロス7艦隊が対プロトデビルン戦において使用を認められた。
[編集] ピンポイントバリア(PPB)
時空連続体のひずみを利用した小径のパリアシステム。実体弾やビーム兵器を無効化する。フォールドシステム消失事故の副産物としてマクロス艦内工廠で開発されたが、システム未完成段階では3人の女性オペレータが手動で操作した。これを応用した「ダイダロスアタック」が考案され、のちに艦全体を保護する全方位バリアも開発された。
後年の次世代可変戦闘機(AFV)では、機体防御用のPPB展開能力が基本性能要求のひとつとなった。これにより装甲を省き、機体の軽量化を図れたが、エンジン出力の60%を要するためバトロイドモードのみという制限がある。バトロイド同士の格闘戦という事態では、ダイダロスアタックを模した「ピンポイントバリアパンチ」やピンポイントキックなどという用法も考案された。
[編集] アクティブステルス
従来のステルス技術は、機体に当たるレーダー探知波を反射する「受動的(パッシブ)」な状態で、正反射しないよう機体形状を工夫するなどして考案された。これに対し能動的(アクティブ)なステルス技術とは、レーダー波を分析し、逆に欺瞞情報を送り返す電子対抗手段(ECM)の一種である。より高い隠密性を保てるだけでなく、パッシプ・ステルス機のように空力性能を犠牲にしてまで機体形状を優先する必要がなくなり、機体設計の自由が広がるというメリットもある。可変戦闘機誕生期のVF-0やSV-51の時点ですでに採用されていた技術だが、完璧に近いレベルで実現したのは30年後のAFV機YF-21であった。
[編集] マイクローン装置
プロトカルチャーが開発したクローン装置。超高度なコンピュータを搭載しており、収容者を一旦原子レベルまで分解し、再構築することで、ゼントラーディを地球人サイズに縮小したり、地球人をゼントラーディサイズに拡大することが可能である。また、その際、人体の構築パターンを変更することで、身体の強化や臓器の数の増減等を行うこともできる。この装置によるクローンで、ゼントラーディ人は異性交配することなく、その個体数を維持している。
ゼントラーディの戦艦レベルになると、必ず艦内に設置されている模様。あまりに超高度な性能のため、一通りのOTMを解読した統合政府、新統合政府でも再現・製造は不可能であり、星間大戦終戦後、残存ゼントラーディ艦艇内に設置されていたり、艦艇から取り外され各シティ単位で管理されていたマイクローン装置は、ゼントラーディの暴動勢力による悪用を恐れ、全て新統合軍が押収した。
この高度なクローン技術は、星間大戦にて全土が焦土と化した地球の復興のために、生き残った僅かな数の植物、動物、精子、卵子、種子、染色体、ありとあらゆる物質、物体、生命体の複製に活用された。