アクリル樹脂
出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』
アクリル樹脂（—じゅし）とは、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの重合体で透明性の高い非晶質の合成樹脂である。特にメタクリル酸メチル樹脂（略号はPMMA）による透明固体材はアクリルガラスとも呼ばれる。擦ると特有の匂いを発することから匂いガラス（におい～）とも呼ばれた。またポリカーボネートによる透明固体材と共に有機ガラス（ゆうき～）とも呼ばれる。
目次 |
[編集] 製法
ラジカル重合により重合度が10,000～15,000程度の製品が作られている。実際には懸濁重合で合成したものを熱可塑形成することが多いが、合わせガラスの場合は、2枚のガラスの間にモノマーと開始剤を封入してその場で重合し張り合わせる鋳込重合が行われる場合もある。
[編集] 性質
メタクリル酸エステル重合体は透明度の最も高いものの一つで、屈折率も高く、熱可塑形成で複雑な形状を射出形成が可能なために光学材料の素材として汎用されている。クロロホルムやアセトンなど種々の有機溶媒に可溶であり、非晶質プラスチックで 80～100 ℃ 程度で軟化変形し始める。熱時成型は通常260℃程度で行われる。
また、アクリル酸のモノマーは他のモノマーと共重合することで改質することが可能であり、アクリル樹脂をベースとした種々の合成樹脂が発明されている。
一般的な樹脂の中では、優れた耐候性を示し、そのため鋼鈑や他の樹脂板の上にコーティングやラミネートされて、屋外用途にも広く使われている。
[編集] 用途
メタクリル酸エステル樹脂は高い透明性・耐衝撃性と熱可塑形成・着色が容易なことから、無機ガラスの代用品として建築や乗物の窓材、照明機具、看板、日用品などに利用される。またこの樹脂の成型技術の発達によって無機ガラスでは困難な厚さや形状の頑丈な有機ガラスが実現し、水族館での大型水槽展示、また家庭用でも横幅1200ミリメートルを越す大型熱帯魚水槽の製作が容易になった。傷が付きやすいので、大型プレコなどを飼うときは気をつける必要があるが、その欠点を補う特性がある。第二次世界大戦中には航空機の風防にも用いられた。
また、アクリル酸エステルを液状～ワックス状に重合させたものは着色性の良さによりアクリル樹脂塗料としても広く使用されている。
