アダマンタン
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アダマンタン | |
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IUPAC名 | アダマンタン(許容慣用名) トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン |
分子式 | C10H16 |
分子量 | 136.23 g/mol |
CAS登録番号 | [281-23-2] |
形状 | 無色固体 |
密度と相 | 1.07 g/cm3, 固体 (20 ℃) |
融点 | 270 °C |
昇華点 | 209–212 °C |
SMILES | C1C2CC3CC1CC(C2)C3 |
アダマンタン (adamantane) は10個の炭素がダイヤモンドの構造と同様に配置されている、かご型の分子である。化学式は C10H16、分子量は 136.23。融点は 270 ℃。CAS登録番号は [281-23-2]。名称はダイヤモンドに相当するギリシャ語の adamas から名づけられたものである。
目次 |
[編集] 性質と合成
各炭素の結合角が sp3 炭素の本来の角度(約109.5度)を成しているため全くひずみのない構造で、このため極めて安定である。対称性が高いため融点が高く、長らく炭化水素の高融点記録を保持していた。
C10H16 の分子式を持つ炭化水素の一種(テトラヒドロジシクロペンタジエン)を塩化アルミニウムと加熱するとヒドリドが引き抜かれて、発生したカルボカチオンが次々と転位を起こして最終的に最も安定なアダマンタン骨格にたどり着く。
以上の合成法では反応後に多量のタールと塩化アルミニウムの混合物が発生し、日本国内では工業化できず、中国で合成されている。出光興産はゼオライトを触媒に用いる新たなアダマンタン合成プロセスを開発した。このプロセスでは上述したような廃棄物が出ず、環境負荷が大幅に低減されており、プラントは山口県に建設され、2008年1月に商業運転開始予定である。
[編集] 用途
アダマンタンは高い耐熱性、透明性、耐薬品性、潤滑性を有するため様々な用途での利用が試みられてきた。その性質が特に ArF エキシマレーザーを用いたフォトレジストに有効であることから、2-アダマンタノンなどのアダマンタン誘導体から合成される感光性樹脂の需要が拡大している。この市場では出光興産が約 70% のシェアを有している(出光興産推計)。
[編集] 類縁体
アダマンタンのかご状構造が 2個結合した炭化水素をジアマンタン、3個結合したものをトリアマンタン……と "amantane" にギリシャ語の数詞をつけた形で命名する。この形式で3次元的にどこまでも炭素骨格がつながったものがダイヤモンドである。