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ダイヤモンド - Wikipedia

ダイヤモンド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

Disambiguationこの項目では炭素の結晶について説明しています。"ダイヤモンド" のその他の用法についてはダイヤモンド (曖昧さ回避)をご覧ください。
ダイヤモンド
ダイヤモンド
分類 元素鉱物
無色から黒まで様々
組成 C
硬度 10
比重 3.52
晶系 等軸晶系
光沢 金剛光沢
劈開 4方向に完全
蛍光 様々だがLWで青色を示すことが多い

ダイヤモンドダイアモンド金剛石、diamond)は、結晶構造を持つ炭素同素体の一つであり、天然で最も硬い物質である。結晶構造は多くが8面体で、12面体や6面体もある。宝石研磨剤として利用されている。

地球内部の非常に高温高圧な環境で生成されるダイヤモンドは定まった形で産出されず、また、角ばっているわけではないが、そのカットされた宝飾品の形から、菱形トランプの絵柄(スート)、野球の内野、記号(◇)を指してダイヤモンドとも言われている。

ダイヤモンドという名前は、ギリシア語adamas (征服できない、懐かない)に由来する。イタリア語スペイン語ではdiamante(ディヤマンテ)、フランス語ではdiamant(ディヤマン)と言う。

4月の誕生石。石言葉は「永遠の絆・純潔」。

目次

[編集] ダイヤモンドの性質

[編集] 屈折

ダイヤモンドの屈折率は2.42と高い。この高い屈折率により、外部からダイヤモンドに入った光は内部全反射し、輝きとなって外に出て行く。この輝きはシンチレーション(チカチカとした輝き、表面反射によるもの)、ブリリアンシー(白く強いきらめき、ダイヤモンド内部に入った光が全反射して戻ったもの)、ディスパーション(虹色の輝き、ダイヤモンド内部に入った光が内部で反射を繰り返し、プリズム効果によって虹色となったもの)の、3種類の輝きが相乗効果となって美しく見える。

[編集] 硬度・靭性・安定性

ダイヤモンドの飛びぬけた硬さは古くからよく知られ、工業的にも研磨や切削など多くのことに利用されている。

ダイヤモンドは最高のモース硬度(摩擦やひっかき傷に対する強さ)10、ヌープ硬度でも飛び抜けて硬いことが知られている(理論的には、ダイヤモンドの炭素原子が一部窒素原子に置換された、立方晶窒化炭素はダイヤモンド以上の硬度を持つと予測される。

宝石の耐久性の表し方は他にも靭性という割れや欠けに対する抵抗力などがある。靭性は水晶と同じ7.5(かなづちで上から叩けば粉々に割れる程度)であり、ルビーサファイアの8よりも低い。

安定性は薬品光線などによる変化に対する強さ。ダイヤモンドは硫酸塩酸などにも変化せず、日光に長年さらされても変化はおきない。

[編集] 硬い理由

この硬さは、炭素原子同士が作る共有結合に由来する。ダイヤモンドでは1つの炭素が正四面体の中心にあるとすると、最近接の炭素原子はその四面体の頂点上に存在し、それそれが sp3 混成軌道によって結合しており、幾何的に理想的な角度であるため全く歪みが無い。その結合長は1.54Åである。この結晶構造を持つダイヤを立方晶ダイヤとよぶ。一方で、炭素の同素体であるグラファイト(石墨)は、層状の六方晶構造で、層内の炭素同士の結合は sp2 混成軌道を形成している。この層内では共有結合を有し結合力は比較的強いが、層間はファンデルワールス結合であるため弱い。六方晶の構造を持つダイヤも存在するが、不安定で地球上には隕石痕など非常に限られた場所でしかみつかっておらず、0.1 mm を超える大きさの単結晶は存在しない。よってその性質はまだ分かっていないことも多い。

[編集] 劈開性

ダイヤモンドは、普通の物質や道具では傷つけられないと思われているが、決して無敵の鉱物ではない。「結晶方向に対する角度も考慮し、ごく小さな範囲に瞬間的に大きな力を加える」、「燃焼などの化学反応を人為的に促進する」などの方法で壊すことができる。また、高温下では一部の物質と化学反応を起こすことが知られている。加えて、一定の面に沿って割れやすい性質(へき開性)がある。

[編集] 熱伝導

ダイヤモンドは熱伝導性が非常に高い。これは原子の熱振動が伝わりやすいことによる。

[編集] 伝導率

バンドギャップは5.5 eV の絶縁体であるが、不純物を添加することにより半導体化の試みがなされ、ボロン添加によりp形、リン添加によりn形が得られている。その物性により、現在よりもはるかに高周波・高出力で動作する半導体素子や、バンドギャップを反映した深紫外線LEDが実現できるのではないかと期待されてきた。現在、自由励起子による波長235nmの発光がダイヤモンドpn接合LEDにより、物質材料機構[1]と産業技術総合研究所 [2]から報告されている。

[編集] 親油性

ダイアモンドは油にくっつきやすい性質があり、この性質を利用してダイアモンド原石とそうでないものを分ける作業もある。ジュエリーとして身に着けているうちに皮脂などの汚れがつくと、油の膜によって光がダイアモンド内部に入らなくなり輝きが鈍くなる。中性洗剤や洗顔料などで洗うと油が取れて輝きが戻る。

[編集] カラーダイヤ

ダイヤモンドは無色透明のものよりも、黄色みを帯びたものや褐色の場合が多い。結晶構造の歪みや、窒素(N)、ホウ素Bなどの元素によって着色する場合もある。無色透明のものほど価値が高く、黄色や茶色など色のついたものは価値が落ちるとされるが、ブルーやピンク、グリーンなどは稀少であり、無色のものよりも高価で取引される。また、低級とされるイエロー・ダイヤモンドでも、綺麗な黄色(カナリー・イエローと呼ばれる物など)であれば価値が高い。20世紀末頃から、内包するグラファイトなどにより黒色不透明となったブラック・ダイヤモンド(ボルツ・ダイヤモンドとも呼ばれる)がアクセサリーとして評価され、高級宝飾店ティファニーなどの宝飾品に使用されている。

放射線処理により青や黒い色をつけた処理石も多い。最近ではアップルグリーン色のダイアもあるがこれも高温高圧によって着色された処理石である。

[編集] 宝飾としてのダイアモンド

[編集] 4C

ダイアモンドの品質を知るための指標としてGIA(アメリカ宝石学協会)が考案したもの。色(カラー)、透明度(クラリティ)、カラット(重さ)、カット(研磨)によって品質を評価する。ラウンドブリリアントカット(58面体)に対してカット評価がされるので、他のカットの場合、カットの種類しか鑑定書に記載されない。

[編集] メレダイアモンド

0.1カラット以下の小粒なダイヤモンド。宝飾品においては中石を引き立てるために周囲に散りばめられるなどの利用をされる。

[編集] 有名なダイアモンド

カリナン

1905年南アフリカで発見され、カット前の原石は3106カラットもあり、これをカットすることで合計1063カラットの105個の宝石が得られた。これらは当時のイギリス国王であるエドワード7世に献上されている。105個のなかでも「ザ・グレート・スター・オブ・アフリカ(偉大なアフリカの星)」は530.20カラットで、カットされたダイヤモンドとしては長らく世界最大の大きさを誇っていた。「ザ・グレート・スター・オブ・アフリカ」はロンドン塔内に展示されており、見学することができる。

現在、世界最大の研磨済みダイヤモンドは、「ザ・ゴールデン・ジュビリー」である。この石は545.67カラットあり、プミポン国王の治世50周年を記念して1997年タイ王室に献上された。

[編集] 模造ダイヤモンド

宝飾用のダイヤモンドの代用品(イミテーション)としては、ジルコニア(二酸化ジルコニウムの結晶)やガラスが用いられる。ダイヤモンドと模造ダイヤモンドの見分け方として、油性ペンで結晶の上に線を書くというものがある。ダイヤモンドは親油性の物体であり、油脂を弾かない。一方、ジルコニアなどの模造ダイヤモンドは油を弾く性質を持っている。したがって、油性フェルトペンの筆跡が残らなければ偽物だと見分けることができる。ダイヤモンドの親油性は採石時にも利用されており、ダイヤモンドを含んだ土砂をグリースを塗布した板(グリース・テーブル)の上に流すことでダイヤモンドを吸着させ、選別している。親油性が高いということは、手の脂で汚れやすいということである。そのため、ダイヤモンドに素手で触れるのは出来る限り避けるべきである。宝飾店などのプロフェッショナルは必ず綿のスムス手袋を嵌めて扱う。

[編集] 人工ダイヤモンド (合成ダイヤモンド)

ダイヤモンドを人工的に作ることは古くから試みられてきたが、実際に成功したのは20世紀になってからのことである。1955年3月に米国のゼネラルエレクトリック社現ダイヤモンド・イノベーションズ社)が高温高圧合成により人類初のダイヤモンド合成に成功したことを発表した。上述の発表後に、スウェーデンのASEA社がゼネラル・エレクトリック社よりも数年前にダイヤモンド合成に成功していたという発表がされた。ASEA社では宝飾用ダイヤモンドの合成を狙っていたため、ダイヤモンドの小さな粒子が合成されていたことに気づいていなかった。現在では、ダイヤモンドを人工的に作成する方法は複数が存在する。従来通り炭素に 1,200–2,400 ℃、55,000–100,000 気圧をかける高温高圧法 (High Pressure High Temperature, HPHT。静的高温高圧法と動的高圧高温法とがある)や、それに対して大気圧近傍で合成が可能な化学気相成長法 (Chemical Vapor Deposition, CVD。exa法、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法、燃焼炎法などがある)によりプラズマ状にしたガス(例えば、メタン水素を混合させたもの、その他にメタン-酸素エチレン-酸素などがある)から結晶を基板上で成長させる方法などが知られている。

人工ダイヤモンドは上述の静的高温高圧法においてはニッケルマンガンコバルトなどの金属(これらは触媒として合成時に用いられる)や窒素などの不純物の混入などで黄、緑、黒やこれらの混合した色等の結晶として生成されるのが一般的であり、また、大きな結晶を得ることが困難であるため、宝飾用途には利用されず、主に工業用ダイヤモンドとして研磨や切削加工(ルータービットやヤスリ)に利用されている。

近年では合成技術の向上により、透明度等が天然物と同等な品質の良い大型の人工ダイヤモンドを合成する事が技術的には可能となっているが、天然物との識別が困難な為、安価な合成物が出回るとダイヤモンド市場を暴落させ、ダイヤモンドの資産価値を無くしてしまう危惧がある。このため、ダイヤモンド・シンジケートのデ・ビアスと合成技術を持つ企業とが協定を結び、合成するダイヤモンドには不純物を入れて着色し宝石としての価値を下げている。なお、ソビエト連邦崩壊直前に大量のソビエト連邦産ダイヤモンドが市場に出回ったが、産出量から考えると、これは人工ダイヤモンドだったのではないのかとの疑惑があった。現在、市販されている合成ダイヤモンドと呼ばれる宝飾品は、反射の具合などは非常によく似せているが、組成も物性もダイヤモンドとは違うものになっている。

また、これら単結晶のダイヤモンドと異なる超高硬度ナノ多結晶ダイヤモンド(NPD:nano-polycrystalline diamond)が、愛媛大学の入船徹男教授らの研究グループによって合成されている(2003年Natureに発表)。これは、15万気圧・2300℃という超高圧高温条件下で生成されるもので、世界で最も硬いダイヤモンドである。また、2006年にはこのNPDの大型化(4 ㎜)に成功している。これの加工により、超高圧発生装置の能力向上や工業的な応用が期待されている。 愛媛大学にちなみ、HIME-DIA(Highly Incompressible and Mechanically Endurable Diamond, 高硬度高耐性ダイヤモンド)と名づけられている。

[編集] 工業用途

上述の高温高圧合成などによって合成された工業用ダイヤモンドはもはや高価な材料ではない。工業用ダイヤモンドにも多種あるが、の10分の1程度の価格で取引されているものが多い。ダイヤモンドを工業用途として使用する最大の特徴はその硬さである。工業用ダイヤモンドや宝飾用途に適さない色の天然の結晶を用いることで、電子材料、超硬合金、セラミック・アルミニウム系合金などの高硬度材料・難削材料の研削(ダイヤモンドカッター)・研磨をはじめとして、切削用バイト、木材加工などオールラウンドな加工が可能である。

工業用ダイヤモンドには用途により、数ナノメートルから数ミリメートルまでの粒径、形状、破砕性、表面状態などによる多くの品種がある。また、前述のバイトは超硬合金を基板にダイヤモンドをコバルトなどと共に焼結することによって得られるダイヤモンド焼結体を指すこともある。しかしながら、ダイヤモンドは高温下で (Fe)、コバルト (Co)、ニッケル (Ni) と容易に化学反応を起こす、などの性質のために、など鉄基合金や耐熱合金の切削には適さない。ダイヤモンドが使用できない分野では、代わりに立方晶窒化ホウ素 (cubic Boron Nitride, cBN) の焼結体(「ボラゾン™」)を用いる。

プラズマCVDなどの気相合成法によりダイヤモンドのコーティングは可能であり、一部のドリルなどでは既に実用化されている。

人工ダイヤには、人の遺灰の中の炭素を元にして作られる物もある。

[編集] ダイヤモンドアンビルセル

ダイヤモンドアンビルセル(Diamond Anvil Cell: DAC)は、天然または人工合成のダイヤモンドを使って超高圧を実現するための機械。小さなダイヤモンドを2つ用意し、その間に試料を挟み込んで圧縮する。小型(手のひらサイズ)で透明(リアルタイムで光学的な観測が可能)であり、サブテラパスカル(数百万気圧、数百GPa)までの加圧が可能である。鉱物学や物性物理学などで用いられる。一方、ダイヤモンドそのものが大型化できないので、試料は大変小さなものにしなければならない。ダイヤモンド以外に、サファイヤ、炭化ケイ素を使ったアンビルセルもあるが、加圧できる圧力はダイヤモンドよりも劣る。なお、アンビルとは金床のことである。

[編集] 比喩

ダイヤモンドは、貴重なもの・高価なもの・お金になるものの比喩としてよく使われる。また、色を冠して特定の商品を表すこともある。

[編集] 関連事項

Wikimedia Commons
ウィキメディア・コモンズに、ダイヤモンドに関連するカテゴリがあります。

[編集] 参考文献

[編集] 外部リンク

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