アチザリット
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アチザリット装甲兵員輸送車 | |
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アチザリットMk.1 |
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基礎データ | |
全長 | 6.2m |
全幅 | 3.60m |
全高 | >2m |
重量 | 44t |
乗員数 | 3名 + 兵員7名収容 |
装甲・武装 | |
装甲 | 200mm厚 |
主武装 | 7.62mm機関銃×3 |
副武装 | 60mm迫撃砲 |
機動力 | |
速度 | 64km/h (整地) |
エンジン | ディーゼル 850hp |
懸架・駆動 | トーションバー式 |
行動距離 | |
出力重量比 | 19hp/t |
アチザリット(英:Achzarit、ヘブライ語:אכזרית)は、イスラエル国防軍(IDF)で運用されている装甲兵員輸送車(APC)。アラブ諸国から捕獲した旧ソ連製T-54/55戦車をベースに製作されている。
IDFは第四次中東戦争以降、歩兵を戦車部隊に随行させるための輸送手段として、アメリカ製のM113を主に使用していたが、戦争の形態が市街での低強度紛争(LIC)に移行すると共に、対戦車ミサイルやRPG-7、地雷などに対するM113のアルミニウム合金の装甲の脆弱性が大きな問題となった。M60やセンチュリオンの様に爆発反応装甲による防御をM113に施すのは重量や作動時の自己破損の問題から困難であり、代替となる強固かつ安価なAPCが求められた。その解答として、過去の戦闘でアラブ側から数百両を捕獲していたT-54/55戦車を改造して、新たなAPCが製作される事となった。開発は1980年代初頭から始められ、1990年頃より運用されている。
基本構造は、オリジナルのT-54/55戦車の車体を、スペースドアーマーを兼ねた燃料タンクで取り囲んだ構造になっている。エンジンもより強力なディーゼルエンジンに換装され、車体の左後部に収められている。その右側に兵員の昇降口が設けられ、ハッチは上下に開くクラム・シェル(貝殻)方式となっているが、前方の敵側からも兵員昇降中である事が露呈してしまうという欠点がある。サスペンションも国産の強力な物に交換され、重量に対して不足気味のエンジン出力を補っている。車内には乗員保護のための耐NBC兵器用換気システムや自動消火システムが装備されている。
武装は7.62mm機関銃を3丁装備しており、うち1丁はOWS(Overhead Weapon Station)にマウントされ車内からの遠隔操作が可能である。また車内装填式の60mm迫撃砲も装備している。この様にAPCとしてはやや重武装である事から歩兵戦闘車に分類される事もある。OWSを外して通信機能を強化した戦闘指揮車タイプも存在する。