アポストロフィー
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アポストロフィー (英: apostrophe) は、アポストロフィ、アポストロフともいい、欧文の約物のひとつで、単語中(冒頭、途中、最後)で使われる記号である。コンマと同形であるが、コンマがベースライン上に打たれるのに対し、アポストロフィーは文字の上端に打たれる。また、英語のシングルクォーテーションの特に閉じる形と同形としているフォントもある。
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[編集] 音と文字の省略を表すアポストロフィー
- 英語では、音の省略に伴い文字を省略したことを表す。しばしば複数の単語が一語に綴られるのに伴う。所有を表す-'s は、現在では省略前の形では綴られないが、元来は省略を表す。複数形の所有は、-s'で表される。
- 例
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- ov'r < over
- ev'ry < every
- I'm < I am
- you're < you are
- it's, 'tis < it is
- can't < cannot, can not
- ドイツ語でも音の省略に伴い文字を省略したことを表す。
- 例
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- ist's < ist es
- hab' < habe
- エスペラントでも音の省略に伴い文字を省略したことを示す。名詞語尾-oを省略する場合や、母音で終わる前置詞の後ろにある定冠詞の母音 aを省略する場合に使われる。
- 例
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- 名詞語尾-oを省略する例
- 省略してもアクセントの位置は変わらない。対格や複数の名詞、-oで終わる相関詞は省略できない。
- apostrof' < apostrofo
- poezi' < poezio
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- 定冠詞の aを省略する例
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- de l' < de la
- ĉe l' < ĉe la
- je l' < je la
- tra l' < tra la
- pri l' < pri la
- pro l' < pro la
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- その他
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- dank'al < danke al, danko al 「~のおかげで」(前置詞のように使う)
- un', du, tri < unu, du, tri 「いち、に、さん」(声を出して数える場合などに、リズム合わせのため省略する)
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- フランス語やイタリア語では、2語を続けると生じる母音の連続を避けるために先行する母音を省略するときに使われる。この場合、先行する語と後続する語は1語に綴られる。フランス語の冠詞では必ずこの省略が行われる。
- 例
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- l' < la
- l' < le
- 2桁の数字の前に置いて、西暦の年号の百の位以上を省略したことを表す。
- 例
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- '90 < 1990
- '04 < 2004
[編集] 文字の省略を表すアポストロフィー
- 英語ではしばしば、文字の省略を表すためにアポストロフィーが用いられる。この場合、発音は省略する前のままである。この用途には単語によって終止符を用いる。
- 例
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- gov't < government (governmentと読む)
- int'l < international (internationalと読む)
- 終止符を用いる例:
- Rec. < Record, Reception ...
[編集] 発音を表すアポストロフィー
- 日本語のローマ字では、nと母音字やyの間において、nを「ん」(普通は鼻母音)と発音することを表す。
- 声門破裂音/ʔ/(IPA) = /?/(X-SAMPA)を表す。
- ベラルーシ語やウクライナ語では直前の子音と直後の母音を分けて発音させ(日本のローマ字と同じ)、直前の音が軟子音(口蓋子音)ならば硬子音非口蓋子音)化する働きを持つ。(?)
- IPAの発音記号では、放出音を表すために、子音字の右に付す。
- スラヴ語の発音表記に用いられたときは、軟子音(口蓋化音)を表すことが多い。
[編集] そのほかの区切りを表すアポストロフィー
- 英語で、アルファベットや数詞の複数を表すsの前にアポストロフィーが置かれる。
- 例
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- a's
- 50's
- オランダ語では、複数を表すために使われる場合がある。
- 例
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- foto's
- taxi's
- ドイツ語では固有名詞に形容詞化語尾を付けたり、~sや~zなどで終わる名詞の属格・複数を表したりするのに用いられる。
- 例
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- Ohm'sch < Ohm + 形容詞化語尾-sch
- Andreas' = 固有名詞Andreasの属格
- (Die) Steinmetz' = 姓Steinmetzの複数(Steinmetz達の意)
[編集] アポストロフィーに類似した記号
[編集] プライム
日本ではダッシュと呼ぶことが多い。
- 微分を表す。
- フィート、分(時間、角度)などの単位を表す。
- 例
- 2′3″ = 2フィート3インチ、2分3秒
- 1°2′3″ = 1時間2分3秒、1度2分3秒
- 類似していることを表す。
- 例
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- A′ = Aに類似しているもの
[編集] ハーチェク
- ダイアクリティカルマークの一種で、スロバキア語やチェコ語で、口蓋音を表すために、文字によりアポストロフィーに類似した記号が用いられる。
[編集] シングルクオート
- 引用符の一種で、間に文字列を挟むことにより引用符として用いる。アポストロフィーで挟むことにより代用することもある。
[編集] 符号位置
記号 | Unicode | JIS X 0213 | 実体参照 | 名称 |
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' | U+0027 | 1-2-15 | ' | アポストロフィ |