アルデヒド
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アルデヒド (aldehyde) はアルデヒド基 (formyl group, −CHO) を持つ有機化合物の総称。一般式 R-CHO で表される。水素結合を作らないために、アルコールに比べて極性溶媒に溶けにくいが、極性があるため水によく溶ける。また、炭化水素基をもつため有機溶媒にも溶ける。還元性を持ち、酸化されるとカルボン酸になる。銀鏡反応、フェーリング反応に陽性。アルデヒドのIUPAC名はアルカンの語尾 -ane を -anal に置き換えることで命名できる。アルデヒドの語源は脱水素アルコールを意味するラテン語 alcohol dehydrogenatum の al + dehyd + eである。ユストゥス・フォン・リービッヒが使い始めたとされる。
単糖類はアルデヒド基とケトン基を持つものに大別されるが、前者のアルデヒドの性質を持つ糖をアルドース、後者のケトンの性質を持つ糖をケトースと呼ぶ。
多くの生物にとって有害で、アルデヒド基がタンパク質の側鎖のアミノ基と反応を起こし、さらには架橋反応に進むため、これを凝固させる作用を持つ。それを利用したものに生物学研究におけるホルマリン固定やグルタールアルデヒド固定があるし、ブドウ糖のようなアルドースが、糖尿病において次第に血管のコラーゲンやエラスチン、水晶体のクリスタリンなどといった高寿命タンパク質を蝕み、こうしたタンパク質を多く含む器官に損傷を与えるのも、同じ原理による。また、アルデヒドの一種であるアセトアルデヒドはエタノールがアルコールデヒドロゲナーゼの触媒作用によって生成し、アルデヒドデヒドロゲナーゼの働きで酢酸となる。弱い型のアルデヒドデヒドロゲナーゼを持つ人はアセトアルデヒドの中毒(=二日酔い)になりやすい。
低級アルデヒドは強い刺激臭をもつ。また、アルデヒドは全体的に辛味を有し、特に芳香族アルデヒドは一部のスパイスの辛味成分ともなっている。
沸点を同じ炭素数について比べると、エーテル<アルデヒド<アルコール の順である。
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[編集] アルデヒド基
アルデヒド基は -CHO と構造が表される 1価の官能基のこと。ホルミル基 (formyl group) とも呼ばれ、「ホルミル-」は IUPAC命名法の接頭辞として用いられる。第一級アルコールの -CH2OH の部位を酸化することで得られる。また、アルデヒド基を酸化するとカルボキシル基を得ることができる。水素結合がごく弱いため、自己会合は弱く、水との親和性も弱い。
[編集] 製法
アルデヒドは実験室的には第一級アルコールを弱い酸化剤(例えばクロロクロム酸ピリジニウム (PCC))で酸化すると生成する。
- R-CH2OH + oxidant → R-CHO
PCC酸化の他にも多くの酸化法が知られる。PDC酸化、スワーン酸化、TPAP酸化、デス・マーチン酸化 などを参照されたい。工業的な酸化方法では、銅などの触媒を用いてアルコールを空気または酸素で酸化する方法がよく用いられる。
工業的なアルデヒド合成法としては、アルケンの二重結合に対して水素と一酸化炭素を触媒を用いて付加させるヒドロホルミル化が多用される。
- RCH=CHR' + H2 + CO → RCH2-CHR'-CHO
[編集] 主な化学反応
アルデヒドとグリニャール試薬を反応させて、酸で処理するとアルコールが生成する。
- R-CHO + R'MgBr → RR'CHOH (R = 有機基または H)
アルデヒドを適切な酸化剤(例えば亜塩素酸ナトリウム)で酸化するとカルボン酸になる。
- R-CHO + HClO2 → R-CO2H + HOCl
銀鏡反応やフェーリング反応では、アルデヒドの還元力を利用している。