水素結合
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水素結合(すいそけつごう、hydrogen bond)とは、窒素、酸素、硫黄、ハロゲンなどの電気陰性度が大きな原子(陰性原子)に共有結合で結びついた水素原子が、近傍に位置した他の原子の孤立電子対とつくる非共有結合性の相互作用のこと。分子間、あるいは分子内に働く結合力として、蛋白質、核酸などの生体高分子や、水、アンモニア、フッ化水素などの低分子が示す特異的な構造や機能の源となる作用である。
水素結合はもっぱら、陰性原子上で電気的に弱い陽性 (δ+) を帯びた水素が(右上図:水分子の例)、周囲の電気的に陰性な原子との間に引き起こす静電的な力として説明されることが多い。
水素結合は分子間力のひとつに挙げられるが、ファンデルワールス力よりは強く、共有結合よりは弱い。水素結合は、水の性質、たとえば相変化などの熱的性質、あるいは水と他の物質との親和性などにおいて重要な役割を担っている。たとえば水が氷になる時に体積が増えたりする現象にも水素結合が関与している。
生体高分子において水素結合は、蛋白質が二次構造以上の高次構造を形成する際、あるいは核酸の中で核酸塩基同士が相補的に結びつき二重らせん構造が形成する際に必要な、重要な駆動力となっている。
近年では、炭素上の水素が陰性原子と作る相互作用や、芳香環と水素との相互作用も弱い水素結合として認識されるようになってきた[1]。
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- ^ Desiraju, G. R.; Steiner, T. The Weak Hydrogen Bond Oxford Science Publications, 1999.