クルージングスペース
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クルージングスペースとは、不特定なゲイが集まって恋愛相手を探したり、その相手との性交(発展 -ハッテン-:恋愛が性的関係に発展するの意)が行われる場所を提供する、ゲイを対象とした性風俗産業の一つ。有料系発展場やヤリ部屋、ゲイサウナなどの別称でもしばしば呼ばれる。
発展場と呼ぶ場合も多いが、この場合は、公園や公衆浴場など、ゲイのハッテンが行われることを想定していない場所(無料系発展場)も含まれる。
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[編集] 概要
料金を支払って入店すると、その店の雰囲気にあった他の利用者が店内に来店しており、来店者同士で気に入れば性交等類似行為(性行為)がなされる。
大規模店を中心として、終夜・終日営業を行うため宿泊可能なものもある。料金がラブホテルよりも安価なため、カップルや、単に宿泊目的で利用されることもある。ことに、早朝に他のナイトクラブや飲食店が閉店する時間帯になると、多数の客が休憩目的に来店する。店子(みせこ:ゲイバーなどの従業員のこと)や売り子(男娼)など職業的ゲイが寝泊りの場としていることもある。
店内で不特定多数の相手と性行為を行うので、エイズ等をはじめとする性感染症の危険が指摘される。セーファーセックスは必須である。
ハッテンやフリーセックスを行うゲイに対しては、批判的な声がゲイ内部からもあり、しばしばウリ専や無料系発展場と共にマスコミによるゲイバッシングや興味本位の取材対象となることもある。ただし出会いの場所として利用するゲイもいる事から、必ずしもマイナス面だけでとらえるのは間違っているとの考えもある。
※来店時に雰囲気にそぐわない場合は、入場を断られることもある。
[編集] クルージングスペースとウリ専の違い
ゲイを対象とした他の性風俗産業としては、男娼が性的サービスを行うウリ専が存在する。しかし、クルージングスペースは、公式にはあくまで場所貸しを行っているだけであり、性交を必ずしも伴わない。あくまで利用者同士の自由意志でハッテンが行われる点でウリ専と異なる。
一部店では、男娼が、個人的に休息やハッテンを目的として来店するのではなく、有料で性的サービスを行っている場合がみられる。通常は店とまったく関係ないところで行われる行為である。
一方で、ウリ専を併設している店舗も存在する。
[編集] 店舗概要
一般的には、大部屋のミックスルームと複数の個室を持つ「ヤリ部屋」タイプの構造を持つ店舗が多い。
建物全てを発展場として使用している大規模店は、浴室など宿泊のための設備が充実しており、宿泊客の比率が高い。
ノンケや女性の誤入場を防ぐため、ゲイバーなどと同様に、入口に「会員制」などの表記がされる場合が多い。実際には年齢制限などの条件を満たすゲイならば誰でも入場できるが、入会金を徴収する店もいくつか存在する。
利用料金は、小規模な店舗の多くが1000~2000円、大規模店で3000円弱と低額で、再入場が可能な場合も多い。
利用者同士の出会いに頼った営業形態を反映して、スポーツジム利用者や若年者など、来場者を集めると店側が期待する来場者に対する値引きや、早朝・デイタイムの値引きもしばしば行われる。
[編集] 特殊設備
店内には特有の特殊設備を設置している場合もある。
- トレーニングマシン
- サンタンマシン
- ケツ掘りブランコ
- 迷路: 出会いの補助目的で、真っ暗で相手が見えない迷路が設置される。
- PC: 出会いサイトや店の公式サイトで待ち合わせをする目的で設置されている。悪用厳禁。
[編集] 種類
[編集] 店舗の形態による種別
- ヤリ部屋タイプ - ミックスルーム、個室(基本的に無料)を持つ。マンションの一室で経営している場合もある。
- サウナ・公衆浴場タイプ - 上記に浴場を併設する。欧米ではこちらが主流といわれる。
- ホテルタイプ - 上記に加えて、有料個室を持つ。「24会館」「北欧館」などが有名。
- ビデオボックスタイプ - ゲイ向けアダルトビデオを放映するテレビを多数店内に設備するもの。インターネットカフェの形態をとるものもある。着衣系が比較的多いとされる。壁に開いた穴から性器を隣室に露出したり、隣室と手紙交換をして移動して性行為に及ぶ形式などがある。
- 映画館タイプ - ゲイ映画を上映し、館内でハッテンが行われることを前提とした映画館。
- バータイプ - バーカウンターを設備しバーテンダーやウェイターが飲食物を提供するもの。
おおむね営業許可も上記のような形態でとられる場合が多い。
[編集] 体型別
店側で、入場者の体型を指定している場合がある。
- デブ・ガッチリ・熊系・スジ筋(種類の意味はゲイ用語を参照)
年齢制限もしばしば行われる。
[編集] 趣味嗜好別
場内の服装は、店側によりある程度指定されているか暗黙の常識となっている。曜日によりドレスコードを設定している場合もある。指定の衣類やタオル類は店側が貸し出す場合もある。
そのほか、性的志向にあわせて下記のような服装が指定されることが多い。
- アンダーウェア(下着等)
- 全裸
- 六尺褌
- 女装
- スポーツユニホーム - 競パン(競泳用水着)など
- 浴衣 - 大型店で用意されている場合が多い。
- 着衣 - 外出着のまま入場する。
[編集] 啓発
近年、HIV感染者が増加しているため店内には「コンドーム使用」の呼びかけが掲示してある。
脱法ドラッグは、薬事法の規制(幻覚剤など薬としての販売を禁止)を除けば合法とされてきたが、近年の法規制・取締強化から、店頭での販売を見合わせる施設が増加している。しかし一部店ではいまだに脱法ドラッグを販売している。
ゲイ雑誌でも「(コンドームを用いた)セイファーセックス」を呼びかけてはいるが、その裏ページがクルージングスポットでの「派手な」セックスを助長するような広告になっていたりと、首尾一貫していない印象がある。
基本的に経営者側は入場料徴収以降はタッチしない暗黙の了解があるため、啓発には難しい環境という現実がある。
[編集] 立地条件
大都市圏に集中している。ゲイタウンと呼ばれるような、ゲイ向けの店舗が多い場所と、交通便利なターミナル駅の近くで営業している例が多い。