コアビタシオン
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コアビタシオン(fr: Cohabitation、「共存」「同居」)とは、フランス第五共和政において、所属勢力の異なる大統領と首相が共存するとき、大統領の権限が大きく制限されることを指す。広義には、半大統領制ないし二元主義型議院内閣制を採用した国々における相似の現象、または大統領と首相との対立をも指すことがある。
[編集] 概説
フランス第五共和政下での政治体制において大統領は、首相任免権による行政権の掌握や、議会解散権などの巨大な権限を有する。一方、首相は大統領に対して責任を負うだけでなく、議会(下院)に対しても責任を負う。そのため、大統領の所属政党と議会の多数派勢力が異なる場合、大統領の所属勢力から首相を選任すると、議会による不信任によって内閣が瓦解する不安定な状況になる。この場合、大統領自身が所属していない議会多数派から首相を選任することによって、政局を安定させることが出来る。ただし、大統領の権限には首相の同意が必要な物も少なくない(例えば法案拒否権)。このため、大統領はコアビタシオンの状態では権限が縮小される。保守政党の大統領と革新政党の首相、逆に革新政党の大統領と保守政党の首相のような組み合わせのことを、特に「保革共存政権」と呼ぶことがある。
なお、ドイツやイタリアのように、大統領の権限が儀礼的な国家元首としての役割に限定される一元主義型議院内閣制の国々では、コアビタシオンとは言わない。
コアビタシオン | 大統領 | 首相 |
---|---|---|
第1次コアビタシオン (1986年3月 - 1988年5月) |
ミッテラン(社会党) | シラク(共和国連合) |
第2次コアビタシオン (1993年3月 - 1995年7月) |
ミッテラン(社会党) | バラデュール(共和国連合) |
第3次コアビタシオン (1997年3月 - 2002年5月) |
シラク(共和国連合) | ジョスパン(社会党) |
[編集] ねじれ現象
コアビタシオンに似た現象として、議会とは関係なく有権者の直接選挙によって選ばれた首長(大統領や知事)の会派が議会において多数派を占めていない場合、首長の提案が議会で賛同されにくくなり、議会運営に支障が来たしやすい。このような現象をねじれ現象と呼ぶことがある。