半大統領制
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半大統領制(はんだいとうりょうせい、Semi-presidential system)とは、議院内閣制の枠組みを採りながら、より権限の大きな大統領を有する政治体制である。
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[編集] 概説
フランスでは第二次大戦後制定された第四共和国憲法のもとで、小党が分立して不安定な政府が連続したため、1958年、ド・ゴール首相の下、議院内閣制のシステムを採りながらも大幅に大統領権限を強化した第五共和国憲法を採用した。これにより形式的・儀礼的な権限しか持たなかった大統領は「三権の総覧者」として議会解散権・閣僚任免権・条約批准権など大幅な権限を有することとなった。大統領に大きな権限があるにもかかわらず、議院内閣制の枠組みを取っていることから、「半大統領制」あるいは「大統領制的議院内閣制」(Presidential-parliamentary system)と呼ばれる。現在、フランスの統治機構は典型的な半大統領制と見なされている。
半大統領制と議院内閣制との違いは、ただ儀礼、典礼上のみの権限だけではなく広範な執行権を持つ大統領が存在する事であり、多くの場合国民の直接選挙によって選ばれる。大統領制との違いは議会の権限が小さく、より強力な政府が存在し、政府は大統領だけでなく議会に対しても責任を有する事である。また、大統領は議会の解散権も持つのが普通であり、憲法上、半大統領制の大統領は米国などの大統領よりも広範かつ強力な権限を有する。
フランスでは、大統領が首相の任免権を持つが、議会が首相不信任権を有するため、実際には議会の多数党から首相が選ばれるのを常としている。権限の分担としては大統領は外交政策に、首相は内政に責任を有するとされている。この分担は、憲法では明確に述べられてはいないが、政治的慣例として発展してきた。
[編集] 問題
大統領と首相が異なった(しばしばライバル関係である)政党から選出されている場合、コアビタシオン(cohabitation 日本では保革共存などと訳される)と呼ばれる事がある。この時、両者の態度、政党のイデオロギー、支持層の要求によって、抑制と均衡が効果的に機能するか、あるいはひどく国家の運営に支障をきたすかが決まる。
[編集] 例外
興味深いことに、オーストリアやアイルランドの大統領は、憲法上フランスの大統領よりも強大な権限を与えられている。しかしこれらの国家では政治的慣習として、大統領はその権限の多くを行使しようとしないため、実質的には一元主義型議院内閣制と同等の政治体制となっている。また、フィンランドはフランスの第五共和国憲法を模した制度を利用してきたが、2000年の新憲法により大統領権限は縮小され、大統領の専権事項とされたいくつかの事項は議会及び政府と協力して行なうこととされた。よって今のフィンランドは議院内閣制に近い体制となっている。
[編集] 主な国家
- フランス
- ロシア
- ウクライナ(大統領は議会解散権を持たず、首相指名には議会の承認が必要)
- ルーマニア
- 韓国(ただし大統領は議会解散権をもたない)
- 台湾(中華民国):総統(大統領)が行政院長を任命。立法院(国会)の承認は不要。
総統による立法院の解散は、立法院が行政院長不信任決議を採択した場合のみ、行政院長の要請を受けた上で実施できる。 - モンゴル国(ただし大統領は議会解散権をもたない)
- スリランカ
- レバノン
- パキスタン(1998年以降、実質的にはパルヴェーズ・ムシャラフによる軍事独裁政権が続いている)
- エジプト(実質的には大統領の強権政治)
[編集] 関連項目
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