ゴミ箱
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ゴミ箱(ごみばこ、Trash)は主にGUIデスクトップ上に配置される特殊なアイコンであり、不要なファイルをそこに収めて、実際にリソースの回収が必要になった時点で削除を行うメカニズムである。Macintoshのゴミ箱が代表的。同様の機構にリサイクラ (NEXTSTEP)、ごみ箱(Windows)等がある。
Macintosh(Mac OS 9以前)やWindowsではデスクトップに置かれ、NEXTSTEPやMac OS XではDockに位置する。
[編集] 概念と歴史
ゴミ箱が単なる削除と異なるのは、リソースを回収するまではファイルの削除を取りやめる事ができるという点である。これにより誤操作によるファイル消失を防ぐ事ができるほか、情報という目に見えないものを扱ったファイルを、実体を持った対象として認識させる心理的な作用も働く。
また多くはファイルアイコンをドラッグ操作でゴミ箱へと移動するため、操作概念が明確で誤りが起こりにくい。ただ、一方で「いらないファイルを削除するのにいちいちゴミ箱へ移動するのは面倒だし、回収は二度手間」という考え方もあり、ショートカットが用意されている場合もある。
ゴミ箱の起源は古く、Macintoshの前身であるLisaのOffice System 1にはすでにその姿を見る事ができる。この時はまだ、一度に1セットのファイルしか収めることができず、ファイルを追加すると古い内容が自動的に削除されるようになっていた。ゴミ箱が一般に広まったのはMacintosh以降である。1991年にリリースされたSystem7では、「ゴミ箱を空に」オプションをクリックするまではファイルが削除されない仕様に改良された。Appleはゴミ箱を「Macintoshデスクトップの象徴」とみなしており、Windows95が「ごみ箱」を採用した時は訴訟問題にまで発展した事がある[1]。
「GUIを著作権で保護するべきか」という問題は別にしても、Windowsのごみ箱がとってつけた機能である事は事実である。元々Windowsはファイルブラウザ系の選択・操作メニュー型の文化であり、アイコンの実体性を意識したゴミ箱がユーザーインターフェース的に調和しているとは言えない。これは他のデスクトップ環境でも同様の傾向が強く、Macintoshの模倣に終始しているケースがほとんどである。「ファイルをユーザーにどう認識させるか」を含めた包括的な見解が必要であろう。
[編集] その他
Macintoshのゴミ箱は、「デスクトップからのオブジェクトの削除」という共通点から、ファイルの削除とともにボリューム(ディスクやサーバーなど)のイジェクトという機能も持っていた。これはMacintoshのディスクドライブには通常イジェクトボタンはなく、ゴミ箱がイジェクト機能に転用されたためである。この点がデスクトップメタファーとして不適切であると批判されていた。現在もMacintoshにはドライブにボタンはないが、キーボードにイジェクトボタンが付いており、Mac OSに不慣れなユーザーでもわかりやすくなっている。また、Mac OS Xでは、ボリュームをドラッグすると、Dock内のゴミ箱アイコンが三角形のイジェクトアイコンに変化するように改良されている。他のウィンドウシステム同様に、コンテクストメニューからイジェクト機能を呼び出すことも可能である。
BTRONの実身・仮身ネットワークはファイルの参照=ファイルの存在であり、他からの参照があるファイルをそもそも消す事ができない。そのような背景もあってBTRONにはGUIとしては珍しくゴミ箱相当の機能がない。
[編集] 脚注
- ^ 英語ではWindowsのごみ箱は "Recycle bin" 、Macintoshのゴミ箱は "Trash Can" である