ゾンビ
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ゾンビ (Zombie) は、何らかの力で死体のまま蘇った人間の総称である。ホラーやファンタジー作品などによく登場し、腐った死体が歩き回るという描写がよくなされる。
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[編集] 起源
ゾンビの語源は蛇の意。元は西インド諸島に起源を持つブードゥー教 (Voodoo) の教義に強い精神力を持つ者が死者を蘇らせ意のままに動かすというものがあり、この蘇った死者をゾンビと呼んだ。死体であるため疲れを知らず、ロボットのように働くため、ハイチやその周辺では貴重な労働力として農園で使われたとされる。
民俗学的には死霊崇拝の変形である。 だが死者を蘇らせるというよりは幻覚剤の一種を用いて、生きた人間の記憶や意志を奪って使役する術であるという説もある。 他にも麻酔の一種を用いて、仮死状態にさせて死亡したかのように見せかけ、更に麻酔が覚めた人をまるで生き返ってきたかのように見せるという説もある。
[編集] ゾンビパウダー
フグの毒の成分であるテトロドトキシンから作られると言う粉末で、死者を蘇らせると言われ、これを使って実際に死者を蘇らせるというパフォーマンスがある。またテトロドトキシンによって死亡した時に、まれにこの効果があるというが、蘇った人間は性格が凶暴になり、しばらくすると死ぬという。 ゾンビはもともとブードゥー教での会議によって決定される刑罰で生まれるものであるという説もある。悪い行いをしたものに対し皮膚から浸透する特殊な薬をひそかに投与し、仮死状態にするというものであり、それを埋葬してしまい酸欠による脳障害を引き起こしてしまった者がゾンビであるという。
[編集] 架空世界におけるゾンビ
また、冒頭で述べたように、ゾンビはホラーやファンタジー作品の中に多く登場する。その中では、元の労働力としての姿で描かれることは少なく、人間に敵対するものとして描かれることが多い。
このゾンビ像を決定づけたのは、1968年のジョージ・A・ロメロのアメリカ映画『Night of the Living Dead』である。このなかでロメロはブードゥー教のゾンビに吸血鬼の特徴を混ぜ込み新たな恐怖である「生ける死体」をつくりあげたのであった。このゾンビは、広く知られ、後のゾンビはほとんどがこのロメロの影響下にある。
ただし『Night of the Living Dead』のゾンビ像は、『プラン9・フロム・アウタースペース』『Invisible Invaders』(1959年)『恐怖の足跡』(1961年)などの死者たちの描写から影響を受けている点、そしてそれらの映画群もリチャード・マシスンの小説『吸血鬼(地球最後の男)』で描かれている「主人公の立て篭もる一軒家に生前の姿のままの吸血鬼たちが押し寄せてくる」というイメージが原点である点は記憶に留めておくべきである。
SF作品として化学薬品等の影響によるものとする設定も以前より存在したが、最近ではカプコンのゲームシリーズ『バイオハザード』の影響があってか、呪いなどでゾンビが作られるという設定よりも実験や特殊な病気への感染によりゾンビが作られるという設定のほうが主流になりつつある。これらでは伝染という形で被害が拡大するパニック映画の様相を呈するものも多い。
一部ではこれらのゾンビをブードゥーのゾンビと区別するために、ロメロの映画に倣って「Living Dead」(生ける屍)と分類・呼称している。これらでは人間以外のゾンビも登場し、動物が腐りかけた肉体で人を襲ったりする描写も登場する。それぞれの作品によって異なるが、全般的なゾンビの特徴としては、あまり複雑な動きはできず、動作も緩慢である。また、頭部を破壊されたり、燃やされると活動を停止するという弱点(呪術によるゾンビは、銀貨をくわえさせたり、口に塩をつめて縫い合わせるというものもある)も設定されている。
和製ホラーではあまりゾンビは登場しないが、最近は『SIREN』や『屍鬼』のように日本社会にうまく持ち込んだ作品もある。
[編集] ゾンビを題材にした映画作品
- White Zombie (1932年、邦題:恐怖城/ホワイト・ゾンビ) - ブードゥー型ゾンビ
- The Plague of the Zombies (1965年、邦題:吸血ゾンビ) - ブードゥー型ゾンビ
- Night of the Living Dead (1968年、邦題:ナイト・オブ・ザ・リビングデッド)
- Let Sleeping Corpses Lie(1974年 邦題:悪魔の墓場)
- Dawn of the Dead(1978年 邦題:ゾンビ)
- ZOMBIE2(1980年 邦題:サンゲリア)
- ZOMBIE3 THE NIGHTS OF TERROR(1980年 邦題:ゾンビ3)
- DEAD & BURIED(1981年 邦題:ゾンゲリア)
- Evil Dead(1982年 邦題:死霊のはらわた)
- Re Animator(1985年 邦題:死霊のしたたり)
- Day of the Dead(1985年 邦題:死霊のえじき)
- Return of the Living Dead (1985年 邦題:バタリアン)
- Evil Dead II(1987年 邦題:死霊のはらわたII)
- The Serpent and The Rainbow(1988年 邦題:ゾンビ伝説) - ブードゥー型ゾンビ
- the Bride of Re Animator(1989年 邦題:死霊のしたたり2)
- PET SEMATARY(1989年 邦題:ペットセメタリー)
- Leif Jonkers DARKNESS(1992年 邦題:新・死霊のえじき)
- BrainDead(1992年 邦題:ブレインデッド)
- Premutos der Gefallene Engel(1998年 邦題:新ゾンビ)
- Night of the Living Dead (邦題:ナイト・オブ・ザ・リビングデッド/死霊創世記) - 1968年に製作された同題作品のリメイク
- 28 Days Later(2002年 邦題:28日後...)
- Resident Evil(2002年 邦題:バイオハザード)
- Beyond Re Animator(2003年 邦題:死霊のしたたり3)
- Dawn of the Dead(2004年 邦題ドーン・オブ・ザ・デッド) - 1978年に製作された同題作品のリメイク
- Resident Evil Apocalypse(2004年 邦題:バイオハザードII アポカリプス)
- Shaun of the Dead (2004年 邦題:ショーン・オブ・ザ・デッド) - コメディー映画
- Zombie of the Dead
- Children of the Living Dead(邦題:チルドレン・オブ・ザ・デッド)
- Land of the Dead(2005年 邦題:ランド・オブ・ザ・デッド)
- サイレン FORBIDDEN SIREN (2005年)
- 東京ゾンビ(2005年)
- オトシモノ(2006年)
[編集] 別の意味でのゾンビ
ゾンビは日本で「活動死体」等とも形容されるが、その一方で様々な意味が追加される形で、別の物の形容詞的に用いられる場合がある。これらではゾンビ的性質を挙げて、そのように呼称している。
- サバイバルゲーム
- ゲームルール上で「デッド(死んだ事になっている)」したプレーヤーがルールを無視してゲームを続行し、他プレーヤーを攻撃した場合などに「ゾンビ」と呼ばれる。ルール・マナー違反となるので他のプレーヤーの気分を害しやすい。特殊ルールとして、一度「死んだ」プレーヤーの収容される“捕虜収容所”を襲撃し救出する事で、救出されたプレーヤーをゾンビと呼びゲームへの参加続行を認めるものや、敵に撃たれたプレーヤーが、映画のゾンビのようにその敵チームに加わって元の自陣に攻め込まねばならないルールもある。サバイバルゲームで一般的にゾンビというと前述の違反のことをさすことが多いことから、混乱を防ぐためにこれらのゾンビをリビングデッド(生ける死者)と呼び区別することもある。
- コンピュータウイルス感染パソコン
- これは前出の「病気感染によるゾンビ化」にも関連するが、近年のコンピュータウイルスはパソコンに感染後、ネットワークに接続された他のコンピュータに攻撃(クラック)を自動的に仕掛け、他のパソコンを汚染する。特に悪質なウイルスのケースでは、感染パソコンに外部から命令が送られると、これら感染パソコンが一斉に迷惑メール送信を始めたり、または所定サイトにDoS攻撃を行う等の、何等かの力で操られたゾンビ軍団のような働きをする場合もある。この感染パソコンを指して「ゾンビパソコン(またはゾンビPC、ゾンビマシン)」と形容するセキュリティ技術筋には呼ばれ技術系ニュースサイトでもそれらの語が用いられているが、「スパム」のように一般的な用語にはなっていない。
- ゾンビウィンドウ
- ブラウザクラッシャー(ブラクラ)の一種で、ウィンドウを閉じてもゾンビのごとく何度も立ち上がることから、この名前が付いた。
- UNIXやWindowsのゾンビプロセス
- 子プロセスが終了しても、親プロセスがwait()関数などでプロセスの終了値を受け取るまで、プロセステーブルには子プロセスの情報が残される。これをゾンビプロセスと呼ぶ。プロセステーブルは有限な資源なのでゾンビプロセスが大量に発生するとシステムは機能しなくなる。→DoS攻撃
[編集] 関連項目
- ゾンビ(映画)
- バイオハザード(ゲーム)
- ミイラ
- キョンシー
- 「ゾンビーハンター」シリーズ(著:平井和正)
- ゾンビー・カクテル(カクテル)
- ゾンビープロセス
- 哲学的ゾンビ
- ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド
- ブードゥー教