ザ・ハリケーン (映画)
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ザ・ハリケーン The Hurricane |
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監督 | ノーマン・ジュイソン |
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製作 | アーミアン・バーンスタイン ジョン・ケッチャム ノーマン・ジュイソン |
脚本 | アーミヤン・バーンスタイン ダン・ゴードン |
出演者 | デンゼル・ワシントン |
音楽 | クリストファー・ヤング |
撮影 | ロジャー・ディーキンス |
編集 | ステファン・E・リヴキン |
公開 | 1999年12月29日 ![]() 2000年6月24日 ![]() |
上映時間 | 145分 |
製作国 | アメリカ |
言語 | 英語 |
制作費 | $38,000,000 |
allcinema | |
IMDb | |
ザ・ハリケーン(The Hurricane)は、デンゼル・ワシントンを主演に迎えて1999年に製作・公開された映画。この映画は元プロボクサー ルービン・'ハリケーン'・カーターの自伝を元に製作され、彼が起こしたとされる殺人事件と裁判の不正、投獄されてからの約20年間について描かれている。
ルービン・'ハリケーン'・カーターの自伝『16thラウンド』をアーミヤン・バーンスタイン、ダン・ゴードンが脚本化し、ノーマン・ジェイソンが監督を担当した。
目次 |
[編集] プロット
この映画はミドルウェイト級のプロボクサー、ルービン・'ハリケーン'・カーターの人生のうち1966年から1985年までの間に起こった事について描かれている。獄中で約20年間も冤罪による不当な扱いにどう耐えたのかが大きなテーマになっている。サイドストーリーとしてブルックリンでの社会的・経済的に困窮した少年時代、そしてルービンの自伝を読んだカナダ人の支援グループを得るまでの流れも描かれている。映画は最後に最高裁でルービン・'ハリケーン'・カーターが無罪を勝ち取るところで終わり、スタッフロールの前にルービンを含むそれぞれのその後の人生についてが字幕で書かれている。
[編集] 議論
公開後、この映画についてカル・ディール、有力紙ヘラルド新聞の記者ラリー・エルダー、トーマス・クロウ、バーバラ・バーンズ、ルービンに殺害されたとされる被害者の娘ヘーゼル・タニス等が事実とは違う事が描かれていると発言した。例を挙げると、ルービンの犯罪歴や軍歴、警察の記録、裁判に提出された証拠品について等が挙げられる。
有力紙ニューヨーク・タイムズ新聞の記者セルウィン・ラブ、ニューヨーク・スターレジャー新聞の記者ポール・マルシャイン、ニューヨークポスト新聞ジャック・ニューフィールドは何度もルービンと接してきたが、以下に挙げられるような事は全く無かった、と証言している。
- 映画の中でルービンは少年期に幼児性愛者からの強姦から身を守るために暴行したと描かれているが、実際には友人と結託して男性に強盗を働こうとした。
- 10歳の時に少年院に送られたとなっているが、実際には14歳の時に送られている。
- プロボクサー時代に3回の強盗で逮捕歴がある。
- プロボクサーになる前残酷なストリートファイター、ギャング団のボスとしてThe Apachesと呼ばれていた。
- 軍隊には不向きであるとして軍事裁判に4回も掛けられた。
- 陸軍を辞めて故郷に戻ってきたとされているが、実際には陸軍で働いた事は無い。
- 殺害後車を2回止めてからしばらく走って逮捕されたとなっているが、実際には車を2回目に止めた時に逮捕されている。
- カーターは車の前部座席には座っていなかった。
- 映画ではモナコにいたとされているが、実際にはポララ。
- ラファイエット・グリルは黒人を歓迎はしていない。
- コッカーシェイムは車の中で酒を飲んではいない。
- アブリー・コッカーシェイムはルービンの裁判前に亡くなってはいない。
- パトリシア・バレンチンは、テールライトが点灯されていなかったと証言している。
- パトリシア・バレンチンはカナダ人支援グループの求めに応じて証言を変えてはいない。
- パトリシア・バレンチンは事件のとき23歳であり、中年女性ではない。
- ルービンは白人陪審員のみにに2回試されたわけではない。
- 警察はカナダ人支援グループの要求に応じて再捜査をしたわけではない。
- カナダ人支援グループは新しい証拠を発見したわけではない。
- 刑事達は圧力を加えるためにカナダ人支援グループが運転する車に危害を加えてはいない。
- 幼少時代からルービンを目の敵にしていた人種差別主義者の刑事は存在しない。
- ルービンはミドルウェイト級の世界王者にはなっていない。
- カナダ人支援グループはルービンが収監されている刑務所から見えるホテルに滞在していたとなっているが、実際には刑務所から75マイル離れたアパートに滞在していた。
- 最高裁判所で結審した時、ルービンは熱で寝込んでいた。
- 最高裁でルービンに発言する機会は与えられていない。
- カナダ人支援グループは亡くなった捜査員の日記を発見していない。
- 刑務所ではルービンに自伝を書くための時間を与えてはいない。
- ルービン著の『穴の中の90日間』"90 days in the hole"は自伝として記録されていない。
- 最高裁での結審の日、ルービンを裁いた裁判は嘘で塗り固められたとは断定されていない。
前ミドルウェイト級世界チャンピオンのジョーイ・ジャーデロはルービンとの対戦を人種差別主義者との決闘として描かれたことに対し、名誉毀損でこの映画のプロデューサーを訴えた。彼はニューヨークデイリーニュース新聞とのインタビューで、この映画は一種のジョークで、彼(ルービン)は俺と15ラウンドも戦っていないと証言した。ルービン対ジャーデロ戦の審判はこれは観客の大げさな嘲笑を買っていると断言している。この裁判でプロデューサー達は300,000ドルをジャーデロに支払うように裁判所から命じられた。
一部の批評家はこの映画を擁護し、確かに真実を元に製作されたドキュメンタリー映画ではないが、刑務所の中孤立無援の状況下で真実を探求する人間の姿を描くのは素晴らしいと評した。
[編集] 受賞/ノミネート
デンゼル・ワシントンはこの映画でアカデミー主演男優賞にノミネートされた。さまざまな批評でも絶賛され、ニューヨークポスト新聞では、デンゼル・ワシントンはこの映画でアカデミー賞を取るべきだと主張したが、ゴールデン・グローブ賞とベルリン国際映画祭で(銀熊賞)を受賞しものの、アカデミー賞は逃した。監督のノーマン・ジュイソンは同じベルリン国際映画祭で'Prize of the Guild of German Art House Cinemas' を受賞した。最終的にこの映画は国際映画祭で6つの賞を受賞したこことになる。
[編集] キャスト
- デンゼル・ワシントン
- ヴィセロウス・レオン・シャノン
- デボラ・カーラ・アンガー
- リーヴ・シュレイバー
- ジョン・ハナ
- ダン・ヘダヤ
- デビー・モーガン
- クランシー・ブラウン
- デイヴィッド・ペイマー
- ハリス・ユーリン
- ロッド・スタイガー
- ヴィンセント・パストア
- アル・ワクスマン
- ベアトリス・ワインド
- トーニャ・パタノ
- フルヴィオ・セセル
- モハメッド・アリ
- エレン・バースタイン
- ルービン・'ハリケーン'・カーター
- ボブ・ディラン
- ジョー・フレイザー
カテゴリ: アメリカ合衆国の映画作品 | 1999年の映画 | 伝記映画