シオマネキ
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シオマネキ属 Uca | ||||||||||||||||
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分類 | ||||||||||||||||
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種 | ||||||||||||||||
(本文参照) | ||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||
Fiddler crab |
シオマネキ(潮招、望潮、英名Fiddler crab)は、カニ下目・スナガニ科に分類されるカニだが、スナガニ科のシオマネキ属(Uca属)に分類されるカニの総称として使われることが多い。オスの片方の鋏脚(はさみ)が非常に大きくなるカニとして知られた分類群である。
[編集] 特徴
横長の甲羅をもつが、甲幅は2cmほどのものから4cm近くに達するものまで種類によって差がある。複眼がついた眼柄は長くのび、それを収めるように眼窩が発達している。地表にいるときは眼柄を立ててまわりを広く見渡す。脚はがっちりしていて逃げ足も速い。オスの片方のはさみとメスの両方のはさみは小さく、砂をすくうのに都合がよいつくりをしている。
熱帯から温帯の海岸に巣穴を掘って生息するが、好みの海岸は干潟、マングローブ、砂浜など種類によって異なる。巣穴はふつう満潮線付近で、大潮の満潮時に巣穴が海面下になるかどうかという高さにある。潮が引くと海岸の地表に出てきて採餌行動や求愛行動をおこなうが、敵を発見するとすばやく巣穴に逃げこむ。
オスの片方の鋏脚は自分の甲羅近くまで大きくなるのが最大の特徴で、オスは潮が引くと地表でこの大きなはさみを振る"ウェービング(waving)"とよばれる求愛行動をおこなう。和名の「シオマネキ」は、この動作が「潮が早く満ちてくるように招いている」ように見えるためについたもの。なお英名の"Fiddler"とはヴァイオリン奏者のことで、やはりこれもウェービングの様子に由来する名前といえる。なお、このはさみは個体によって"利き腕"がちがい、右が大きい個体もいれば左が大きい個体もいる。
生息地の海岸が汚染されることに加え、干拓や埋め立てなどで天然の海岸が減少しており、分布域は各地でせばまっている。風変わりなカニだけに各地で自然保護のシンボル的存在ともなっている。
[編集] おもな種類
日本に分布するシオマネキ類は10種類ほどが知られ、分布域は三重県以南の西日本とされている。南に行くほど多くの種類が分布するので南西諸島では多くの種類を見ることができるが、ふつう日本本土ではシオマネキとハクセンシオマネキの2種類しか見られない。
シオマネキ Uca arcuata
- 甲幅は4cm近くにもなり、日本のシオマネキ類の中では最大の種類。オスの大きなはさみはややくすんだ赤色だが、泥をかぶりやすいので色がわかりにくいこともある。各地の干潟に分布するが、生息域が減少傾向にある。有明海沿岸地方ではアリアケガニやヤマトオサガニなどと漁獲し、「がん漬」という塩辛を作って食用にする。
ハクセンシオマネキ Uca lactea
- 甲幅は2cmほどで、シオマネキよりだいぶ小さい。体は灰白色で、オスの大きなはさみは白い。干潟よりも砂浜や転石海岸に生息し、シオマネキよりも多くの地域で見ることができる。オスのウェービングは動きが派手で、大きくはさみを振る様が白い扇を振って踊るように見えるためこの和名がついた。
ヒメシオマネキ Uca vocans
- 甲幅は2.5cmほど。オスの大きなはさみは上半分が白色、下半分が橙色をしている。南西諸島では広く分布している。
ベニシオマネキ Uca chlorophthalma crassipes
- 甲幅は2cmほど。名のとおりオスの大きなはさみが鮮紅色をしている。甲羅も赤いが、ほぼ全面が赤い個体から全面が黒い個体まで個体差が大きい。脚は黒い。沖縄諸島や小笠原諸島に分布し、マングローブ地帯を好む。
ルリマダラシオマネキ Uca tetragonon
- 甲幅は2.5cmほど。和名のとおり甲羅は鮮やかな水色で、青い小さな斑点がたくさんある。鋏脚はうすい橙色で脚は褐色。南西諸島に分布し、小石の多い砂浜海岸に生息するが、個体数は少ない。
[編集] 別名
タウッチョガネ、ガネツケガニ(有明海沿岸地方)など