セメレ
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セメレまたはセメレーはギリシア神話に登場する人物。テーバイの王カドモスとその妻ハルモニアの娘。ゼウスの子ディオニュソスの母。セメレの名は「月」をあらわし、アルテミスやセレネと関係がある。
[編集] 神話
ゼウスは密かに人間の姿をとってセメレと交わり、セメレは身重となった。このことを聞きつけたヘラは、嫉妬心を燃やした。ヘラはセメレの隣に住んでいる老婆に身をやつし、セメレに近づいてこうそそのかした。「あなたの交際相手は、本当は恐ろしい化け物かもしれない。怪しいと思ったら、本当の身分を明かすようにいいなさい」。セメレはこの忠告にしたがい、ゼウスに正体を明かすように迫った。しかし、ゼウスがこれを聞き入れないので、セメレはゼウスが本当の姿を見せない限り、寝室に入ることを許さないようにした。ついに怒ったゼウスが雷光に包まれた真の姿を現したので、セメレは雷光に当たって焼け死んでしまった。
セメレの胎児はヘルメスが取り上げ、ゼウスの大腿のなかに縫い込んだ。このとき胎児は6ヶ月であり、さらに3ヶ月後に誕生したのがディオニュソスである。ディオニュソスは、このために「二度生まれた者」「二つの門の子」などと呼ばれる。
ギリシアの地にディオニュソスの信仰が確立され、神の座を占めるようになったとき、彼はレルネの底なし沼を通ってタルタロスに下った。ディオニュソスは、ギンバイカの木をペルセポネに贈り、これと引き替えに母親のセメレを連れ戻した。セメレはトロイゼンのアルテミスの神殿に入り、そこから天に昇った。ディオニュソスは、他の死者たちがセメレを嫉妬したり、憤慨したりしないように、母の名前を改め、テュオネとして神々に紹介したという。
[編集] 関連
ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルのオラトリオにセメレを題材にしたものがある。