タンデム自転車
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タンデム自転車(タンデムじてんしゃ、Tandem bicycle)は、複数のサドルとペダルを装備し、複数人が前後に並んで乗り同時に駆動することができる自転車。通常2人乗りだが、3人、4人、5人乗りのための車種もある。タンデム車ともいう。タンデム自転車を使用したサイクリングを特にタンデムサイクリングと呼ぶ。それぞれがペダルを踏むため、1人乗りよりも強い力が出る。2人以上でペダルを回すことで合計の出力は倍になり、かつ後ろ側に乗車した人は空気抵抗を受けにくいために、1人乗りの自転車よりも高速走行に有利である。
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[編集] 歴史
19世紀に一時爆発的に流行したことがあったが、第一次及び第二次世界大戦をはさんで、すたれていった。しかし、昨今の技術の進歩により、構成部品の性能が著しく向上したため、様々な車種で登場している。ランドナー、MTB、ロードレーサーはもとよりリカンベントなどにも存在する。
[編集] 国による扱いの違い
アメリカ合衆国など、またパラリンピックではタンデムでのレースも開催されており、視力障害者のサイクリストが乗っての競技がある。この場合、障害者は当然ながら前席には乗らない。
日本国内では、道路交通法施行細則または道路交通規則といった名称の都道府県公安委員会規則により、一般公道でのタンデムサイクリングが禁止されている(あるいは明確には認められていない)場合が多い。長野県道路交通法施行細則では、「2人乗り用としての構造を有する自転車に運転者以外の者1人を乗車させる場合」を乗車人員制限の例外としているため、2人乗りタンデム車が一般公道を通行することを明文で認めている。この他の地域でも、車輪の数によって、あるいは自転車道(一般にサイクリングロードと呼ばれる「自転車専用道路等」のこと)やサイクリングイベントなどでタンデムサイクリングが認められる場合がある。タンデムサイクリングが認められる場合でも、普通自転車の要件を満たさないので、普通自転車にのみ許された通行方法が認められないことに注意を要する。避暑地などの貸自転車屋で借りることができ、東京都の代々木公園や横浜市のこどもの国などでは、園内コースを走ることができる。
[編集] 一般の自転車との相違点
最前部に乗車する人はキャプテンまたはパイロット、後部に乗車する人はストーカー (Stoker) またはコパイロット (co-pilot) と呼ばれる。クランクが2つあるが、チェーンのかけ方によって2つの種類に分けられている。
- パラレル(シングルサイド)ドライブ - キャプテン、ストーカーのクランクが車体右側で連動する構造。
- クロスオーバードライブ - キャプテン、ストーカーのクランクが車体左側で連動する構造。
一般の自転車ではチェーンの弛みを取るために、後輪軸の位置を移動できるようにし、チェーン引きというねじで張力を調整する。タンデムの場合もストーカー側のチェーンの張りはこの方法で調整できるが、キャプテン―ストーカー間のチェーンの張りの調整ができない。そのためチェーンテンショナーというバネの付いた部品で張力を調整するか、キャプテン側のクランク取り付け部にエキセントリックハンガーという位置調整のできる特殊な部品を使って張力を調整する。
ブレーキも特殊で、安全性を考慮したタンデム用ブレーキレバーとしてワイヤー2本を使ったものや、ドラッグブレーキといったものを使うことがある。また二人用で一般の自転車より重いため、より強力な制動力を得るために、専用ブレーキ(かつてはマファック社タンデムブレーキ、マキシカ社タンデム用大径内拡式ブレーキ)が利用される。
車輪も特殊であり、重量と二人のパワーを合わせて出る強力なトルクを支えるため40本、もしくは、48本(場合によっては56本)のスポークを使い、後輪のオーバーロックナット寸法は145〜155mmと一般の自転車より幅の広いものが利用されている。
2人乗りのタンデム自転車は、1人乗りの自転車の約1.5倍の質量の自転車を2人で漕ぐことになり、1人あたりの負担する質量が小さいため1人乗り自転車よりもスピードを出しやすい。
[編集] 関連項目
- タンデムジャンプ - スカイダイビングにおいて、一つのパラシュートに2人をくくりつけて飛び降りること