ダイポールモード現象
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ダイポールモード現象(ダイポールモードげんしょう, 英語:Indian Ocean Dipole (mode), IOD)とはインド洋熱帯域において、初夏から晩秋にかけて、東部で海水温が低くなり、西部で海水温が高くなる大気海洋現象。それに伴って起こる風や気候の変化を含み、エルニーニョと同様に世界の気候に大きな影響を与えることが明らかになった。特にアジアあるいはインドの夏のモンスーンに影響を与えることから、その重要性が次第に認識されつつある。ダイポール現象とも呼ばれる。
1999年に山形俊男、サジ・N・ハミードらによって報告された、太平洋のエルニーニョ現象に対応する現象である。ただし海水温の分布様式はエルニーニョ現象とは東西逆である。1961年や1994年の現象のようにエルニーニョ現象とは独立と発生する場合や、エルニーニョ現象を誘発する現象があることがわかってきた。インド洋東部の南東貿易風が異常に強い時に発生する時が多いが、温度躍層が深い場合には発生しにくい。インド洋の海水温変動ではエルニーニョに伴うインド洋全域昇温に次ぐ強いシグナルを持つ。
なんらかの理由でインド洋で南東貿易風が強化されると、東側にあった高温の海水は西側へ移動させられ、また東側では深海からの湧昇や海面から蒸発が盛んになるために海水温が低下する。その結果、インド洋の西側にあるアフリカ大陸東岸では海水温の上昇により蒸発が盛んになり降水量が増加する。逆にインド洋の東側にあるインドネシアでは蒸発が抑えられるので降水量が減少する。このためダイポールモード現象は多雨による洪水、乾燥に伴う山火事といった異常気象を引き起こす原因となりうる。
この現象はテレコネクション(遠隔作用)によってアジア各地の気候に影響を及ぼすと考えられている。フィリピンから中国南部、インドシナ半島からインド北部にかけては降水量が増加し、新田尚東大教授により発見されたP-J(太平洋-日本)パターンと呼ばれるテレコネクション機構により、日本を含む極東地域では降水量が減少し猛暑となるとされる。1961年の中国における旱魃は3千万人の餓死を招き、文化大革命を誘発したとされている。1994年の現象は北朝鮮の農業に大きな打撃を与えたとされる。
また、<モンスーン-砂漠>機構によって地中海沿岸諸国の猛暑はこの現象と密接な関係があることがわかってきた。この猛暑はこれを抑えるべく北欧からのマエストロ、エテジアンなどと呼ばれる冷涼な風を招き、大気を不安定にしてサイクロンの発生を促す。こうして形成された大気擾乱はアジアンジェットと呼ばれる渦位の導波管を伝わって日本を含む極東域にたまり、対流圏全域に及ぶ等価順圧な高圧域を形成する。日本付近が猛暑になる場合には<鯨の尾>の高気圧パターンが存在すことが経験的にわかっているが、最近の研究から、ダイポールモード現象によるテレコネクションはこの一因となると考えられている。
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