テアニン
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テアニン | |
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IUPAC名 | 2-Amino-4-(ethylcarbamoyl)butyric acid |
別名 | γ-グルタミルエチルアミド, γ-(エチルアミド) L-グルタミン酸 |
分子式 | C7H14N2O3 |
分子量 | 174.20 g/mol |
CAS登録番号 | [3081-61-6] |
形状 | 固体 |
テアニン(L-Theanine)は、茶に多量に含まれるアミノ酸の一種でグルタミン酸の誘導体。
植物の中でもお茶(Camellia sinensis 又はThea sinensis)とそのごく近縁種にしか見つかっていないアミノ酸であり、茶の旨味成分の一つである。テアニンは乾燥茶葉中に1~2%含まれ、特に上級なお茶に多く含まれている。また、テアニンは茶の等級に関わらず、全遊離アミノ酸の約半量を占めている。 1950年に玉露から分離精製され構造が明らかになり、日本では1964年7月に食品添加物として指定された。テアニンはお茶に含まれるアミノ酸であることから、茶の学名“Thea sinensis”にちなんで“Theanine(テアニン)”と命名されたといわれている。
テアニンは茶葉が含有する窒素の過半を占めており、チャノキが、吸収したアンモニア態窒素を植物体にとって安全な形態にして、蓄積するために合成している物質と考えられている。茶に施用される肥料成分のうちアンモニア態窒素は、土壌中で酸化されて硝酸に変化するのだが、それが起こりにくいよう覆いをかぶせることによってテアニン含量の高い茶を作ることが出来る(例・玉露、碾茶、抹茶)。
[編集] 生理効果
テアニンは人ボランティア試験において、様々な効果が確認されている。
テアニンを摂取することにより、リラックスの指標であるα波の発生が30~40分後に確認されている。50mg摂取では不安傾向の高い人に、200mg摂取では不安傾向の低い人においてもリラックス効果が認められている(小林ら. 1998)。
抗ストレスについても同様に効果が確認されている。人にクレペリン型暗算課題でストレスをかけ、ストレス負荷により変動する心拍数、唾液中のイミュノグロブリンA、主観的ストレス感をみたところ、テアニン摂取でストレスの抑制が認められている(Kimura et al ., 2006)。
睡眠に関しては、テアニン摂取により睡眠の質の改善が報告されている。中途覚醒の減少が認められたほか、被験者へのアンケートにより起床時の爽快感、熟眠感、疲労回復感の改善が認められている(小関ら. 2004)。
月経前症候群(PMS)に関しては、PMS時のイライラ、憂鬱、集中力の低下等の精神的症状を改善することが報告されている(上田ら. 2001)。 その他にもカフェイン拮抗作用、血圧降下作用、記憶学習能力の向上、制癌剤の増強効果、脳血管障害に対する効果などが報告されている。
[編集] 利用
ガムやキャンディーなどの菓子類、ゼリー、アイスクリーム、ヨーグルトなどの冷菓、清涼飲料水やニアウォーターなどの飲料、およびサプリメントや美容食品などに応用されている。また、テアニンは緑茶の呈味改善剤として使用されているが、緑茶以外の様々な食品の苦味やえぐ味も抑えるので、風味の改善に用いられている。
[編集] 引用文献
- 小林加奈理, 長戸有希子, L.R.ジュネジャ, 金武祚,山本武彦,杉本助男. L-テアニンのヒ
トの脳波に及ぼす影響. 日本農芸化学会誌 72 (2), 19-23 (1998).
- Kimura, K., Ozeki, M., Juneja, L. R. and Ohira, H., L-Theanine reduces psychological
and physiological stress responses. Biological Psychology 74 (1), 39-45 (2007).
- 小関誠, L.R.ジュネジャ, 白川修一郎. アクチグラフを用いたL-テアニンの睡眠改善効
果の検討. 日本生理人類学会誌 9 (4), 143-150 (2004).
- 上田智子, 小関誠, 大久保勉, 朱政治, L.R.ジュネジャ, 横越英彦, 松本清一. PMSと健康食品-L -テアニンの月経前症候群改善効果に関する研究. 女性心身医学 6 (2) 234-239 (2001).
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