食品添加物
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食品添加物(しょくひんてんかぶつ、英語 food additives)は、食品製造の際に添加する物質のこと。広義には食品包装に使われる樹脂などを、間接食品添加物として扱う場合がある。
[編集] 日本
日本の食品衛生法では、第4条第2項で「食品の製造の過程において又は加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用するものをいう」と定義され、種類や量が規制されている。
主なものとして
があり、動植物を加工して作るものや化学合成で作られるものがある。
2005年6月1日現在、指定されている添加物は361品目、既存添加物名簿に収載されているもの450品目、天然香料が600品目許可されている。また、エタノールやブドウ果汁などが「一般に食品として飲食に供されている物であって添加物として使用されるもの」として一般飲食物添加物100品目が定められている。
食品添加物について、日本の基準と外国の基準はいまだ統一はなされていないため、輸入食品から日本では許可されていない添加物が検出されることがある。日本では上記のように食品添加物は指定制度を取っているため、指定されていない添加物は「無認可」となる。「無認可」という表現は、安全性上の問題があって禁止されていると誤解が生じることもある。
また、タール色素を中心とした一部の添加物では発ガン性や染色体異常、催奇形性など疑う研究者もかつてあったため一部消費者が安全性に異議をとなえている。こうした疑問に対しては、食品安全委員会のホームページの他、国連食糧農業機関/世界保健機関合同食品添加物専門家会議(通称:JECFA<FAO/WHO Joint Expert Committee on Food Additives>)での科学的な審議結果が参考となる。
一般的な日本人は1日に「天然には存在しない食品添加物」を0.1g、「天然にも存在する食品添加物」を3.2g、計3.3gの食品添加物を摂取しているとされる。 一部では「1日10g摂取している」という表記もされているが、これは原料にもともと含まれている成分を含めての量であり、「食品添加物として添加された量ではない」ということに注意する必要がある。また、安全性は、動物を用いた毒性試験結果等の科学的なデータに基づき推定された健康へ影響を与えない量<許容一日摂取量(ADI)>と実際に摂取している量を比較するリスク評価により判断される。マーケットバスケット方式を用いた食品添加物一日摂取量調査結果によれば、安全性上問題ないレベルであることが確認されている厚生労働省 食品添加物に関するホームページ。
しかし事実として、厚生労働省が食品添加物認可前に行う各種安全性試験は、当該食品添加物単品のみを供試動物に投与するものであり、一般消費者が日々、複数の食品添加物を摂取している現状に鑑み、考えられる「複数の食品添加物同士による複合作用」は試験されていない。この点を考慮する必要がある。
食品添加物が加えられていることを嫌がる消費者も少なくないが、例えば、豆腐やこんにゃくは添加物を加えないと凝固しないし、砂糖の精製工程上の炭酸カルシウム添加など、添加物がないと製造できない食品も多いことも事実であり、また製造・流通のコストを低減し、食品の安定供給に貢献していることも忘れてはならない。育児用粉ミルクのように、食品添加物で成分を強化しないと、健康を維持しづらくなる食品さえある。なお、食品安全委員会リスクコミュニケーション専門調査会第24回会合にて、無添加などのゼロリスク商法は、消費者に誤解と不安を広げるだけで、真の対策である信頼の構築には結びつかない、と報告されている。議事録より一部引用:「今、ドッグフードにまで入り込んでいる無添加食品が無添加でない食品よりも健康にいいという科学的証拠は全くゼロです。しかし、消費者に無添加の方が健康にいいという誤解を与えて売っている。私は、これは詐欺商法に近いのではないかと思っておりますが、こういったものが消費者にまた誤解を広げて、添加物は怖いと思わせる。こういったような間違った売り上げ対策というのをきちんと対処しなくてはいけない」(唐木英明氏, 議事録(PDF) p.13, 食品安全委員会, 2006)
しかし、客観的な事実として、食品添加物、特に、化学合成された食品添加物は、「化学調味料」などを除いて、一般消費者向けにはほとんど販売されていない。
ちなみに、食品衛生法[1]では、以下の場合に該当する食品添加物は製品への表示を免除されている。1)食品の製造原料に使用されている食品添加物(キャリー・オーバー)、2)食品の加工の際に使用される添加物のうち、食品の完成前に除去されたり、中和されたりするもの(加工助剤)、3)バラ売り(包装していない)及び店内で製造・販売するもの、4)食品ひとつひとつのパッケージが小さいもの(30平方センチ以下)
また、食品衛生法では、食品添加物の「一括表示」という表示が認められている。これは食品添加物が同じ目的のために複数用いられる場合は、個別の食品添加物の名称を表示しなくとも「一括表示」(例:「PH調整剤」、「乳化剤」)してよいということである。
食品添加物が食品加工の際、添加される段階、また添加の目的、添加物の名称、使用量などを一般消費者にもわかりやすく表示する方法としては、食品加工の際の衛生管理工程図であるHACCP(ハサップ)に、食品添加物の投入や使用の工程、添加物名及び使用数量を明記して一般消費者向けに開示することが考えられる。もし食品製造工程に企業秘密が存在するのであれば「特許」(食品の製法特許)で食品製造者の法的権利を保護して、HACCPを一般消費者に開示する方法も考えられる。
不二家の不祥事(工場での製品衛生管理のずさんさ)が最近、問題とされているが、今後は金融業界、その他業界で取り組まれている「情報公開」(ディスクロージャー)が食品業界についても求められるであろう。当然、「食品加工の詳細な情報(食品添加物も含まれる)」が消費者からより一層求められる時代になるであろうことは想像に難くない。
また、「消費者が食品の性質、加工プロセス等を「知って、選ぶ」権利」はもっとも重要な「基本的人権」(生存権)のひとつである。この基本的人権を擁護するために、食品製造工程や、使用される食品添加物などの更なる情報公開が必要である。
[編集] 関連項目
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[編集] 外部リンク
- 日本食品添加物協会
- 食品添加物を調べてみよう(フジテレビ商品研究所)
- 食品添加物に関するホームページ(厚生労働省)
- 食品添加物に気をつけて
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