デンバー軌道
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デンバー軌道(Denver Tramway)はアメリカ合衆国、コロラド州デンバー市街で1974年までバス運行を行っていた交通事業者。当初、馬車鉄道事業を行っていたためにこの名称がつけられた。
[編集] 概要
デンバー軌道が設立されたのは1899年で、当初はデンバー市街軌道(Denver City Tramway)を名乗っていた(1914年改称)。この会社はデンバー市街鉄道(1872年設立)とデンバー・エレクトリック・アンド・ケーブル(1888年設立)が合併して成立したもので、デンバー市街鉄道のほうは1871年の最初の馬車鉄道を引き継いだ会社である。デンバー・エレクトリック・アンド・ケーブルはケーブルカーの運行を行っていた。
1890年に、スプレイグの架線集電式の路面電車を導入し、1900年には電車化が完了した。この時期に、郊外のいくつかのインターアーバン路線も自社の傘下に置いている。路面電車の全盛期には250kmの路線で250両の車両が運行されていたが、1950年の運行廃止時には64両まで減少していた。1940年にはじめられたトロリーバスの運行も1950年に廃止されている。軌道は廃止されたものの、1974年、デンバーに地域交通局(Regional Transportion District)に車両や運行権が譲渡されるまで、軌道の名を冠した社名の元でバス運行が続けられた。
この会社は、アメリカの路面電車事業者ではめったに用いられない「軌道(tramway)」という文字を社名に関していることと、軌間1067mmを採用していた点でユニークな存在であった。この線路幅は、日本では標準的であるものの、アメリカ合衆国内ではサンフランシスコのケーブルカーやロサンゼルスの路面電車でしか用いられなかった珍しいものである。デンバーは標準軌の鉄道路線とロッキー山脈に向かうナローゲージの鉄道路線の結節点であったが、それらのナローゲージの軌間(914mm)とも異なる。アメリカの市街鉄道では、市街への貨車乗り入れを防ぐために都市間幹線鉄道とは異なる線路幅を採用することが多く、その影響をうけたものと考えられるが詳細は不明である。