軌間
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軌間(きかん)とは、鉄道において線路のレールの間隔をあらわす数値である。ゲージともいう。
具体的には、左右のレール頭部の内側どうしの最短距離をもって規定する。
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[編集] 概要
鉄道の草創期には、双頭レールなどレールそのものの断面形状が現代のそれと異なる事もあり、レールの中心間寸法を軌間とした例も多数存在する。これらは、現代風の測定法に変更する際に、車両設備に一切手を加えることなく、公称する軌間を変更することにより対応している。またフィートインチ法から、メートル法へ単位系の切り替えの際の四捨五入の考え方の違いで、派生した軌間も存在する。
レールの間隔を変更すること、即ち軌間を変更することを改軌(かいき)するという。
軌間には以下の特性がある。
- 一般的に、軌間が広ければ広いほど安定性は増し、横風に対する耐性も向上するが、最小曲線半径も大きくなり、必然的に建設費は高くなる。
- 軌間が小さくなると、半径の小さい曲線がつくりやすく、建設費は低く抑えられるが、高速性は劣る。
- 但し、最高速度については、動輪の直径に左右される蒸気機関車の場合は軌間が広いほうが動輪を大きくでき高速化に有利だが、電車の場合は蒸気機関車ほど軌間に左右されないともいわれる。
- 軌間が広いほうが必然的にカーブの少ない線形となる。また、軌間が小さくても、線形が良ければある程度の高速化は可能である。
[編集] 軌間の種類
代表的な軌間の例を挙げる。
- 広軌 標準軌より広い軌間のこと。「ブロードゲージ(Broad Gauge)」とも呼ばれる。現在、日本には存在しない。
- 鉄道草創期のイギリスなどには2130mmなどの例もあった。また琵琶湖疏水のインクライン(2200mm、すでに廃止)など特殊用途の鉄道では、巨大な積載物を移動する必要性などから広軌が採用される場合もある。
- 狭軌 標準軌より狭い軌間のこと。「ナローゲージ(Narrow Gauge)」とも呼ばれるが、日本においては1067mm・1372mmの軌間について「ナローゲージ」と呼ぶことは少ない(後述)。
- 1372mm - 京王線、都営地下鉄新宿線、都電、東急世田谷線、函館市電、(1959年までの京成線)- 偏軌、馬車軌間
- 1067(1065)mm - JR在来線、多くの私鉄、これらの路線に乗りいれる地下鉄、台湾、南アフリカ - サブロク(3フィート6インチ)
- 1000mm(メーターゲージ) - タイ、マレーシア、シンガポールなど、旧イギリスの植民地
- 914mm - おもに西日本のごく一部の軽便鉄道、アメリカの一部の簡易鉄道
- 838mm - 釜石鉱山鉄道(廃線)、阪堺鉄道(現:南海本線、1897年に1067mmに改軌)
- 762mm - 三岐鉄道北勢線、近鉄内部・八王子線、多くの軽便鉄道、森林鉄道 - ニロク・ニブロク(2フィート6インチ)
- 日本で「ナローゲージ」と呼ばれる鉄道の多くがこの軌間のため、「76」から「ナロー」と呼ばれていると思われることもある。
- 609(610)mm - 立山砂防工事専用軌道、鉱山などのトロッコ、ヨーロッパの一部保存鉄道
- 597mm - 英国ヴェール・オヴ・レイドール鉄道などの一部の鉄道
- 381mm(15インチ) - 英国ロムニー・ハイス&ダイムチャーチ鉄道など一部の鉄道(ロムニー鉄道と同規格のものが伊豆修善寺の「虹の郷」園内にあり)、鉱山などのトロッコ、遊園地の豆汽車やお猿電車などの遊戯物、個人や小団体が保有する遊戯用の庭園鉄道(例:桜谷軽便鉄道)
- 127mm(5インチ) - 仮設線路を運転するイベント用ミニSL、或いは個人や小団体が保有する遊戯用の庭園鉄道(例:大名鉄道ガリバー線、八木軽便鉄道、欠伸軽便鉄道 弁天ヶ丘線)
- 89mm - 仮設線路を運転するイベント用ミニSL(人が乗れる最小のもの)
1435mmはあくまでも欧米における標準であり、日本においては1067mmが圧倒的多数を占める。そのため、古い資料では「1435mm=広軌、1067mm=標準軌」と記されているケースもあり、注意が必要である。この場合、京王線、函館市電などが採用する1372mmは広軌の扱いを受けることが多い。
図1「現在日本で利用されている主な軌間」
[編集] 軌間の異なる路線への乗り入れ
[編集] 三線軌・四線軌などレールの追加による対応
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車輌側に何も手を加える必要がないため、各地でこのような対応がとられることが多い。保守、特に分岐器などで手間とコストがかかること、三線軌では列車の中心位置がずれるため建築限界への制約、レールの扁磨耗という欠点がある。
[編集] 台車交換による対応
旧ソ連やスペインなど広軌鉄道となっている区間に標準軌の客車・貨車を乗り入れさせるために台車交換が行われる。日本では機関車牽引の旅客列車が少なく貨物列車のほぼ全てが狭軌区間を走行するためなじみが薄いが、新幹線車輌や1067mm軌間でない民鉄の鉄道車両をJR在来線を介して輸送する場合などには台車交換が行われることがある。日本国内での営業用旅客列車の例としては、1988年にオリエント急行(NIOE)客車をJR在来線で走行させるために台車交換を行ったことがある。しかし、台車交換に時間がかかること、動力分散型車輌への適応が難しいことなどの欠点がある。
類例としては、ナローゲージ用の貨車を標準軌用の専用貨車に積載して、そのまま直通させる例がある。
[編集] 車輌側による対応
軌間可変機構を備えた車輌によるもので、スペインのタルゴ客車、日本のフリーゲージトレイン(試験中)などが挙げられる。いずれも台車の脱着をすることなく、専用の軌間変更装置の上を走行することで迅速に標準軌と非標準軌の転換が可能。
[編集] 参考
三重県桑名市の桑名駅近くの踏切では、三岐鉄道北勢線(762mm)・JR東海関西本線(1067mm)・近鉄名古屋線(1435mm)と、3種の軌間が並ぶ姿が見られる。