トンパ文字
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トンパ文字 | ||
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類型: | 象形文字 | |
言語: | ナシ語 | |
時期: | ||
トンパ文字またはトンバ文字(-もじ。中国語:東巴文)とは、中国のチベット東部や雲南省北部に住む少数民族の一つナシ族に伝わる、象形文字の一種である。ナシ語の表記に用い、異体字を除くと約1400の単字からなり、語彙は豊富である。現在、世界で唯一の「生きた象形文字」とされる。
[編集] 概要
ナシ族の中でもごく少数の「トンバ」と呼ばれる司祭によってのみ受け継がれている文字である。日本では、トンバを中国語に音訳した「東巴」につられて「トンパ」という言い方が広まっているが、「バ」の部分はナシ語では濁音であり、トンバ文字と言う方が原語に近い。
トンバ同士の間で代々継承されてきたため、社会全体での標準化がなされておらず、異体字も多い。また、口語をそのまま書き記すものではなく、内容も宗教や伝承に関するものが多いため、真の意味で理解するのはとても難しいとされる。主に毛筆で書かれる。世界の文字の中でも唯一色によって意味を変えうる文字であり、黄色はお金(金持ち)、黒は悪などの意味合いを既存の文字に色をつけて字の意味を広げていく。
単字の構造としては古代中国の甲骨文字に似たところもあるが、文字に込められた民族的な意味合いなどは同じ意味の文字でも異なる場合が多い(例えば「天」を表す文字の場合、甲骨文字の天は下界とは切り離されたものであり、いかなる感情も持たないとされているが、トンパ文字の天は、優しく力強く世界を覆うといった意味を持っている。)。ちなみに、トンパ文字の「女」は同時に「大きい」をも意味し、「男」は同時に「小さい」をも表す。これは伝統的なナシ族文化が母性社会であることに由来する。
漢字のように、複数の部品を組み合わせて、会意字を作ったり、音を表す部品を付記する構成法も用いられるが、漢字のように明確な部首を持つまでには発展していない。
トンパ文字で作成された古代ナシ族の百科事典ともいえる宗教典籍「トンバ経」が残されており、2003年にはユネスコの世界の記憶事業に登録され、デジタル保存が進められている。
[編集] 日本での利用
20世紀の終わりに、日本でも紹介され、小さなブームとなった。超漢字等で利用できるフォントが市販されている。絵文字のような感覚で誰でもすぐに書くことができるので簡易暗号などでも使用することができるほか、商品パッケージのデザインに使用されている例も散見される。
以下は超漢字に収録されているトンパ文字の一部である。TRONコードにてコードポイントが定義されている。
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また、トンパ文字を日本で広げ、デザインとして認知させた第一人者は アートディレクター、巨匠・浅葉克巳である。
[編集] 外部リンク
- 東巴象形文字(中国語)