ナイトウィザード
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ナイトウィザードは、2002年にエンターブレインから出版されたテーブルトークRPG。著者は菊池たけし、F.E.A.R.。
現代を舞台として、影で世界を守る魔法使いたちの活躍を描くライトノベル調のロー・ファンタジーに属する作品で、世界設定の雰囲気などはアリスソフトのゲーム『夜が来る!』の影響を強く受けている。「ガンナーズブルーム」や「ウィッチブレード」といった機械式の箒が登場し、この作品のシンボル的なガジェットとなっている。
E-LOGINやマジキューなど、テーブルトークRPGとは直接関係ないジャンルの雑誌にリプレイを連載し、声優を使ったネットラジオで情報発信を行うなど、ファン層開拓に積極的な展開を図っているのも特徴である。
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[編集] 概要
ゲームの舞台は「ファー・ジ・アース」と呼ばれる、地球のパラレルワールドである。(「ファー・ジ・アース」とは異世界の住人がこの世界を呼称するときの呼び名であり、ファー・ジ・アースに住む者たちはわれわれと同じく、この星を地球という名前で読んでいる) ファー・ジ・アースは表面的には我々の住む地球とそっくりだが、大きく違う部分がいくつかある。
ルールシステム面では、同じ作者の『セブン=フォートレス』と基本的に同じ体系で、細部を整理し多少簡略化したようなものになっている。また、世界設定も『セブン=フォートレス』の世界ラース=フェリアと平行世界であるとして関連を持たせてある。この点を発展させ、セブン=フォートレスのリプレイ『フレイスの炎砦』はこの2つの世界を行き来する異世界クロスオーバーものとなっていた。この時点では、ナイトウィザードのPCをセブン=フォートレスに持ち込むためには、工夫してデータを変更してやる必要があった。しかしその後、セブン=フォートレスのサプリメント『セブン=フォートレス パワード』により、ナイトウィザードからセブン=フォートレスへの変換が正式にサポートされ、2つのゲームを統合してプレイすることが可能となった。
他の「現代アクションもの」のTRPGにはない大きな特徴として、ダンジョンアタックがメインに添えられていることがある。これはダンジョンゲームを意識していた『セブン=フォートレス Advanced』とシステムが同じ体系であることからの必然的な帰結であったのだが、世界設定などにおいて現代ものでダンジョンを作り出すことに無理のない配慮がされており、ナイトウィザードの独自性として今でも注目されている。ただし、近年ではデザイナーの菊池たけし自身がナイトウィザードのリプレイでダンジョンを扱わないものを出してきており、またサプリメントなどに付属するシナリオでもダンジョンを意識したものは少なくなっている。「ダンジョンものとしてのナイトウィザード」を作り手側が軽視してきているという状況の変化が起こりつつある。
[編集] 設定
- 魔法とウィザード
- 「ファー・ジ・アース」は本来は、魔法が現実に存在する「ファンタジーな世界」である。しかし、魔法に危険を感じた太古の超越者たちにより魔法は隠蔽され、代わりに科学が台頭した。魔法使いたちは人々の社会の影でひっそりと暮らしている。しかし、魔法でしか対抗できないような世界の危機がおとずれたとき、彼らは魔法の力を使ってそれに立ち向かうのだ。
- この世界では、魔法というのは気や超人的な格闘術も含む。つまり、「常識ではありえない能力」は全て魔法の一種として扱われるのだ。なので、このゲームのPCは格闘家も剣士も全員「魔法使い=ウィザード」と呼称される。
- エミュレーター
- PCたちが戦うことになる敵対存在のこと。日本語表記では『侵魔』と書かれる。
- 不定形の精神寄生生命体で、ヒトやモノにとりつき、その者の心の中にある生命エネルギー「プラーナ」を吸い取る。プラーナは夢や欲望といったものと深いかかわりがあり、エミュレーターは寄生した者の心にささやきかけ、心の奥の欲望を暴走させることが多い。
- エミュレーターには科学兵器は効果をもたない。魔法使いたちだけがエミュレーターを倒せるのだ
- 世界結界と月匣(げっこう)
- エミュレーターたちの侵略から身を守るために、太古より地球全体に世界結界と言われる不可視の結界が張られている。この結界は簡単に出入りできないだけでなく、世界を修復する力が備わっている。世界結界にプログラムされている「地球のあるべき姿」(これを『常識』と呼ぶ)が壊されると、世界結界は地球の現実を「あるべき姿」に戻すのである。
- エミュレーターがいくら暴れてヒトが死んだとしとても、世界結界は作用すればそれは「なかったこと」になる。この世界で魔法が隠蔽されているのも、魔法が社会にバレるほど派手に使われた場合、世界結界がそれを「なかったこと」にしてしまうからだ。
- しかし、力あるエミュレーターたちは自らの周囲に別の結界を張ることで、世界結界の影響を受けずに活動できる。エミュレーターが張る結界を『月匣(げっこう)』と呼ぶ。月匣はプラーナを吸収するたびに強力になっていき、最終的には世界結界が敵の月匣と置き換わってしまい、エミュレーターが寄生した対象の欲望が『常識』として具現化された世界に地球が生まれ変わってしまう。
- PCたちウィザードはそうなる前に、敵の月匣の中に突入してエミュレーターを倒すことになる。この月匣の中はダンジョンとして表現され、現代ものでダンジョンアタックを行うというナイトウィザードの特徴的なギミックになっている。(ただし近年のリプレイやシナリオでは月匣の中はダンジョンではなく単純なバトルフィールドとして表現されるものが多い) 月匣の中は世界結界の影響を受けないのでPCたちは気兼ねなく魔法が使えるのも大きな特徴だ。
- 魔王
- 魔王とはエミュレーターの上位に存在するモノ達である。『セブン=フォートレス』の世界設定と深く関わる存在であり、『セブン=フォートレス』と『ナイトウィザード』をクロスオーバーするときの接着剤のような役割を持つ敵キャラでもある。
- 魔王たちは裏界と呼ばれる異世界に国を作っている。裏界の設定はダンテ・アリギエーリの『神曲』の地獄をモチーフにしており、魔王たちの数や名前はソロモン72柱をモチーフにしている(ただし、それに当てはまらない魔王も多く存在する)。
- これだけゴシックホラーなイメージをモチーフにしているにも関わらず、なぜか魔王たちは72柱全員が萌え属性をもった美少女として設定されている。サプリメント『ロンギヌス』では本当にソロモン72柱に個々に萌え属性ごとに分類してしまい、ファンの間で話題になった。
- このコアな設定が、ナイトウィザードがやはり『きくたけ』のゲームであることをもっとも思い出させる部分になっている。
[編集] クラス一覧
- 勇者
- 世界を救うために地球そのものから特別な力を与えられた選ばれしウィザード。一発逆転の力を持つ。
- なお、「セブン=フォートレス」と同じく、英語表記では「Brave」ではなく「Excellent Warrier」となる。
- 強化人間
- 戦うために肉体や精神を改造したウィザード。物理的な攻撃能力が高い。
- 魔術師
- いわゆる普通の「魔法使い」であることをあらわすクラス。魔導書を使いさまざまな呪文を使いこなす。
- 聖職者
- 神の祝福により退魔の力を授けられたエクソシスト。ファンタジーRPGで言う「回復魔法を使う僧侶」のようなクラスではないので注意。
- 陰陽師
- 魔剣使い
- たった一本の剣を自らの相棒とする魔剣士。
- 忍者
- 隠密や暗殺を得意とする現代の忍者。
- 使徒
- 神々や守護者といった上位存在より使わされた使者。天使。
- 吸血鬼
- 人の生き血を吸って生き長らえる伝説の吸血鬼。
- 魔物使い
- 魔物を使役する。召喚士的な側面も含む。
- 人造人間
- 人狼
- 狼に変化することができる大自然の子ら。狼男。
- 龍使い
- 大いなる者
- 神々や守護者といった上位存在そのものであることをあらわすクラス。
- 転生者
- 夢使い
- 人の精神を操る術に長けたウィザード。ドリームハンター。
[編集] 関連製品一覧
- TRPGルール・サプリメント
- ナイトウィザード
- ナイトウィザードソースブック スターダスト★メモリーズ 星を継ぐ者
- ナイトウィザードソースブック ロンギヌス
- ナイトウィザードファンブック パワー・オブ・ラブ
- ナイトウィザードファンブック リーチ・フォー・ザ・スターズ
- リプレイ
- ナイトウィザードリプレイ 紅き月の巫女
- セブン=フォートレスリプレイ フレイスの炎砦V3(上)(下)
- セブン=フォートレスリプレイ 黒き星の皇子
- ナイトウィザードリプレイ 白き陽の御子
- ナイトウィザードリプレイ 合わせ鏡の神子
- 小説
- ナイトウィザードノベル 蒼き門の継承者
- ナイトウィザードノベル 星を継ぐ者
- コンピュータゲーム
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
カテゴリ: テーブルトークRPG | ファーイースト・アミューズメント・リサーチ | エンターブレイン | マジキュー | ファミ通文庫