バルブ
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バルブ(valve)とは、ガスや水などの流体が通る空間(配管)の開閉を行ったり、流れの制御ができる機能を持つ機器。用途、種類、形式などを表す修飾語が付くものには「弁(べん、元の用字は瓣)」という用語が用いられる。
バルブには、流体の種類(液体、気体)、性質(可燃性、毒性、腐食性、圧力、温度)、特性、さらには、バルブ本体の材料(金属、非金属)により、豊富な種類の構造のものがある。一般生活においては水道、ガス、給湯器などの家庭用や、タンクや、ボンベをはじめとした、あらゆる産業設備に使用されている。
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[編集] 基本要素
バルブは、流体の通路を開閉することのできる可動機構を必ず有する。構成基本要素として、弁箱(body)、弁棒(stem)、弁体(disc)、弁座(seat)があり、さらにパッキング(packing)、弁押え(guard)、パッキング押え(gland)、はめ輪(ring)、ハンドル(handle)等の小部品によって構成される。
[編集] 接続方法
バルブはパイプ(管)と接続し、配管系を形成することで、はじめて流体を流すことができるようになる。そのため、バルブは、バルブと管との接続端の構造で分類されることがあり、最も基本的な形式としては、ねじ込み形、フランジ形、溶接形がある。
[編集] フランジ形
接続する部分を「つば状」にして、その「つば」と「つば」をボルト・ナットで接続する形式で、このつばをフランジと呼ぶ。対応圧力、対応管径が広く、一般的に最も広範囲に使われている方式。
[編集] ねじ込み形
管用ねじを用いて接続する方式。口径サイズは、おおよそ2インチ以下、圧力は1MPa以下の接続に主に使用されることが多い。パイプをねじ加工するだけの施工で容易なため、他の接続方法と比べると、パイプ以外の部品を必要としない。反面、修繕などでのやり直しの際は、接続する配管を再製作する必要が生じることもある。使用されるねじの種類には、「めねじとおねじ」、「テーパねじと平行ねじ」があり、この接続方法の一般的なバルブには「テーパめねじ」が加工されている。
[編集] 溶接形
バルブとパイプを直接溶接する方式で、高温、高圧の配管系や、パイプラインなど流体の漏れを完全に防止したい場合に使用される。溶接後の処理や、漏れ検査等、工数が必要となる。溶接方式には、差込み溶接形(ソケットウェルド)と突合せ溶接形(バットウェルド)がある。
[編集] 主なバルブの種類
[編集] ゲートバルブ(Gate Valve)
仕切弁とも呼ばれる。バルブの弁箱に収納された円盤状の弁体が、流路に対し直角に動作して、流路の開閉を行う。流体の閉じる動作は、弁体のクサビ効果を利用して行う構造となっている。構造が単純なため、さまざまな大きさのものがあり、流体の性質にあった材料での製作も容易である。また、圧力、温度の対応範囲も広い。
[編集] グローブバルブ(Globe Valve)
弁箱が球状になっているため玉形弁とも呼ばれる。弁箱内部に隔壁があり、入口と出口の中心は直線上にあり、流体がS字に沿って流れるバルブ。流体の流れを止めるには、隔壁に設けられた弁座面に弁体を押し付け、流体の流れに抗して流体を止める構造。ゲートバルブに比べると開閉時間を短くすることができる。また、弁体形状を変更するこよにより、流量を調節する動作や、開閉で使用する動作などの流動特性を変更することができる。
[編集] ボールバルブ(Ball Valve)
弁体が球状(ボール)になっているためボールバルブと呼ばれる。ハンドル(つまりは弁軸)を90度回転することにより、開閉を行なうバルブで操作性が良い。同様の構造を有するものにバタフライバルブがあるが、ボールバルブは、バタフライバルブに比べ、流量を極めて大きくすることができ、又口径内の流れに対する障害物がないため、渦流や脈流が生じにくく、流量特性に優れている。 構造が単純なため、広範囲の用途に用いられるバルブで、材質、サイズ共に多くの種類がある。
[編集] バタフライバルブ(Butterfly Valve)
ボールバルブと同様に弁軸を90度回転する事により開閉を行なうバルブ。またゲートバルブと同様に開閉バルブとして使用される。又グローブバルブと同様に流量調整用としても使用できる。 一番の特徴は、ゲートバルブ、グローブバルブ、あるいはボールバルブ等と比較して、バルブの管長を極めて短くすることができるため、狭いスペースでの配管が可能となることである。
[編集] ニードルバルブ(Needle Valve)
ゲートバルブに近い構造で、弁体の形状が、針(ニードル)のように細長い円錐形をしており、流体の流量の微量な調節ができるようになったバルブ。
[編集] ストップバルブ(Stop Valve)
流体の流れを止めてしまうバルブ。シャットバルブとも呼ばれることがある。流れを止めたり、逆に開いて流したりする。徐々に弁体を締めることができ流量を調節できるのが一般的。
[編集] チェックバルブ(Check Valve)
流体の流れを常に一定方向に保ち、逆流を防止する機能を持つバルブ。チャッキバルブ、逆止弁、チャキ弁ともいわれる。弁体は、流体の圧力によって押し開かれる状態になるが、逆流すると弁体が背圧によって弁箱の弁座に密着して、逆流を防止する機構となっている。このバルブの性能評価は、逆流防止が完璧であることが大きな要素ではあるが、本来の流れ方向もスムーズでなければならないため「クラッキングポイント(C.P)」と言う表現でこの流れやすさを表している。
[編集] その他
ガスの場合、閉止時の気密を保つために、パック式バルブ、O-リング式バルブ、ダイアフラム式バルブ、ベローバルブ等、流体の性質、気密によって使用される構造が決まる。 開閉操作には、ハンドル、キーレンチ、空気式またはオイル式アクシュエーター(自動)、ソレノイド(電磁弁)、カップリング等ある。流体圧力のみで開閉を行うものもある(CV型キャブレターのバキュームバルブなど)。
[編集] 内燃機関におけるバルブ
内燃機関の構成要素で、燃料(ガソリン)と空気の混合気をシリンダ中に吸入するためのインテークバルブ(吸気弁)、燃焼後の排気ガスをシリンダから排出させるエキゾーストバルブ(排気弁)がある。形状は、ラッパのような末広がり状の円錐で、カムシャフトにあるカムにより直接駆動され開き、圧縮ばねにより閉する。主に自動車等用のガソリンエンジンの仕様をあらわす項目のひとつとしてバルブの数を表すことがある。比較的大きな数字の場合は、エンジン全体でのバルブの総数を表す。少ない数の場合は、1本のシリンダにあるインテークバルブとエキゾーストバルブの数を表している。