ピースキーパー (ミサイル)
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LGM-118A ピースキーパーはアメリカ空軍の大陸間弾道ミサイルであり、核兵器を搭載した戦略兵器である。START-IIの締結により2002年に退役が決定、2005年9月15日に退役・廃棄が完了している。
ピースキーパーの建造はボーイング社が担当し威力300 ktのW87(アップグレードによりW88と同等の475 ktの核出力を得ることも可能)核弾頭を搭載するMk.21再突入体を10個搭載する(最大12個の搭載が可能。START Iにより制限)MIRVが採用されていた。ミニットマンの後継ミサイルとして1972年から開発が開始され、実験的ミサイル(Missile-eXperimental)の略称としてMXと呼ばれていた。生残性を高めるために競馬場方式とよばれた地下坑道を常に移動する配備方式なども検討されたが費用対効果の面から1976年に従来型のサイロ発射式と決まり、1982年にピースキーパー(平和維持者)と命名されている。1983年6月17日にミサイル発射、弾頭投下の実験に成功、1986年に配備が開始され、1988年に全50基の配備が完了した。全ミサイルの配備場所はワイオミング州のフランシス E. ワーレン空軍基地に展開した第90戦略ミサイル航空団(現第90宇宙航空団)であった。
ピースキーパーミサイルは固体ロケットのロケットエンジン三段と液体燃料エンジンによるバス、またはPost Boost Vehicle(PBV)と呼ばれる最終段一段からなっており、固体ロケットで宇宙空間まで打ち上げられ、液体ロケットによるバスによって各弾頭をそれぞれの目標位置まで運ぶようになっている。ミサイルサイロからの発射はコールドランチ方式で、圧縮空気によってサイロからミサイルを排出したあとにミサイルエンジンに点火されることとなっていた。この方式の採用により、ミサイル発射後のサイロの再利用が可能となった。