ファンタジーRPGクイズ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ファンタジーRPGクイズ(ファンタジーアールピージークイズ)は、1980年代後半から1990年代中盤にかけて富士見書房より冒険企画局編として販売された、クイズ形式のTRPG解説本である。その舞台となる宿屋の名前であり、副題の一部でもある「五竜亭(ごりゅうてい)」から、五竜亭シリーズとも呼ばれる。
派生作品に、マギウス汎用システムのTRPG「五竜亭RPG」がある。
名前の似ているクイズ形式のTRPG解説本「ファンタジーRPGバトルクイズ52」とは、全くの無関係である。
目次 |
[編集] 概要
冒険者の宿「五竜亭」に集う冒険者たちが、自分の経験した冒険の自慢話や苦労話、冒険仲間から聞いた冒険話などをしながら、「例えばこんな状況に陥ったら、お前ならどうする?」といった質問を他の冒険者に投げかけ、それに冒険者たちが答えていく、という形式を取る。
クイズ形式ではあるが決まった回答があるわけではなく(出題者の用意した模範解答は一応あるが、それが絶対唯一の正解ではない)、出題者も解答者もその場に居合わせた野次馬たちも、皆でわいわい騒ぎながら延々と議論し続けていく。
読者は五竜亭に訪れた一人の新米冒険者として、五竜亭の冒険者たちの議論に加わる形になっている。
[編集] 登場人物
- カールス・グスタフ
- 隻眼の傭兵。左目には眼帯をしている。歴戦の冒険者であり、五竜亭の顔とも呼べる存在。武器のスペシャリストであり、彼の出すクイズには武器関係のものも多い。ちなみに妻帯者である。
- フンバルト・ヘーデルホッヘ
- 誇り高き騎士。カイゼル髭がトレードマーク。気高く高圧的だが、どこか抜けていて憎めないところがある。決め台詞は「スターホーンの錆にしてくれるわ!」(スターホーンは、彼の持つ剣の名前)。愛馬の名はトランザム。スターホーンを取り上げられると、途端に気弱になるという弱点を持つ。
- 「蛇の目」ダイス(へびのめ-)
- 若い男盗賊。腕利きのシーフだが、時々ポカミスをすることもある。非情を装う傾向があるが実は情に厚い。橋守のベルとは恋仲のようだが、そのことを茶化されると顔を真っ赤にして怒る。
- 二つ名「蛇の目」とは、ピンゾロ、即ち1のぞろ目のことである。また、名前の「ダイス」は、サイコロの英語名でもある。
- ガルフネット
- 魔術士ギルドに所属する女魔術士。強力な魔法を使いこなす。関西弁で話す。金儲けに余念がなく、がめつい性格である。外見は20代そこそこだが、実は壷の魔神の魔法により、300年近く生きている(三つの願いで「最後の願いは自分が若く元気な内に叶えてくれ」と願い、まだ最後の願いを唱えていない)。
- マリア・シルバームーン
- 聖職者(シスター)。穏やかな性格だが、やや自身の信仰する神に妄信的なところがある。武器を用いない素手での戦いならば五竜亭で最強らしい。酒を飲むと性格が豹変するため、周りの人間は彼女に酒を絶対に飲ませないようにしているが、時々手違いなどにより彼女が酒を飲んでしまい、惨劇が起こる。また、怒るとやはり五竜亭最強である。
- メロス・グリングラス
- レンジャー(野伏)。森に生きる青年。変わった人間の集まる五竜亭メンバーの中では一番の人格者で、かなりの博識でもある。エルフのソマーウィンドとは相思相愛の仲のようだが、彼女に対する態度はいまいちはっきりしない。
- ヴィヴィ
- 小さなフェアリーの少女。性格や容姿は幼いが、年齢は中年男性であるカールスと同じくらいである。彼女の台詞には平仮名だけしか使われない。自分のことを「びぃびぃ」と呼ぶ。よくカールスと行動を共にしている。
- ソマーウィンド
- エルフの少女。少女とはいっても300歳は超えており、五竜亭メンバーの中では最年長である。レンジャーのメロスのことを愛している。人間であるため先に寿命で死んでしまうであろうメロスについて憂うような発言も見られる。
- 赤熊
- ドワーフの男。無口で気難しい。ごつい外観に似合わず宝石細工や銀細工が得意である。エルフのソマーウィンドと、よく子供染みた口喧嘩をしているが、実際はそんなに仲が悪いわけではないようだ。
- ビッケム・アンダーヒル
- ハーフリング(ホビット)の男。人間の子供のような外観をしており、また性格も子供っぽい。大変食いしん坊であり、大皿から皆で取るような料理を彼と一緒に注文すると、全部取られてしまって酷い目に遭うという。
- ジョーダン・バーソロミュー
- 司祭。冒険者というわけではないが、よく布教の旅をしている。今は自分の教会も持ち、大忙しの生活を送っているが、五竜亭には時々立ち寄っているらしい。
- アトラティアヌス
- 五竜亭近くにある魔法学院の長。長い白髭を伸ばした老人で、いわゆる賢者である。魔法学院長ではあるが、「使わない魔法こそが最強の魔法である」との考えから、魔法は全く使わない。本当は「使わない」のではなく「使えない」のではないか、と周りの人に思われることもしばしばだが、実際どうなのかはよく分からない。
- ケド
- 魔法学院生(後に卒業)の少年で、アトラティアヌスの弟子。まだ若いが強力な魔法を使いこなす。普段は師匠の教え通り魔法は使わないが、師匠とは違い魔法以外の方法を考えて実行し、必要なときには魔法を使う。魔法に対する考え方の違いから、ギルド魔術士であるガルフネットとよく言い争いになるが、大抵は彼女に言い負かされてしまう。
- ヒースクリフ
- 吟遊詩人の美青年。「呪歌」と呼ばれる歌を歌い、相手を眠らせたり魅了したりするなど、魔法のようなことができる。よくフンバルトと旅をし、彼の歌を作っている。策略による勝利を嫌うフンバルトも、ヒースクリフが格好良く歌にすると納得してしまう事が多い。
- ラッキースター・キッド
- ギャンブラーの男。色々な人と賭け事をし、その勝ち金で生活している。冒険者としての腕も中々のものらしい。また、サイコロを用いて占いのようなことをすることもできる。中東風の容貌、また衣装は西部劇にでも出てきそうな格好であり、西洋ファンタジー世界の住人である五竜亭メンバーの中では異色の存在。
- 3巻での退場、それに続くカールスとメロスの「仲間が一人失われた」発言により、一部の読者には彼が死んだと思われているが、「五竜亭RPG」にルール説明役として登場しているところを見ると、彼は生きていると考えることもできる。
- ベル・イニディア
- セルフィスの街で、橋の警備人をしている少女。冒険者ではない。彼女の父オブザーは、カールスの戦友である。旅をしている途中にダイスに助けられたことがあり、ダイスとはそれが縁で知り合いになった。何者かに殺された父の敵を討つため、カールスとダイスに応援を頼んだ。ダイスとは恋仲のようである。
- 五竜亭のおかみ
- 五竜亭を経営している女性。宿を一人で切り盛りしている。五竜亭を訪れる冒険者に慕われている。
- 野次馬
- 五竜亭に集う、飲んだくれたちの総称。野次馬A、B、C……などの識別が付くが、特定の人物というわけではない。野次馬とはいえ、歴戦の冒険者である五竜亭の面々の会話に割り込むことができるところを見ると、実際はかなりの腕を持った冒険者なのかもしれない。五竜亭の名脇役。
[編集] 世界観
五竜亭のある世界は、ユキリアと呼ばれるファンタジー世界である。ユキリア世界に準拠する作品には、「ウィッチクエスト」「レムリカ銃士隊」(TRPG)、「二つの川の物語」(読者参加企画)、「百の世界の物語」(FCソフト)などがある。
五竜亭は、「ジェダから徒歩4日、マーカスの森を抜けた先」にある。正確な場所は分からず、何故か地図に記すこともできない。冒険者でない人間の中には五竜亭に行こうとしてもたどり着けない者もいるというが、冒険者であれば必ずたどり着けるとも言われている。
近くの大都市はセルフィス。五竜亭シリーズにおけるシティ・アドベンチャーの多くはセルフィスの街で起こっている。
魔法を使うと、どこかで何らかの反作用が発生する設定になっている。例えばガルフネットが魔法で七面鳥の丸焼きを出した時は、数日後に五竜亭のテーブルから七面鳥の丸焼きが突如消失してしまった(ケドの説明によると、この魔法はどこか別の時間・別の場所から七面鳥を取り寄せる事になるからだという)。このことは、学院の魔法使い(アトラティアヌスやケドなど)が魔法の使用を避ける理由の一つになっており、学院では理由も無く魔法を使うことを戒めている。魔術士ギルドの魔術士(ガルフネットなど)は反作用の発生にはあまり関心が無く、躊躇無く魔法を使うことが多い。
学院の魔法使いとギルド魔術士とでは、魔法の使用形態も異なっている。ギルド魔術士は、ダンジョンズ&ドラゴンズのマジックユーザと同様、魔法を使用するには事前にストックしておかなくてはならない。学院の魔法使いは「魔法そのものの理論」を学んでいるため、このような制約は無く気力の続く限り魔法を使用できるが、前述のような理由で魔法を無闇に使うことは避けている。
[編集] 他作品との関連
冒険企画局繋がりや執筆者繋がりで、いくつかの他作品と緩やかに関連している。
- ウォーロックの連載記事「二つの川の物語」には、傭兵を引退したカールス・グスタフが、酒場の主人としてヴィヴィと共に登場する。ちなみにカールスは年老いて白髪の老人になっているが、フェアリーのヴィヴィは年をとっていないようである。
- 本作に登場する一部のキャラクターと同名のキャラクターやよく似たキャラクターが、プレイステーションのゲーム『だんじょん商店会』をはじめ、藤浪智之(わきあかつぐみ)の他作品にも登場する(カールスや赤熊、野次馬など)。
[編集] 書籍情報
いずれも冒険企画局編。富士見書房より、富士見ドラゴンブックとして刊行された。全4巻。正式に完結したというわけではないが、4巻発売以降続編は出ていない。
- ファンタジーRPGクイズ 五竜亭の一夜 (1989年12月15日) ISBN 4-8291-4236-7
- ファンタジーRPGクイズ2 五竜亭の冒険 (1994年3月30日) ISBN 4-8291-4258-8
- ファンタジーRPGクイズ3 五竜亭の挑戦 (1994年12月10日) ISBN 4-8291-4276-6
- ファンタジーRPGクイズ4 五竜亭の激突 (1995年8月10日) ISBN 4-8291-4282-0
派生作品として、TRPGルールブックがある。出版社、出版レーベルは上記4冊と同じである。
- 五竜亭RPG 五竜亭の大騒動!(1996年3月30日、富永民紀/冒険企画局) ISBN 4-8291-4291-X
[編集] 外部リンク
- 冒険企画局
- 藤浪智之のホームページ とけねこ先生の交差点 --『五竜亭の一夜』執筆者の一人のサイト。プロフィールや作品リストに記述がある