ブフ
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ブフとは、モンゴルに古来より伝わる伝統的な格闘技である。その起源は紀元前3世紀頃とされ、馬を早く走らせること、力強く組み合うこと、弓を射ることが人々の間に広まり、この3種目を力で競い合うことから派生してきたとされる。また宗教的な奉納儀式として、さらに軍事訓練的な要素も持っていたといわれる。
日本では相撲と似ているということでモンゴル相撲といわれている。
モンゴル国では、年に一度の民族の祭典である国家ナーダムがあり、その催し物の一つとしてブフが行われている。金銭で弟子が師匠に勝ちを譲ることも多く[要出典]、強いフテチ(力士)になると1試合2,000ドルもの金が動く[要出典]とされている。モンゴル人はこれらの八百長の駆け引きを含めて楽しんでいる[要出典]。
近年、モンゴル国で行われているブフは、1978年から近代スポーツ化を図るためにルールの改革が進み、1997年には「ブフ・リーグ」が発足し、1999年には賞金制度が導入されプロ化が進んでいる。神技的な儀式を残しつつもプロスポーツ化され、この点は日本の大相撲に類似している。
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[編集] ブフの2大潮流
ブフは、いくつもの形態・系列に細分化されるが大きく二つに分類できる。一つはモンゴル国で実施されているハンハ・ブフで、もう一つが中国・内モンゴル自治区で実施されているウジュムチン・ブフである。これらには、ルールや衣装や称号に違いがある。
大相撲の朝青龍明徳(高砂部屋)の兄、白鵬翔(宮城野部屋)の父親などで注目されているモブフはハンハ・ブフであり、代々木公園で毎年開催されるブフの大会に参加している蒼国来栄吉(荒汐部屋)はウジュムチン・ブフの潮流である。
[編集] ルール
- モンゴル国のブフ
- ひじ・ひざ・頭・背中・お尻いずれかが先に地面に着いたら負けとなる。日本の相撲とは異なり、手の平が地面についても負けにはならない。また土俵がないので、押し出しやつり出しといった技はないが、足取りは認められているので足をつかんでのダイナミックな投げ技が多く見られる。
- 禁じ手は10種類で、かんぬきで腕を極めるガルフシフは腕が縦に折れるという意味の荒技である。
- 内モンゴル自治区のブフ
- 足の裏以外の部分が先に地面に着いたら負けとなる。下半身への攻撃は認められておらず、組み合ったのち相手を投げたおすルールである。レスリングのグレコローマン・スタイルと類似している。
[編集] 衣装と儀式
- モンゴル国のブフ
- 帽子、ドゾク(ベスト)、ショーダク(パンツ)、ゴダル(ブーツ)といった民族衣装をまとう。ザソール(行司)が挑戦のツォル(歌)を唱え、フテチ(力士)は鷹の飛ぶ姿を真似た勇壮な舞を舞う。
- 内モンゴル自治区のブフ
- ドゾク(ベスト)とゴダル(ブーツ)のほか、下半身への攻撃が認められていないためバンジルというだぶだぶのズボンとトーホーという後ろが開いたズボンようなものを着用する。力士はライオンの飛躍や種ラクダの走りに真似た姿を舞う。
[編集] 称号
- モンゴル国のブフ
- 国家ナーダムは512名の選手が参加して、9回戦のトーナメント形式で勝敗を争う。ベスト16ならば小結相当のナチン(鷹)、ベスト8ならば関脇相当のハルツァガイ(大鷹)、ベスト4ならば関脇相当のザーン(ゾウ)、準優勝ならば大関相当のガルディ(伝説上の巨鳥)、優勝ならば大関相当のアルスラン(ライオン)というツォル(称号)が贈られる。優勝2回ならば横綱相当のアヴァルガ(巨人)という称号が贈られる。
- 内モンゴル自治区のブフ
- 128名の選手が参加して、7回戦のトーナメント形式で勝敗を争う。称号制度はないが、優勝3回ならばジャンガー(首飾り)を着ける資格が与えられる。
[編集] 主なアヴァルガ
- ジグジドゥ・ムンフバト
- 大関・白鵬翔の父親で、レスリングで1964年東京五輪から5大会連続でオリンピックに出場して、1968年メキシコ五輪では銀メダルに輝き、モンゴル国に初のオリンピック・メダルをもたらした国家的英雄である。1963年、1964年の国家ナーダムで2年連続優勝を果たすとともに通算6度の優勝に輝くなど、大相撲に例えると大鵬幸喜クラスのアヴァルガである。
- バドマンヤンブー・バドエルダニ
- 1988年、1989年、1990年の国家ナーダムで3年連続優勝を果たし、ダヤン・アヴァルガ(世界の巨人)の称号が贈られる。また、1992年から1999年まで国家ナーダム8連覇を達成して通算12度の優勝を飾り、20世紀を代表する横綱である。また、現職国会議員で稽古をほとんどしていないにもかかわらず、2006年のブフ大会ツァガーンサルで優勝するなど、大相撲に例えると千代の富士貢クラスのアヴァルガである。サンボでも優勝経験があり、柔道でもオリンピック出場、世界相撲選手権大会でも優勝している。これらの格闘技大会出場のため幾度となく来日している。「バドエルデン」「バドエルデネ」とも表記される。
- 横綱・朝青龍明徳の長兄で、レスリングでオリンピックに代表歴を持ち、2003年に日本で総合格闘技デビューした。1998年、1999年の国家ナーダムで2年連続準優勝、2006年国家ナーダムで初優勝して本来ならばアルスランが贈られるところ、熱狂的な観衆の声にこたえる形でエンフバヤル大統領から初優勝でアヴァルガが特別授与された。
[編集] 外部リンク
モンゴル・ブフ・クラブ
さりふ~モンゴルの風~ (ブフにおける八百長について記載)
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