ブルーカラー
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ブルーカラー(Blue-collar 青い襟)は、主に現場の作業員など現業系や技能系の職種(主に肉体労働が主体)を指す。対義語はホワイトカラーが挙げられる。
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[編集] 概要
これに属する職種では、雇用側から提供される制服や作業服の色に青系が多いことから付けられた。これに類するとされる職種は土木・建築関係や、運転手・工場・メカニックエンジニア(整備工・修理工)等多岐に渡る。
(特に土木や建築に従事する職業の場合は「土方(どかた)」と呼ばれたこともあったが、現在では職業に対する差別的な意味合いがあるとされるため、使用されない)
なおこの「青系の制服・作業服」であるが、機械油や塗料、埃などの汚れを伴うことが多いため、汚れが目立たないよう青や灰色などの色が好まれる傾向にあったが、特に汚れにまみれることの少ない職場(家電製品や電子機器、半導体の組み立てなど)では、特に労働者の心理的な環境に配慮し、明るいパステルカラーの作業着を採用している事もあって、必ずしも青や灰色の服装であるとは限らない。
[編集] 日本での動向
リクルート社の発行する現業系・技能系職種専門の求人情報誌「ガテン」の求人情報に掲載されている職種であることから、俗にガテン系(がてんけい)とも呼ばれる。なおこの「ガテン」とは合点がいくという言葉からきている。なお、「ガテン」誌の創刊前は、現業系職種の求人はスポーツ紙か夕刊紙に頼ることが多かった。 「ガテン」がネットに進出(ガテンnet(ガテンネット) http://gaten.net/ )したことで、現場系の仕事探しの方法も多様化するとみられている。
日本では1910年代以降に於いて急速に工業化が進んだが、この時代から次第に「ホワイトカラー」と「ブルーカラー」の区分が明確に意識されるようになってきている。とりわけこの傾向は高度経済成長期以降に加速し、地方から集団就職列車で大都市に出た中学新規卒業者は「金の卵」(使用者側から見た場合の表現)と呼ばれ、現業系・技能系職種に配属されることが多かった。
同時代以降、ブルーカラー職種は社会の様々な分野で活躍し、高度成長期の日本の工業化を支えてきたが、生活水準が向上した1980年代頃より、以下の理由から次第に「3K」(きつい・汚い・危険)職種と名指しされるようになった。
- きつい
- 数十kg~数百kg単位、場合によっては数トン単位もある重量物(建築資材、引っ越しの家具など)の運搬をメインとする、肉体的負担の大きい作業が多い(この場合、運搬物の寸法より、むしろ重量の方が問題視される)
- 仕事の物理的な環境が厳しい(塵埃、高温多湿、低温、野外の悪天候下における作業、悪臭などでの勤務)場合が多い。
- 24時間など長時間操業の工場や現場などでは、交代勤務(8時間3分割、または24時間で2・3交代)のため、勤務時間や休日が不規則。
- 工場の流れ作業では、単調な仕事の繰り返しに終始することが多い。
- 労働災害(労災)や職業病の問題がしばしば発生し、大きな問題となった。
- 肉体的負担の大きい割に給料が低く、逆に肉体的負担の小さいホワイトカラーで高給になる不条理さえあり、待遇が全く釣り合わない(特に中卒の労働者に多く見られる)。
- 汚い
- 機械油や埃(塵埃)の多い場所での勤務すれば、作業服の汚れが避けられないが、洗濯する機会が少なく、休日を作業服の洗濯に割かざるを得ないこともある。
- 危険
- 次のような理由から、勤務中に生命に関わる事故(労働災害=労災)に遭う危険が高い。
この結果、労働者として社会に出る学生に(日払いの手取りが10,000円強のような高給でも)嫌われ、ホワイトカラー指向が強くなっていった。このホワイトカラー指向は高い進学率にも現れている(賃金の格差がほとんどないのなら、ホワイトカラーの方がまだましだという非難もある)。
だがブルーカラーが生産や建設・サービス業を支える労働力として、決して華やかでは無いにせよ、重要な役割を果たしている事に違いは無く、これら地味だが重要な職種では、深刻な労働力不足も発生した。この時代では、余りに深刻な労働力不足から、外国人労働者(主として南米の日系人)の受け容れなどの社会的変革も求められた。その一方では、ホワイトカラーの職種では労働力の供給過剰から、余剰ホワイトカラー労働者の大量リストラも見られた。
従来はホワイトカラー業種より価値が低いと見なされたブルーカラー職種にも、1991年に創刊された「ガテン」誌の影響、安定性の追求、人材不足から高給を保証する事も増えたブルーカラー職種では、短期間でガッチリ稼げると、1990年代後半から徐々に人気が戻ってくるようになり、前出の「ガテン系」等とする、従来の暗くて辛いイメージを払拭するかのような言葉も登場している。
なお、長年に渡って係争も見られた労災や職業病の問題に関しても、放置すると労働者が集まらない事もあり、各々の職場でこれら労働者の負担を軽減する機器などの導入で、「きつい」「危険」「汚い」などの問題を軽減したり、または手厚く労働者を保護する方策をとる企業が増えた事も、これらブルーカラー職種へと人が集まり始める一因に挙げられる。
[編集] 偽装請負問題
しかし、2006年に毎日新聞や朝日新聞などが製造業の現場における偽装請負を取り上げ始めた事により、ブルーカラーの労働環境が決して良好ではない事が明らかになった。詳細は該当項を参照の事。