ペダル (自転車)
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人間の足で踏み自転車の動力の第一歩をつくり出すのがペダルである。ペダルの軸はクランクの末端近くについており、その軸が回転する事によって足の上下運動をクランクの回転運動へと変換させる。通常の自転車のペダルの形は不変であるが、ここでは競技用の自転車を説明する。
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[編集] 歴史
ペダルが通常の状態から形を変えてゆくのは安全型自転車からロードレーサーの進化へと時期をほぼ同じにする。。ベロシペードではペダルにまで改良が進まず、それまでの乗るだけで不安定なペニー・ファージング型では足を固定するのはあまりにも危険すぎた。安全型自転車になってからもペダルで足を固定する事によって速度を上げさせるという発想をまだ出なかった。トゥークリップとストラップの発想がはっきりと出てくるのは1900年代になってからである。
『トゥークリップ・アンド・ストラップ』とはペダルプレートにネジ留めしたトークリップにシューズの爪先を入れ、ペダルとクリップに通した皮や樹脂製のトーストラップと呼ばれるベルトでシューズをペダルに縛り付ける方法である。後にシューズ自体が進化してレーサーシューズと呼ばれるようになる。レーサーシューズの材質は皮や合成皮革、靴底は木や強化プラスチックで、ペダルと噛み合わせるためのシュープレートを付けるという、まさにペダルを踏む事だけに発達したシューズだった。そのため踏み込む力を直接ペダルに伝える為に靴底は絶対に撓まず、また踵もないので歩行は困難であるばかりか長時間歩くと靴自体を台なしにしかねなかった。各種手引書でも「シュープレートの溝を潰す原因になるのでレーサーシューズのまま歩き回らない事」と警告がされている(プロは歩くときサンダルに履きかえる)。このような欠点もあったが、競技用としてはこのように長い間トゥークリップとストラップというデザインはほとんど普遍的なデザインであった。
革新的な進歩が起こったのは1986年、スキーのビンディングの製造メーカーのLOOKが『ビンディング・ペダル』を開発発売からである。スタートダッシュでいちいちストラップを締め上げなくていい簡便さがプロレーサーに、選手の足の大きさによってトークリップを変えなくて済むためメカニックに喜ばれ、またクリップアンドストラップでは足が即座に外せない事に恐怖感を覚える初心者に受け(ビンディングは足を捻るだけで外れる)、市場を席巻する事となった。その後、シマノ、タイム、カンパニョーロと続々と独自の脱着機能を持ったクリップレスペダルを発表した。フィット感、脱着のよさ、シューズの互換性、泥詰まりにしにくさ、力の伝達具合といった多種多様な判断基準が存在するので、現在では多種多様なメーカーが発表している。
[編集] 機能
クリップレスペダルは前述のスキーのビンディングのように金具で足裏の「クリート」と呼ばれる樹脂製の止め具をひっかけ固定して人間の脚力を直接ペダルに伝えようとする部品である。クリートの規格は出しているメーカーで異なり、また同じメーカーのものでも用途目的、ペダルのブランド名によって異なる事もある。クリップレスペダルを使用するには専用のシューズ(以下「サイクリングシューズ」)が必要で、クリートに対応する取り付け口に合ったものを身につけなくてはならない。ロードレーサーのシューズには三角形の3点の位置にネジ穴が、マウンテンバイク用は垂直に2本の線状の穴が開いている。もしシューズとクリートに互換性がなくてもメーカーの出す互換アダプターを介して取り付けできる場合もある。
ペダルもシューズも主にロードレーサー、マウンテンバイクと分かれている。
ロードレーサーのものは効率良いペダリングを第一として考えられているのでペダル、クリートとともに大きくシューズの底はプラスティックかカーボンで作られていて大変固いので、長い距離を歩く事は難しく、またクリートが磨耗する原因となる。
マウンテンバイクは不整地走行を前提として作られているのでクリートが小型で靴底に隠れるように作られており、また脱着もロードレーサー用に比べて容易。マウンテンバイク用のサイクリングシューズは自転車競技用とツーリング用のものがあり、競技用のものは底が固いが、ツーリング目的用のものならば比較的柔軟で歩きやすく作られている。
[編集] 利用
ペダルはサドル、シューズに次いで選手達の好みが分かれるパーツで、とくにランス・アームストロングはシマノの古い型のペダルを捜して全米の自転車問屋やサイクルショップに電話させたという話は有名。これがシマノ「SPD-SL」の開発につながった。膝の傷害を予防するために、「タイム」のように左右にスライド幅を持たせたペダルもあり、プロレーサーに愛用者も多い。逆になるべく足首をペダリングを固定してこそ自分の力を十二分に出せるという選手もいる。
初心者が初めてクリップレスペダルを試す時には注意が必要である。着脱が簡単になったとは言え、シューズがペダルに貼り付いている事には変わりないので、信号などでの停車時に上手く外せずそのまま倒れてしまう(いわゆる「立ちごけ」)の危険性がある。足を外せず転倒し、車に轢かれるなどの交通事故の事例もあるため、着脱の練習は必須である。
クリップアンドストラップのペダルは現在も存在し、トラック競技のうち特に短距離種目では採用率が高い。使用機材に厳しい制限のある(NJS規格に適合している事が要求される)競輪では全てクリップアンドストラップ式であり、発走前にストラップを締め直しながら選手は集中を高めていく。また海外のスプリント競技ではクリップレスペダルの上にストラップを結んで不意の脱着を防ぐようにしている選手もいる。固定ギアを使い、ロードレースより高いケイデンスを出すトラック競技ではシューズがペダルからはずれるのは危険だからである。(本項スタブ)