ホンダ・CBR900RR
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CBR900RR(シービーアール900ダブルアール)は本田技研工業が主に輸出市場向けに製造していた4ストロークのオートバイである。輸出用モデルはFireBlade(ファイヤーブレード)のペットネームが与えられている。
モデル別に排気量は893cc、919cc、929cc、954ccとあり、929cc、954ccのモデルはCBR929RR、CBR954RRと呼ばれる場合があるが、本稿ではこれも併せて記述する。
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[編集] 概要
1980年代後半から1990年代初頭当時の排気量900cc前後のクラスは、250~400ccのクラスで主流となっていたWGPのレーサーレプリカモデルや、750ccクラスのスーパーバイク世界選手権に出場するために販売していたホモロゲーションモデルなどの軽量なモデルとは違い、スポーツツアラーモデルが主流であった。(当時スポーツ性能の高いGPZ900Rや、FZR1000、GSX-R1100でさえ相当重量があった。)
その中で、ホンダは80年代後半より、VFR750に続くスポーツモデルとして、CBR750Rの後継車種でCBRシリーズの旗艦としてCBR250RR~400RRシリーズと延長上のデザインをしたCBR750RRの開発していたが、販売面においてのCBR750Rの販売への苦戦、VFR750Rと同じ750ccクラスにスポーツモデルを置くことによるバッティング、V型エンジン搭載車への開発への配慮等の複数の視点からCBR750RRは開発中止となった。
しかしCBR750RRの設計主任を担当した馬場技師が開発の中止された当車種を排気量を900ccぐらいまでアップさせ、軽量なスポーツモデルとして出したら輸出市場が狙えるのではないかとの考えを会社側に提案し、会社側もそれに了承し、開発が決定した。
開発はCBR750RRの遺産を生かし、CBR750RRのエンジンのストロークアップや、レーサーレプリカ同様の軽量化、リアカウルの収納スペースの確保等が挙げられるが、特にハンドリングが900~リッタークラスに代表されるような、もっさりしたハンドリングではなく250~400クラスのレプリカや750のホモロゲーションモデルのように軽いハンドリングを目指した所であった。
そして、ハンドリングが日本刀のように鋭く切れる事から、ペットネームに燃える剣FireBlade(ファイヤーブレード)と命名された。
発売後は雑誌やユーザー等から、250や400、750クラスなどの異種排気量対決が行われ、このモデルが他のスポーツモデルに引けを取らない対等に勝負できるマシンと言わしめた。
海外市場からは歓迎されて受け入れられ、瞬く間に世界中でベストセラーになり、新たな造語としてツアラーともレーサーレプリカとも違うという意味でスーパースポーツ(SS)と呼ばれるようになった。
CBR900RRが生み出した軽量リッタースポーツの市場の登場により国内外各社が刺激を受け、各社が軽量なリッタースポーツを登場させることとなり、今も続くスーパースポーツ戦国時代に突入していく事となる。
長らく輸出専用車で日本国内では逆輸入車扱いあったが、2001年に発売された6代目、CBR954RRからは国内市場投入が決定され、馬力規制や遮音部品の追加など日本国内の規制に合わせた改良も行われた。国内仕様にはFireBladeのペットネームは与えられていない。
2004年には後継車種であるCBR1000RRにバトンを渡し、生産終了となった。尚、開発も馬場技師から原技師へバトンタッチされ、ペットネームもCBR900RRシリーズのFireBladeとは区別され、Firebladeとなっている。
[編集] 車種履歴
[編集] 初代(SC28)
初代は893ccであった。エンジンは元が750CCであったものを、70mmのボアはそのままに、ストロークを58mmまで拡大しこの排気量を得ている。これはCBR1100XXと同値のストローク量であり、この排気量のスポーツモデルとしては異例ともいえるロングストローク傾向であった。しかし、それにより中回転域の加速特性は良好であり、軽い車体とのマッチングもあいまって非常に高い運動性を得るに至った。それは主にワインディングロードや高速道路の合流などで活きることとなり、国内外のメディア及びライダーから絶賛をもって迎えられた。
特徴
- 2眼のフロントライト
- グロスブラックで塗られたサイレンサー
- 16インチのフロントホイール
[編集] 2代目(SC28)
このモデルでは二眼ライトを廃し、その代わりにタイガーアイと呼ばれるライト形状に変更された
変更点
- タイガーアイ形状のヘッドライト
・アッパーカウルステーの一部をアルミ製に変更、またシリンダーヘッドカバーをマグネシウム製に変更 することで1型から若干の軽量化も施された。
[編集] 3代目(SC33)
このモデルより排気量が893ccから918ccへ拡大された。
- フレームを変更、剛性をやや落とすことで扱いやすさ及び旋回性の向上を実現。またエンジンにも小変更、キャブレターにスロットルポジションセンサーを追加している。エギゾーストパイプがステンレスに変更。
その他にもフューエルポンプを廃止するなど、軽量化も継続して行われる。
[編集] 4代目(SC33)
このモデルがキャブレター仕様の最終型となる。
- トルクおよび出力の拡大
- 車両の軽量化
フレームは3型に似るが、ピボット裏側に補強リブを追加したりステムパイプを若干前方へ出すなど、変更点は多い。またスイングアームをテーパー形状に変更、フォークオフセットも30mmにするなど、操安性に関する改良は多岐にわたり、キャブ仕様の集大成ともいえるモデルである。
[編集] 5代目 CBR929RR(SC44)
1998年にヤマハからYZF-R1が発売され、シリーズ初の大幅なフルモデルチェンジが行われた。ライバルの衝撃的な高性能を目の当たりにし、1年前倒しで発売開始する。
CBR929RRという名称は正式には北米仕様のみであり、欧州仕様は従来通りCBR900RRという名称となるが、まとめてCBR929RRと呼ばれることも多い。
外観としては3眼ヘッドライトの採用が特徴。ロービームでは真ん中の1灯のみ、ハイビームで3灯すべてが点く。
変更点
- キャブレターからFI(フューエルインジェクション)に変更
- 吸気デバイス(H-VIX)、排気デバイス(H-TEV)
- フロントホイールのインチアップ(16インチから17インチへ)
- 倒立フロントフォーク
- セミ・ピボットレスフレーム
- 液晶のデジタルスピードメーターの採用
- 欧州仕様ではHISS(ホンダイグニッションセキュリティシステム)を採用している。北米仕様は954から。
なお、北米地区向けに限定車も発売された。
[編集] 6代目 CBR954RR(SC50)
このモデルが900シリーズの最終型となるモデルで、初代から始まった軽量化により乾燥重量がミドルクラスのCB400SFとほぼ同じ重量でシリーズ最軽量のモデルだった。なお、スーパースポーツでは初めて国内の基準に合わせて改良が施された国内仕様が用意され、馬場技師の最後の担当車両として記念すべきモデルでもあった。
変更点
- より、シャープなデザイン
- 国内仕様の設定
- チタンエキゾースト
- イモビライザー(HISS)の初採用
- LEDテールへの変更
その他、インジェクターを4穴から12穴にしたり、スイングアームピボットメンバーの肉厚アップなど、目に見えない変更も数多い。操安に関しては、安定指向の5型をベースに、各部の変更でどうにかシャープな方向へ振った節があり、市場の要求に対する設計陣の苦労も看て取れるモデルである。
輸出仕様と国内仕様との変更点
- ヘットライトが常時点灯(一部の輸出仕様では、常時点灯仕様であった)
- ヘットライトのポジション灯の廃止
- ウインカーのダブル球への変更(ウインカーがポジション灯として兼用するため)
- 馬力規制(151PSから91PSへの変更)
- 吸気と排気関係の部品の変更
- サイレンサーの出口の絞り込み
- 電気配線の変化
- スパークプラグの番数変更
- 騒音規制に伴うカウル内へのスポンジ等遮音物の追加
- ドリブンスプロケットのサイズ変更
- サイレントチェーンの採用
- 北米仕様同様の名称へ変更(ファイヤーブレードの名称は付かず車名がCBR954RRとなる)
他にも、ホンダアクセスのアラームシステムや、ココセコムに対応できるようになっている等の日本仕様独自の防犯システムを組み込む事が出来る
2003年には、北米モデルのカラーバリエーションモデルの他にもオートバイ販売店であるPRO'S 店限定としてスロベニア共和国のアクラポビッチ社のスリップオンサイレンサーと輸出向けの塗装(輸出仕様の03年型モデル)がされた特別仕様が販売されていた。