マーチングバンド
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マーチングバンド(Marching band)とは、管楽器、打楽器を中心とした編成で、主に隊列を組んで歩きながら演奏をする楽団のこと。用語があいまいに使われており、様々な編成の楽団を指す。演奏行為もマーチング、ドリル、パレードなど様々な呼ばれかたをする。 バトンやフラッグを持った人たちや、派手なパフォーマンス、演奏などを競ったり、楽しんだりする。 世界的にコンテストなどもある。
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[編集] 楽器編成による分類
現代の一般的なマーチングバンドの編成にはおおむね次のようなものがある。それぞれ楽器演奏のみならず、カラーガードなどの演技を含むことも多い。また、マーチングバンドの指揮者のことをドラムメジャーと呼ぶ。ドラムメジャーはメジャーバトンとホイッスルを用いて団員に様々な隊形変化の合図を促す。
- ドラム&ビューグルコー - ビューグルと呼ばれるG調の金管楽器(信号ラッパ)と打楽器群から成る。1999年以降DCIではG調のビューグルに限らず、マーチングブラスと呼ばれる楽器の使用も認められるようになり、現在では金管楽器により編成されたマーチングバンドと、使用する楽器での区別はなくなっている。マーチング独自の編成。
- ドラムコー - 打楽器群から成る。マーチング独自の編成。または、ドラム&ビューグルコーの略称。
- 吹奏楽 - 一般的な吹奏楽団と同じか、それに近い編成。現在では、ドラム&ビューグルコーと同様の打楽器群が用いられることが多くなっている。木管楽器のうち、ダブルリード属は歩きながらの演奏が困難である事から、省かれることもある。また、フルートとクラリネット属は、効果的な音量を確保するために多人数を要することから、金管楽器とピッコロ及びサックスによる編成のマーチングバンドもある。またクラリネットとダブルリード属は管を水平より下に向けて演奏せざるを得ない事から、(他の管を上に上げられる楽器と一緒では)視覚的統一が出来ないという理由で、この2種の楽器を編成に入れていないマーチングバンドもある。
- ブラスバンド - 金管楽器と打楽器による編成。金管バンドとも呼ばれる。吹奏楽と同様の金管楽器が用いられるが、チューバやユーフォニアムはサウンドの指向性と視覚的統一を図るため、フロントベルの楽器が用いられることが多い。また、中音域は、フロントベルのフレンチホルンの他、より音の輪郭がはっきりしたメロフォンを用いることも多い。これとは別に、小学校等では英国式ブラスバンドまたはこれに近い編成の金管バンドにより、マーチング活動を行うことも多い。
- ファンファーレバンド - 吹奏楽を参照。
- 軍楽隊(ミリタリーバンド)
- 鼓笛隊 - 主にドラムなどの打楽器とリコーダーや鍵盤ハーモニカなどから成る。小学生のクラブ活動などで行われることも多い。
[編集] 演奏場所による分類
- フィールドドリル
- 屋外競技場など広大な野外での演奏・演技。特にアメリカでは、マーチングバンドがアメリカン・フットボールのハーフタイムショウとして発展してきたことから、フットボールフィールドでの演奏が極めて盛んである。海外ではポイント(5メートルおきに置かれる目標マーク)が無い状態で行われる場合が多い。
- フロアドリル
- 体育館・屋内競技場などの床の30メートル四方を使っての演奏・演技。日本マーチングバンド・バトントワーリング協会(旧全日本マーチングバンド・バトントワリング連盟)主催の大会で行われている形態。諸外国に比べ、国土が手狭な日本では、屋外の競技場の数も限られており、マーチングバンドが自由に使える状況ではない。また、季節ごとの気候変動が大きいことも、屋内でのマーチングが発展する要因ともなっている。
- ステージドリル
- コンサートホールなどのステージでの演奏・演技。照明や緞帳などの舞台装置も活用することができる。日本においては半世紀の歴史を持つ演奏形態であるが、blast!に代表されるように、世界的な発展が期待される分野でもある。
- パレード
- 道路などを行進するもの。地域の行事などに参加するバンドも多い。
[編集] マーチング特有の楽器
- ビューグル(G調)
- 信号ラッパに由来する金管楽器。アメリカでは、伝統的信号ラッパがG調であったことから、1998年までのドラムコーの大会 (DCI) においてはすべてG調で統一されていた。G調以外のビューグルも存在するがマーチングで使用されることは稀。
- バルブを持たない信号ラッパから発展してきた楽器だが、現在のビューグルは、通常のトランペットと同じように3つあるいは4つのピストンを持つ。大きく分けてソプラノ、アルト、バリトン、コントラバスがある。アルトはアルト(フリューゲル)、メロフォン、フレンチホルンの3タイプがあり、バリトンにはバリトンとユーフォニアムの2タイプがある。また、ソプラノとアルトは管長は同じであるが管の太さの違いとベルの形状で音色に差がついている。
- 全てフロントベル(トランペットのようにベルが前を向いていること)であり、サウンドの指向性を統一することにより、音響の悪い屋外でも、最大限の効果が得られるようになっている。また、視覚的効果の統一も図ることができる。さらに、演奏者の向いている方向を変化させることによって演奏のダイナミクスと視覚的効果とをリンクさせることができる。
- 調性すなわち管の長さ以外にも、トランペットに対してソプラノビューグルは、円錐管部の開きが早く、円筒管部の径も太い。このことからビューグルは、倍音を多く含み、遠達性に優れた、輝かしい音色を特徴としている。2006年現在ビューグルを販売しているのは、アメリカのDynasty社とKanstul社。古くはバック社、ラディック社、ゲッツェン社、スリンガーランド社、オールズ&サン社、キング社等様々なメーカーが生産していた。
- マーチングブラス(Bb調・F調)
- 吹奏楽編成のマーチングバンドでは、ビューグルでなく、Bb管・F管のマーチングブラスが使われる。また、日本のマーチングバンドでは、金管のみの編成であっても、ビューグルが選択されることは少ない。また、DCIのルール改定に伴い、ドラム&ビューグルコーでも使用する楽器をマーチングブラスに変更する団体が多くなってきている。
- ソプラノに対応する楽器はトランペット(Bb管)。アルトに対応する楽器はマーチングメロフォン(F管)。Bb管のマーチングフレンチホルンやフリューゲルホルンを使用して響きを厚くするバンドもある。バリトンに対応する楽器はマーチングバリトンとマーチングユーフォニアム(どちらもBb管)。コントラバスに対応する楽器はマーチングチューバ(Bb管・Es管)である。
- スーザフォン
- Bb管のチューバと同じ管長を持つ低音金管楽器。アップライトベルのチューバでは歩行中の演奏が困難であることから、管を体に巻き付けるような形状のヘリコーンバスと呼ばれる楽器が生み出され、さらに改良されて今日のスーザフォンとなった。かつては、大きくて目立つことと、どこかしら愛嬌のある容姿から、マーチングバンドの代名詞的存在であった。近年では、音楽的表現においてチューバに劣るとされ、マーチングチューバに置き換えられる傾向にあるが、「低い音が出る楽器=大きい」という直感的に分かりやすい視覚効果は、他の楽器には代え難い魅力である。また、楽器の操作の習熟のために長時間の訓練を要するマーチングチューバと異なり、担ぐだけで演奏が始められることもスーザフォンの特色といえる。問題となる音色も、優秀なチューバ奏者が演奏する限りにおいては、軽量化のためにコンパクトに設計された3/4サイズのマーチングチューバよりも、むしろ良い結果が得られる。
- 管体は、本来、他の金管楽器同様、真鍮製であるが、奏者の負担を軽減するため、ベルをFRPにして軽量化したものも広く用いられている。
- マルチタム
- トリオ、クォードドラム、クイントドラム、テナードラム等、呼ばれ方は様々。一般的にタムの数で区別される。
- トリオは3つのタムによって構成される。
- クォードは4つのタムによって構成される。
- クイントは5つのタムによって構成される。
- セクステットは6つのタムによって構成される。アメリカでは70S後半、稀にセプテット(7つのタム)があった。
- キャリングホルダーに取り付けて使用する。チューニングは高めに設定され、高音と独特の倍音が特徴。各タムの音程間隔は短3度と言われているが、決まりはない。
- マーチングスネアドラム
- キャリングホルダーに取り付けて使用する。通常のスネアドラム(コンサートスネアドラム)に比べ、頑丈なつくりで、ハイテンションのチューニングが可能になっている。高音と独特の倍音が特徴。
- マーチングバスドラム
- キャリングホルダーに取り付けて使用する。通常3–5人の奏者が、それぞれ大きさの違うバスドラムを演奏する。主に、楽曲のベースラインを担当する。奏者の分担により、細かいリズムに移ったりなどの演奏の幅を広げることができる。シェルの大きさは16インチから32インチがよく使われる。
- マーチングシロフォン
- キャリングホルダーに取り付けて使用する。軽量化のため、音域は2.5オクターブに狭められ、また1つの鍵盤の大きさもコンサート用シロフォンより一回り小さくなっている。それでも以前は重量が20キログラム近くにもなっていたが、軽量化が進められ、近年は7–8キログラムのモデルが主流である。
- マーチンググロッケン
- グロッケンにキャリングホルダーに取り付けて使用。ベルリラとは別。元々小型の鍵盤楽器でああるため、マーチング用に(軽量化目的で)音域を狭められる等はされていない。
(書きかけ・補足お願い)
[編集] マーチングの歴史
(書きかけ)
[編集] 日本における大会など
日本マーチングバンド・バトントワーリング協会(旧全日本マーチングバンド・バトントワリング連盟(M連、JMBA))による大会と、全日本吹奏楽連盟による大会の2つがある。
もともとM連は吹奏楽連盟から独立して出来たという経緯もあって分裂状態が続いているが、2003年からM連、吹連の双方の上位団体が一緒に技術を競う「ジャパンカップ」も開かれるようになり、融合を模索しているところでもある。
M連と吹連の大会では好まれる傾向が違い、M連の大会で上位だからといって、吹連でも上位になれるわけではない。逆もしかりである。両大会を見比べれてみると、吹連では基本的技術が、M連では演出が重要視されているようである。しかし近年、吹連でも宝塚の演出家を審査員にするなど、演出にも着目し始めている。
創価学会が何故か力を入れている分野でもあり、JMBAの全国大会(一般の部)には毎年4–5団体送り込んでいる。他にも天理教関連が高校・一般の強豪として長年(特に高校は1980年代から)居座っているなど、宗教の代理戦争のような様相も呈している。[1]
[編集] 関連記事
[編集] 外部リンク
- Drum Corps International (DCI)
- Drum Corps Associates (DCA)
- Drum Corps Japan (DCJ)
- 日本マーチングバンド・バトントワーリング協会 (JMBA)(旧全日本マーチングバンド・バトントワリング連盟)
- 関東学院マーチングバンド
- ザ・ヨコハマスカウツ
- 創価ルネサンスバンガード
- チェリー・ブロッサムズ ドラム&ビューグル・コー
- 嘉悦女子中・高等学校マーチングバンド部 (ESTEAM)
- 福岡大学附属大濠高等学校吹奏楽部
- DYNASTY JAPAN