モペッド
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モペッド、モペット (moped) とは自転車にエンジンをつけたもので、別の表現をすれば自転車のペダルが付いたモーターバイク(以下「ペダル付きバイク」)のことである。本来の語源からすると、モペッドこそが『原動機付自転車(原付)』なのであるが、原付登録台数に占めるモペッドの割合が極めて少ない現在、警察庁では『ペダル付きの原動機付自転車』という、おかしな呼称を用いている。
なお、年配者の間では、俗に『バタバタ』などとも呼ばれる。
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[編集] 日本における歴史
日本の純国産オートバイ第一号は1909年のNS号であった。西洋に遅れること約40年である。島津楢蔵によって製作されたNS号は400ccの4ストローク単気筒エンジンを自転車に搭載したモペッドであった。
太平洋戦争後、旧日本軍から放出された発電用エンジンを取り付けた自転車が出現した。やがて小さなメーカから専用の自転車用取付エンジンが発売され、販売数は1948年には2,000台、1949年には10,000台程にも達したらしい。現在まで続くメーカとしてはホンダがいち早く1948年に50ccのホンダAを発売、1952年に「カブ 取付エンジン F型」に引き継がれ1955年まで販売された。スズキもまた、1952年にパワフリー(36cc)を発売、後継機種のダイヤモンドフリー、ミニフリーシリーズ(50cc他)は1959年まで発売され、現在オートバイを販売していないブリヂストンも1954年に50ccの富士精機製エンジンを用いた取付エンジンを発売するなど、大いに流行した。
1952年に原付が無免許で運転できるようになると、国民の足としてのオートバイの重要性が増した。1957年にタス・モーペッドが発売され、完成品としてのモペッドが販売されるようになった。それまでは、50cc以下のオートバイは普通の自転車にエンジンを後付けにしたものしか存在しなかった。スズキはタスの翌年1958年にスズモペット(50cc)を発売した。当時、原語のmopedと愛玩動物の「ペット」の両方にひっかけて、「モペット」と呼び、それが定着した。
モペットはその後、ホンダ・カブ(1958年)に代表されるアンダーボーン式ビジネス原付もまた意味するようになり、山口オートペット、ヤマハモペット、カワサキペットなどの車名として用いられた。1961年をピークとする「モペットブーム」はこれらカブスタイルの原付車のブームを指す。(資料: 「国産オートバイ20年のあゆみ」月刊オートバイ 2006年2月号。初出は1968年5月号)
その後、カブは着実に売れ続け、ロードパルやパッソル、50ccスクーターといった原付ブームはあったものの、本来のモペッド(ペダル付きバイク)は現在ほとんど普及していない。日本ではペダル付きバイクに関する特例がなく、道路交通法によりエンジンの動作状態に関わらず原動機付自転車の扱いとなり、乗車用ヘルメットの着装・車道走行・ナンバー取得・自動車賠償責任保険加入が義務づけられているためである。
ホンダはペダル付きバイクの特例化をにらんで1966年にリトル・ホンダP25(49cc)、1984年にホンダ・ピープル(24cc、2スト)を発売したが、四大メーカ製ペダル付きバイクとしてはこれが2006年現在最後のものである。しかし、速度は遅いが町乗りであれば十分であること、オイルとガソリンを自分で混合しなくてはいけない等手がかかる分逆に愛着が湧く、いざとなれば自転車となる、ヨーロッパ風でおしゃれ、などの点で都会の若者を中心に根強い人気がある。
[編集] 欧州での普及
日本と異なり、ヨーロッパでは無免許で運転できる国が多いので自転車の代わりに普及している。オートバイは日本メーカ製品が世界を席巻したが、モペッドには欧州メーカが多いのはこのような事情もある。2006年現在唯一の日本のメーカであるフキは外国向けの製品を国内でもネット通販ないし代理店を介して販売する形で国内市場に参入している。
[編集] 名前の由来
動力としてモーター(発動機)とペダルを混用できることからmotor + pedal = moped と言う言葉が生まれたと言う説がある。
[編集] メカニズム
現代のモペッドは以下に示すように、きわめてシンプルで手軽なメカニズムを採用している。
[編集] 原動機
いわゆるフル電チャリをのぞいて、ガソリンエンジンである。2ストローク単気筒自然空冷混合潤滑(あらかじめ2ストロークエンジン用のエンジンオイルを混合したガソリンをガソリンタンクに給油する)であり、刈払機と同様のシンプルなものである。排気量は50cc以下で、原付一種に相当する。空冷混合潤滑なので、混合燃料さえ用意すれば、エンジンオイルの交換や冷却液の交換は不要である。
[編集] 始動方式
セルフスタータを搭載している機種はなく、人力で始動する。操作方法は車種によって異なるが、盗難を考慮してここでは詳細を述べない。
[編集] 駆動方式
さまざまである。NS号は後輪に大きなプーリーを取り付け、ベルトを介してエンジンのクランク軸から駆動した。取付エンジン方式の場合、ローラーで後輪を直接駆動する方式をとるものもあった。後のホンダ・ピープルも同じ方法である。ソレックスはフロントフォーク、自転車でいえば前かごの部分にエンジンとギヤボックスをおき、前輪をローラーで直接駆動する。フキ製品はペダルについたドライブスプロケットで後輪のドリブンスプロケットをチェン駆動する方式(通常の自転車と同じ)だが、ペダルのクランク軸にワンウェイクラッチがあり、エンジン+人力のハイブリッド走行が可能である。より高性能なモペッドでは、原付スクーターに見られる無段変速機(CVT)や自動変速機を備えたものもある。フキ製品には自転車用内装変速機のオプションがある。
[編集] フレーム、サスペンション
フキ製品、ホンダ・ピープルのように自転車と同じ構造のものもあるが、高速走行に向かないため、アンダーボーンフレームにある程度のサスペンションを搭載した車種が多い。
[編集] 主な製造元と製品名
- プジョー・モトシクル - フランスのオートバイメーカー - VOGUE(ヴォーグ)
- ソレックス
- ピアジオ - イタリアのオートバイメーカー - Ciao(チャオ)
- トモス - オランダのオートバイメーカー - Classic-1(普通トモスと呼ばれるもの)メーカサイト
- フキ・プランニング 日本のメーカー
[編集] 電動アシスト自転車との関係
日本において、電動アシスト自転車のアシスト性能は厳しく規制されている。例えばペダルを漕がなくても力行可能である車種は電動アシスト自転車の基準を満たさない。この種の所謂フル電チャリは日本においては電動モペッドの一種として扱われる。