リベリオン
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『リベリオン』(原題EQUILIBRIUM)は2002年、アメリカのブルー・チューリップ製作、カート・ウィマー監督、クリスチャン・ベール主演のSF映画。日本での劇場公開は2003年3月29日。
斬新で他に類を見ないアクションで一部に熱狂的なファンを持つ。劇場公開時、日本ではほとんど宣伝もされず1ヵ月で打ち切りと散々な結果に終わったが、DVD化の際に口コミで評判が広がり、一躍「知る人ぞ知る」佳作として知られるようになる。ちなみに本国での宣伝コピーは「Forget Matrix!(『マトリックス』など忘れてしまえ!)」。主要人物の服装やアクションの見せ方、現実感の曖昧な世界観など、1999年公開の傑作『マトリックス』と雰囲気的に類似した部分は多く、日本語吹き替えではそれを敢えて汲んでか『マトリックス』のネオの声と同じ小山力也が主人公ジョン・プレストンの声を務める。
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[編集] 作品概要
本作品には「ガン=カタ」という、二挺拳銃を用いる架空の武術が登場する。東洋武術や素早い手技主体の軍隊格闘術に銃を付け加えたようなもので、演武のような独特の動きで二挺拳銃を自在に操り、無数の「型」の組み合わせで戦う。構えや残心がある。「統計的に敵の射線を避け、こちらの弾丸を確実に撃ちこむための動きである」といった解説は荒唐無稽以外の何物でもないが、カンフーアクションのように猛スピードで敵を撃ち殺していくアクションはきわめて斬新で、若干、陳腐と言われても仕方が無い世界観を補って余りあるポテンシャルがあった。ジョン・ウー以後、ひさびさにガンアクションに新たな可能性を提示した作品。
なお邦題の"REBELLION"は製作時の仮題であり、反乱や謀反を意味し、公開時の"Equilibrium"が意味する均衡や落ち着きという意味からは、大きく視点が変わっている。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] ストーリー
第三次世界大戦後の世界に出現したディストピア的な都市国家・リブリア。テトラグラマトン党に支配され、ファーザーという独裁者が君臨するリブリアは、感情を持つことを禁じられた社会だった。
そこでは感情は争いや戦争の元凶として禁忌され、戦前の音楽や書籍、絵画など感情を動かすものは全て「EC-10」と呼ばれる「感情的なコンテンツ」として禁止され、人々は「イクイリブリウム」という政府機関が生産・配給する感情抑制薬・プロジアムの服用を義務付けられていた。当局に隠れて薬の服用を拒み、美術品などEC-10物品を愛好する反乱者には"ガン=カタ"と呼ばれる術を極めた"グラマトン・クラリック"という特殊部隊員が圧倒的戦闘力でこれを殲滅していた。
ちなみにガン=カタとは膨大な銃撃戦のデータ分析から生まれた戦法。敵対者が幾何学的な配置であるなら、その動きは統計から予見できる。ガン=カタでは銃を最大限に活用し、もっとも効果的な攻撃位置に立つことで、最大のダメージを最大の数の敵に与えることができる。そして敵の銃撃はデータから位置と弾道を予測し回避することができ、ガン=カタを修得すれば攻撃能力は少なくとも120%向上する上、例え攻撃能力の向上がその半分程度でも、ガン=カタさえ修得していれば敵にとっては脅威の存在となるという。
クラリックの中でも有数の実力者で、第1級クラリックであるジョン・プレストン(クリスチャン・ベール)は、同僚のクラリック、パートリッジ(ショーン・ビーン)がひそかにイェーツの詩を愛読していたことを突き止め、彼を処刑する。しかし、その一件から彼の心は揺らぎ始める。ある日彼はプロジアムのカプセルを割ってしまい、服用しないまま新たな同僚のクラリック・ブラント(テイ・ディグス)とともに仕事に出る。その日、彼はプロジアムを服用しない女性、メアリー・オブライエン(エミリー・ワトソン)の尋問中に逆に動揺させられてしまう。彼女の姿にプレストンは、かつて感情に関する罪で処刑された妻を思い出し始めた。そのまま反乱者鎮圧に出動した廃墟でベートーベンの第九交響曲を聴いて涙したこと、翌朝リブリアの朝焼けで光る摩天楼を見たことなどから感情を覚えてしまいプロジアムの服用もこっそりとやめた彼は、自分の護っている社会に対する疑念を深めていく。
郊外の廃墟で、ペットとしてEC-10となりうる犬の処刑を拒んだ彼はガン=カタで警官たちを殺戮してしまい、リブリア政府から違反者として疑われるが、ブラントに罪を着せることで難を逃れる。彼はユルゲン(ウイリアム・フィッチナー)率いる地下組織に身を寄せたのちファーザーを倒すため、ユルゲンの作戦でわざと自分たちをプレストンに捕らえさせ、その功績で取り締まりの第1級の功労者となったプレストンはファーザーに謁見できる特権を与えられる。
しかし、実は既にファーザーは何年も前に死んでおり、彼に代わる影の最高権力者、テトラグラマトン党の第3評議会副総裁デュポンとブラントに逆にはめられてしまう。が、それにより湧き出した怒りを瞬時に押さえ込み、無心となることでパワーアップし、決戦に赴く。地下組織の反乱が発生する中、彼は大勢のフルフェイス警官隊を瞬く間に殲滅し、デュポンとブラントが待つ謁見の間に辿り着く。謁見の間は中世の宮殿を思わせるような装飾が施されていて、ブラントやデュポンは感情を有していた。
しかし、既に無心の境地にあるプレストンは全く意に介さず、ガン=カタを応用した剣術で近衛隊を秒殺し、さらには感情の不安定が原因で模擬戦にて引き分けたブラントをも瞬殺。ついにデュポンと対峙し、零距離による弾道のそらし合いで勝利。デュポンは「私は生きてる・・・・呼吸もしてる・・・・感情もある・・・なのにお前は私を撃つのか?殺せば満足なのか・・・?」と、半ば命乞いのようなことを言うがプレストンはメアリーの死の瞬間を思い出し「死んで償え!」と叫び銃の引き金を引いた。ついにデュポンを倒し独裁体制に幕を引く役目を果たしのだった。
因みに息子のロビー、娘のリサらは母・イリアナ逮捕後からプロジアムの投与を止めていた。当初プレストンは、自宅に帰ってもクラリック候補生で訓練中の息子・ロビーにプロジアムのカプセルを誤って割ってしまった所を見られ、挙句はすぐに補充すべきと注意されるなど自宅さえもある意味で監視された空間であり、プレストンは気が抜けなかった。しかし、実はロビーは母の逮捕後に薬を絶っており、すべて父の考えを知るのが自分の任務であるとの確信から始まった自由を得るための演技であった。
[編集] キャスト
- ジョン・プレストン/クラリック:クリスチャン・ベール(日本語吹き替え:小山力也)
- メアリー・オブライエン:エミリー・ワトソン(日本語吹き替え:田中敦子)
- ブラント/クラリック:テイ・ディグス(日本語吹き替え:楠大典)
- 副総裁デュポント:アンガス・マクファーデン(日本語吹き替え:山路和弘)
- パートリッジ:ショーン・ビーン
- ユルゲン:ウィリアム・フィクトナー
- ファーザー:ショーン・パートウィー
- ファーザーの代理人:デヴィッド・ヘミングス
- ロビー・プレストン:マシュー・ハーバー
- シーマス:ドミニク・パーセル
- プレストンの妻:マリア・ピア・カルツォネ
- リサ・プレストン:エミリー・ジーベルト
- ビビアナ・プレストン:アレクサ・サマー
- オフィサー:クリスチャン・カーマン
[編集] スタッフ
- 監督・脚本:カート・ウィマー
- 製作:ヤン・デ・ボン、ルーカス・フォスター
- 撮影:ディオン・ビーブ
- 編集:トム・ロルフ
- 音楽:クラウス・バデルト
- 共同製作:スー・バーデン=パウエル
- 製作補:ニノン・タンテット
- プロダクションデザイン:ウルフ・クローガー
- 衣装デザイン:ジョセフ・ポロ
- 視覚効果スーパーバイザー:ティム・マクガバン
- 特殊効果スーパーバイザー:ユーリ・ネフゼル
- スタントコーディネート/格闘シーン演出:ジム・ビッカーズ
- スタントコーディネート助手:マイク・スミス、ブラッド・ボビー
[編集] 外部リンク
カテゴリ: アメリカ合衆国の映画作品 | SF映画 | 2002年の映画 | ディストピア