三河物語
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三河物語(みかわものがたり)は大久保忠教(大久保彦左衛門)によって書かれ、徳川氏と大久保氏の歴史と功績を交えて武士の生き方を子孫に残した家訓書である。三巻からなり、上巻と中巻では徳川の世になるまでの数々の戦の記録が、下巻では太平の世となってからの忠教の経験談や考え方などが記されている。
本来「門外不出」とされ、公開するつもりもなく子孫だけに記されたため、逆に忠教の不満や意見など、思いがそのまま残されている。忠教の思いとは裏腹に、幸か不幸か写本として出回り、人気になったと伝えられている。 もっとも、下巻の巻末には「この本を皆が読まれた時、(私が)我が家のことのみを考えて、依怙贔屓えこひいきを目的として書いたものだとは思わないで欲しい」といった趣旨の、読み手に対する言葉が記されており、門外不出と言いながらも読み手を意識した、忠教の人間くささが現れている文章であるとも言える。
内容的には徳川びいきが目立つものの、歴史的な事実が数多く記されており、史書としても高い価値をもっている。また、珍しい仮名混じりの、独特の表記・文体で記されており、この時代の口語体を現代に伝える貴重な資料でもある。徳川家康の出自(新田義貞の子孫ではなく旅回りの勧進坊主の子孫であること)についても遠慮なく事実を記している。