中皮腫
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中皮腫(ちゅうひしゅ)とは、中皮細胞由来の腫瘍の総称である。悪性のもの、良性のものの双方がある。発生場所は、胸膜が多く、他に腹膜、心膜などがあり、それぞれ胸膜中皮腫、腹膜中皮腫、心膜中皮腫という。
中皮腫はアスベスト(石綿)との関連で論じられることが多い。この場合の中皮腫は、ほとんどが悪性胸膜中皮腫のことである。
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[編集] 悪性胸膜中皮腫
[編集] 定義
肺や縦隔を覆っている胸膜の中皮細胞に由来する悪性腫瘍である。
(肺がんの一種と説明する人がいるが正確ではない。肺ではなく胸膜にできるものである。)
[編集] 症状
初期は無症状。進行すると呼吸困難、胸痛、胸水など。
[編集] 検査、診断
[編集] 原因
ほとんどの場合、アスベスト被曝が原因とされ、被曝から発病までの期間は、一般的に30~40年くらいといわれる。ただし、具体的な発生機序は判明しておらず、今後の研究が待たれる。
アスベスト被曝は職業上のものが圧倒的である。しかし、アスベストを取り扱う事業所の近隣住民や、アスベストを取り扱う労働者の家族(労働者の衣服に付着したアスベスト被曝と推測される)にも患者が出ており、これらについてもアスベストとの関連が強く疑われる。
しかしながら(ごく少数ではあるが)アスベスト被曝の可能性が考えにくい群にも悪性中皮腫が認められることがあり、アスベストだけが単一の原因でないことが推測される。
アスベスト被曝と喫煙のリスクを併せ持つ人の、肺ガンの罹患率が数倍~50倍になることが指摘されているが中皮種と喫煙の関連はほとんどないと言われている。
[編集] 治療方法
頻度の少ない腫瘍であるから治療方法は確立しているとは言えないが以下のような方法がある。しかし、一般的には予後は不良である。
- 初期の場合は胸膜と肺の摘出。
- あまり奏効する薬剤は無いとされていたが、悪性胸膜中皮腫治療薬としてアメリカで2004年、日本では2007年1月にペメトレキセド(商品名アリムタ®)が承認され、シスプラチンとの併用である程度の効果をあげている。
- 姑息的治療
- 疼痛緩和、胸水のコントロールなど。
[編集] 悪性腹膜中皮腫
[編集] 定義
大部分の消化器や肝臓などを覆う腹膜の中皮細胞に由来する悪性腫瘍である。悪性中皮腫の25~30%を占める。
[編集] 症状
早期は無症状。進行すると腹部膨満、腹痛、食欲不振、悪心・嘔吐、腹水など。
末期では腫瘍が腸管に癒着し、腹腔内臓器が一塊となる。
[編集] 検査、診断
- 腹部CT、MRI
- 腹水の細胞診
- 組織検査
[編集] 原因
悪性胸膜中皮腫のそれと同一である。
[編集] 治療方法
- 外科手術
- 化学療法
- 放射線療法(単独では効果が薄いため、化学療法と併用される)
[編集] 予後
臓器転移を起こすことはほとんどないものの、診断時にすでに広範囲に進展し、根治手術が不可能であることが多い。予後はきわめて不良で、1年生存率が50%、2年生存率が20%である。