喫煙
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
喫煙(きつえん)とは、植物を乾燥・発酵などの工程を経て加工した物に火をつけて、その煙を吸引する行為である。ここでは主にタバコの喫煙について記述する。
目次 |
概要
古くからアメリカ先住民の間では使用されていたが、ヨーロッパ人による新大陸発見後、100年間という15~16世紀当時としては例外的に急速な期間に全世界に広まった。そのため、世界で「tobacco」「tabaco」などとほぼ同じ名前がついている。近年では健康被害が啓蒙されたことから喫煙率は概ね低下しており、社会的に分煙または受動喫煙防止の運動も見られる。
タバコは中枢神経作動薬であるニコチンを含むが、ニコチンには明らかな依存性があることが知られている。例えば動物実験において、レバーを押すことでニコチンを静脈内投与するような仕組みを作ると強化行動が起こる[1]。喫煙の依存性は、喫煙者のうち5割以上の者が禁煙の失敗を経験しており[2]、禁煙の成功率は5~10%程度である[3]というデータからも示されている。また、ニコチンの中断により離脱症状を生じるが、これはニコチンの投与によって軽減する。
タバコの誤飲や大量摂取により、ニコチンの急性中毒を起こし、場合によっては死亡することもあるため、扱いには注意を要する。詳しくは灰皿・タバコの誤食によるニコチン中毒を参照。
タバコの煙には、ニコチン以外にも活性酸素や数千種類の科学物質といった有害物質が含まれ、その長期的な影響が医学分野で広く研究されている。各種疾病との因果関係が疫学的な調査や動物実験によって指摘されており、「タバコは疾病リスクを高める」と認識されている。
歴史
アメリカ大陸から全世界への伝播
パイプや葉巻きタバコによるタバコの喫煙は、ヨーロッパの探検家が到達する前から、多くのアメリカ先住民の間では一般的なものであった。およそ1500年前のマヤ文明における美術作品にも喫煙の習慣が描かれている。マヤ人たちはタバコを万能の解毒剤として用い、また、その効用が魔法的な力を持つと信じ、生贄を捧げる儀式、占い、魔除けに使っていたことでも知られる。
1492年10月12日、クリストファー・コロンブスは乾燥したタバコの葉をアラワク族から与えられたが、興味を示さずうち捨ててしまった。その後ロドリゴ・デ・ヘレス (Rodrigo de Jerez) とルイス・デ・トレス (Luis de Torres) が喫煙を目撃した最初のヨーロッパ人となり、ヘレスがアメリカ州の外で喫煙した最初の人物として記録されている。16世紀には喫煙の習慣は主に船乗りの間で一般的なものであった。1560年代にジョン・ホーキンス (John Hawkins) の船員によってイングランドにもたらされたが、1580年代に至るまで大きな影響を与えることはなかった。イングランドでは1820年代後期から広く浸透し始めた。1828年、スペインで紙巻きタバコ(シガレット)が登場し、一定の商業的な成功を収めたが、20世紀初頭に安価な機械製造法が普遍化されると、爆発的に喫煙人口が増加した。
第一次世界大戦の間、タバコ製品は典型的な軍事補給物資の一つであった。戦後紙巻きタバコを用いた喫煙は魅力的で気楽な生活様式の一部として宣伝され、女性の喫煙も社会的に受け入れられ始めた。
健康被害とタバコ規制
1930年代、ナチスの医療および軍事指導者たちはタバコが健康に害を及ぼすのではないかという懸念を持ち始め、麾下の科学者がそれらの関連を初めて明らかにした。アメリカ合衆国では1938年ごろ生物学者レイモンド・パール (Raymond Pearl) がタバコは健康に悪影響を及ぼすことを証明した。1950年代から1960年代の間に医療界や各国政府、およびリーダーズ・ダイジェスト誌はそれがいかに公衆衛生に害を及ぼすかを示すことによって喫煙率を減らすキャンペーンを始めた。近年、世界の多くの地域では喫煙量が劇的に減少しているが、全世界でのタバコの製造はいまだ増加しており、アジアの国々での喫煙率が比較的高いままである傾向にある。
また、かつては喫煙についての制限はかなり緩く、職場、家庭、旅客機や列車・バスなど公共の場などにおける喫煙が許容されていたため、当時は非喫煙者は通常の生活を営むだけで受動喫煙を避けられない状況であった。しかし1970年代より世界的に喫煙に関する健康への悪影響が知られるようになり、禁煙活動や嫌煙(分煙とも)活動が推進され、公共の場などにおける分煙の動きも進んでいる。また、都市部では防災上の理由から1980年代より喫煙可能なスペースが制限され、さらに公共交通機関での喫煙行為を全面的に制限するなどの動きも見られており、喫煙習慣への依存度の高い向きからは反発の声も漏れる。
日本における歴史
日本では明治時代に入り、それまでのキセルによる喫煙に代わり紙巻タバコが庶民の間に普及した。当初日本には2社のタバコ会社が存在していたが、日清戦争開始後に財政難に陥った国により 葉たばこ専売法が1898年に制定され、タバコは専売化された。当時、タバコによる税収は国税において大きな割合を占めており(1945年には、タバコによる税収は国税の20%をも占めていたという)、日清・日露戦争などの戦費調達のための重要な財源であった。
第二次大戦後も、1985年まで日本専売公社によるたばこの専売が続いた。1980年時点では、輸入たばこには90%の関税がかけられ、国内市場における輸入たばこのシェアは1.5%未満に過ぎず、海外たばこ企業が日本国内でテレビ・雑誌・看板などの宣伝活動や市場調査を行ったり販売網を築くことはできなかった。しかし、1980年の米国 フィリップ・モリス社の5ヵ年計画において、日本に対し市場を開放するよう圧力をかけることが計画され[4]、1982年、米国通商代表部(USTR)は日本政府に対し、関税の90%から20%への引き下げ、海外企業の宣伝活動や市場調査の許可を求め交渉した(経済制裁の脅しも持ち出されたという[5])。1985年、日本専売公社は日本たばこ産業に民営化され、1987年には米国タバコへの関税は撤廃された。結果として、米国からのたばこ輸入本数は1986年に99億本、2002年には780億本へと増加し、米国のたばこ輸出の61%を占めるまでになった[6]。また、日本たばこ産業は民営化されたとは言え、財務省が過半数の株を保有している。
日本でも、受動喫煙被害防止の流れを受けて、健康増進法第25条が制定され、さらに世界的には公衆衛生分野における初めての多数国間条約として2005年2月27日に「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約(たばこ規制枠組条約)」が発効された。それ以前には防災上のものによる以外では余り明確な分煙・禁煙といった動きも少なかった。特にオフィスの禁煙は、健康上の理由というよりもOA化による機材保護の理由付けの方が強く、職場環境での分煙が始められたのは1990年代に入ってからのことで、一般オフィスで明確な分煙化が進められるようになったのは2000年代に入ってからである(嫌煙権、 喫煙規制や禁煙に関する動き参照)。
原材料と煙の成分
詳細はタバコを参照。
タバコはナス科 Nicotiana 属の一年草で、亜熱帯性の植物である。強健性、葉の産出力、病気に対する抵抗性、加工した場合の香りなどの違いにより、約100の品種が栽培されている。キューバのハバナタバコや、アメリカのホワイトバーレーといった品種が代表的である。
タバコの種子は25℃の気温、適切な湿度と太陽光によって発芽する。生育条件が適切である場合、種によって異なるが茎の高さ50cmから250cmまで成長する。茎は太く最大5cmに達する。葉は30枚から40枚が着生し、このうち、葉タバコとして採取するのは約6割である。葉の長さは20cmから60cm、幅は30cm程度で、特有の臭気を帯びる。タバコの花は茎の先端部分に群生し、形状は漏斗ににており、色は白や黄色のものが多い。
タバコの生産は、FAOの統計によれば、首位の中国が239万トンで世界の約38%を占める。2位はブラジルで65万トン (10%)、3位はインドで58万トン (9%)、4位にアメリカ、5位にジンバブエと続く。タバコの生産量は世界的に減少しており、2002年の生産量は全世界で635万トンと、10年前に比べて約100万トンも減少している。
タバコ煙の成分
タバコの煙に含まれる化学物質は3800種ほどで、そのうち約200種は有害物質とされ、動物にがんを作るものはベンゾピレン(ベンツピレン)をはじめとする43種類。
主なタバコ煙の成分:
主な発癌物質:
- ベンゾピレン
- ジメチルニトロソアミン、メチルエチルニトロソアミン、ジエチルニトロソアミン、N-ニトロソノルニコチン、ニトロソピロリジン
- 4-(N-メチル-N-ニトロソアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン
- キノリン、メチルキノリン類
- ヒドラジン、2-ナフチルアミン、4-アミノビフェニル、o-トルイジン
方法と種類
「葉巻きタバコ」と「刻みタバコ」の2種に大別される。葉巻きタバコはタバコの葉を刻まずに丸めて吸うもので、刻みタバコをタバコの葉で巻いたものも存在する。刻みタバコはその形態によって、さらにいくつかに分類される。
葉巻タバコ
- 詳細は葉巻きタバコを参照
葉巻きタバコはもっとも原始的なタバコの形態であり、乾燥し発酵したタバコの葉を巻いて作られている、発祥はメソ・アメリカ文明からと言われており古くから貿易品として利用されてきた。
種類は大きく分けて湿度管理の必要なプレミアムシガーと管理の必要のないドライシガーに別れている。主な産地はキューバ・ドミニカ・ホンジュラス等喫煙時間はプレミアムシガーで30分から1時間前後。ドライシガーは15分から30分前後である。ただしシガレットとは違って、一度に吸いきらずに途中で火が自然に消えるに任せ、後で吸い直すこともしばしば行われる。
日本においては、喫煙時間の長さから一部の裕福層や文化人が嗜むイメージがあるものの、その趣味性や文化性が見直され1990年代のシガー(葉巻)ブームからシガーバーの普及が進み接する機会が増えている。
刻みタバコ
刻んだタバコを、
- 紙に巻いて吸うもの
- 器具に詰めて吸うもの
に分かれる。
紙巻きタバコ
一般にタバコという場合、これを指す。シガレットとも呼ばれる。形状は刻みタバコを紙で筒状に巻いたもので、直径は約6mm、長さは6cmほど。一本あたり約0.7gの葉が使われる。包み紙はシガレットペーパーと呼ばれる特別な紙である。
元来、両切りと呼ばれるフィルタの無いものしかなかったが、ロウ引きの吸い口を経て、現在では吸い口にニコチン、タールなどを吸収するフィルターがついたものが主流となっている。このフィルターには主にアセテート繊維が利用されており、日本たばこ産業の製品では日本フィルター工業が生産、活性炭を加えたチャコールフィルターがよく使われる。
また日本では外国産の紙巻きタバコは、俗語として「洋モク」と呼ばれることがあるものの、日本たばこが国内の販売代理店を行っている銘柄も多い。
一本あたりの平均的な燃焼時間は3–5分程度で、概ね半分から2/3程度吸ったら火を消して、吸殻として捨てる。このため一部の倹約喫煙家では吸殻の残った部分を惜しむ人も見られる。かつて日本が貧しかった時代には、この吸殻を惜しんで吸う人も見られた。ただし一度吸った紙巻タバコは風味が悪い。
手巻きタバコ
タバコに対し非常に高額な税金が課されている国々(主にヨーロッパ)では、刻みたばこ(いわゆるシャグタバコ)とシガレットペーパーを別々に購入し、自分で手巻きして喫煙する方法も一般的である。街のタバコ屋では一般に見られる20本詰めの紙巻きタバコパッケージのほか、刻みタバコとシガレットペーパーが販売されているケースがほとんどである(日本でも多くの喫煙具専門店では同様のものが販売されている)。自分で手巻きした場合と既製品の紙巻きタバコを購入した場合、自分で手巻きしなくてはならない手間はあるものの、より「経済的」に喫煙することができるため、広く普及している。自分の好みの刻みタバコとシガレットペーパーの組み合わせを楽しむことができるのも人気の要因の一つであろう。
手巻き方法は、シガレットペーパーを一枚取りだし、折り目に刻みタバコを摘んで並べる。舌でシガレットペーパーの糊付け部分を湿らせて筒状に丸める。好みに応じてフィルターを吸引口に装着したり、添加物を加えることもある。あとは紙巻きタバコと同様、点火して喫煙する。
なお、後述の「喫煙のリスク」に関する警告文は、刻みタバコのパッケージにも同様に記載がある。
パイプ
- 詳細はパイプ (タバコ)を参照
主にアメリカやヨーロッパ等で使われる喫煙具。刻みタバコと香料を加えたものを詰めて吸う。欧州では19世紀ごろまでは、労働者等の大衆の喫煙方法とされていた。
フィルタが存在せず煙路が長いため煙温も低く、紙巻きに比べタバコを味わうのに向いている。落ち着いて吸わないと途中で火が消えてしまうので、喫煙という行為を時間を掛けて楽しむ喫煙具と言える。
葉の分量は概ね、紙巻きタバコ3–4本程度。ただし紙巻きタバコと違って、吸った煙は飲み込まず、口腔内でふかすようにして喫煙する。このため、口腔粘膜からニコチンを摂取することになり、紙巻きタバコよりも効率良く、多くのニコチンを吸収することになる。結果として、パイプを1時間程度掛けて一服することにより、紙巻きタバコ10本程度をチェーンスモーキングする程の充足感が得られ、場合によっては非常に経済的な喫煙方法であると言える。途中で吸うのを止めるとパイプの中の火は酸欠で勝手に消えてしまうため、時間を空けて後で再点火して吸うことも可能である。
銘柄によってタバコ本来の葉の味から、菓子のような甘い風味まで味わえる物まであり、その喫煙スタイルは他の喫煙方法には無い非常に幅広い選択肢を持つ。
水タバコ
- 詳細は水タバコを参照
水パイプ、水キセル、シーシャとも呼ばれ、タバコ煙を水にくぐらせた後、極めて長い煙路を経て吸引する。タール分や一酸化炭素を主に、多くの煙に含まれる成分が水に溶けて省かれ、また煙温も低下するので、まろやかな味わいが得られるとされている。
トルコなどの中東方面で用いられる大型のもの(複数人数で吸うことができるようになっているものもある)から、中国などアジアで見られる小型のものまでさまざまあり、日本でも吹きガラス製の水パイプなどが存在している。当然ながら、この喫煙に使った後の廃水は非常に有害で、うっかり口にすると大変不味い。
また、吸い口が直接本体に付いているものは梵具(ぼんぐ)と呼ばれる。こちらは煙路は短い。どちらも実験器具の洗気瓶と同じ構造である。サイズによって燃焼時間はまちまちである。
煙管
- 詳細は煙管を参照
煙管(キセル)は日本、朝鮮、中国で見られる喫煙具。パイプをまねて作られた。雁首、羅宇(らお)、吸口から構成され、雁首の火皿に刻みタバコを詰め、着火する。
本来、一息で吸いつくすもので、燻らせるものではない。日本では江戸時代の喫煙は大半がキセルによるものだった。一般的に紙巻きやパイプタバコよりも、葉の刻み方が細かい。
一服あたりの平均燃焼時間は2–3分程度だが、使うタバコの葉の量は紙巻タバコの1/4程度に相当で、人によっては(本来の喫煙法ではないが)、紙巻きタバコの吸殻(俗にシケモクと呼ばれる)をこれに詰めて吸う人もいる。
その他
喫煙の他に、タバコを原材料とする製品によるニコチンの摂取方法として、噛みタバコ、嗅ぎタバコなどの方法が知られている。
健康への影響
喫煙の人体への健康影響に関してはWHOを含む幅広い機関において多数の研究がなされ、膨大な知見が蓄積している。近年は受動喫煙と喫煙リスクに対する研究活動も活発に行われている。
依存症
動物実験などの知見から、ニコチンは明らかな依存性を持つことが知られている。ニコチンは、神経伝達物質であるアセチルコリンに分子構造が類似し、ニコチン性アセチルコリン受容体(レセプターとも)に作用することで、中枢神経のドパミン神経系、特に脳内報酬系を活性化する。そのため、摂取後に一時的に快の感覚や覚醒作用を得られる。このような報酬系を介した薬理作用は、覚醒剤など依存性を有する他の薬物と共通である。
ニコチン摂取を続けると、ニコチン受容体がダウンレギュレーション(受容体の数が減ること)を起こし、ニコチンを外部から摂取しないと神経伝達が低下した状態となる。これがニコチン離脱症状であり、自覚的にはニコチンへの渇望が生じる。喫煙に対して依存性を示す者は「喫煙でリラックスできる」と表現するが、実際は離脱症状を喫煙によって一時的に緩和しているに過ぎない。依存症の項を参照。
また、ニコチンを過剰摂取した場合、嘔吐、下痢、縮瞳などの末梢神経症状や、妄想、幻覚および錯乱などの中枢神経症状を呈することもあり、場合によっては死亡することもある。
喫煙依存症は、精神医学において物質依存(依存症)の一種であると認められており、WHOによる疾病の分類基準である国際疾病分類第10版(ICD-10)にも「F17.2 タバコ使用<喫煙>による精神および行動の障害 依存症候群」として分類されている。日本においても、中央社会保険医療協議会により正式な疾患と認められ、2006年4月からニコチン依存症患者の病院での禁煙治療が保険適用となった。これにより禁煙治療における患者負担額が大幅に軽減される事となり、禁煙外来などが新設されるケースもある。
喫煙開始年齢が低いほど依存を形成しやすい傾向があると言われている。また、喫煙開始年齢が低いほど健康に与える影響や後年の発癌率も高いことが知られており、未成年の喫煙防止が大変重要である。
- この問題について、高橋裕子奈良女子大学教授が禁煙外来受診者を対象とした調査によると、喫煙開始から医学的治療なしには禁煙できないほどの依存が形成されるまでの平均期間が、成人(22-82歳)では20年以上であったのに対し、未成年者(10-18歳)では1年8か月であった。また禁煙に失敗する回数も、成人1.5回に対し未成年者2.3回と、より禁煙に失敗しやすい傾向がみられた。しかし、禁煙のために使用したニコチンパッドの平均枚数は成人で22枚、未成年者で3枚であり、未成年の方がニコチン置換療法の有効性が高く、未成年の喫煙に関しては教育的な指導・懲罰よりも適切な治療が必要だと指摘されている。
がん
タバコの煙には、発癌性を有する化学物質が含まれており、一方でニコチンには依存性が認められている。そのため、喫煙者は長期間にわたり繰り返し発癌性物質に曝露される行為を繰り返してしまう傾向が高い。
喫煙によって罹患率が増加することが示されている癌として、肺がん、喉頭がん、咽頭がん、食道がん、膀胱がんなどがある。
ヒトの身体を構成する細胞は、分裂・増殖を繰り返している。がんは、細胞分裂の際、特定の遺伝子のコピーにミスが起こることで生じる。喫煙の際には、煙によって気道や肺の炎症・破壊が生じ、修復のために細胞の増殖が促進される。また、タバコの煙に含まれる物質は遺伝子毒性を持つことが実験的に示されている。このように、細胞分裂が活発に行われ、しかも遺伝子のコピーミスが生じやすい環境におかれることで癌が発生しやすくなると考えられている。
日本における2003年の癌の統計によれば、20~24歳の男性が喫煙を開始して肺がんを発症して死亡する数は人口10万人あたり114.0人であり、非喫煙者は24.1人との統計が出されており、約5倍となる。全癌においては、10万人中喫煙者で571.5人非喫煙者で347人と、喫煙者において有意に癌罹患率が高いことが示されている[7]。
呼吸器疾患
喫煙により慢性気管支炎、肺気腫(これらの2つの疾患のことをCOPDとも言う)などが生じる。軽度のものを含めると、習慣的喫煙者のほぼ100%に気腫性変化が生じる。
ヒトの肺は、数億個の直径約0.1mmの肺胞で構成され、その総面積は約50~60m2であり、この肺胞を介して血液と空気中の二酸化炭素、酸素などのガス交換を行っている。肺胞がタバコの煙に曝露されることで肺胞壁の炎症、破壊が生じ、結果的にガス交換可能な面積が減少してしまう。これが肺気腫の状態である。通常の空気を呼吸するだけでは充分なガス交換を行えず、また肺胞の破壊によって生じた肺の空洞によって胸郭の動きが制限され、呼吸困難となる。重症になると運動制限や酸素吸入を要する状態になる。
喫煙は気管支喘息も悪化させることが知られている。
循環器疾患
タバコの煙に含まれる活性酸素は、血管内皮細胞を障害することが知られている。そのため、動脈硬化が促進され、狭心症、心筋梗塞、脳血栓 、脳塞栓、動脈硬化、動脈瘤、閉塞性血栓性血管炎(バージャー病)などのリスクが増加することが統計的に示されている。
妊娠中の喫煙による影響
妊娠中に能動喫煙あるいは受動喫煙すると、流産、早産の危険性が上昇し、出生後の乳幼児突然死症候群(SIDS)、中耳炎、呼吸器感染症や行動障害などの罹患率が増加する。また、口蓋裂、口唇裂[8]などの先天異常の危険性も高まる。
妊娠中に喫煙していた母親から出生した子供は知能指数(IQ)が低いという報告もいくつか見られる。たとえば3044人の男性を対象にしたデンマークの大規模な調査では、平均18.7歳時点でのIQと妊娠中の母親の喫煙状態が負の相関を示したという[9]。
また、妊娠中に母親が喫煙していた場合、子供も喫煙者になりやすい傾向がある。
免疫低下・感染症
喫煙は、免疫力を低下させ[10]、呼吸器を傷害するなどのメカニズムにより、感染症のリスクを増加させる。感染症は、癌などとならび現代でも死因の大きな割合を占める疾患である。
喫煙者は非喫煙者と比べて、肺炎球菌感染症のリスクが2~4倍高い。インフルエンザへの感染リスクも数倍高く、罹患した場合にも重症化しやすい。喫煙者はまた、肺結核の危険も高い[11]。また小児において、受動喫煙は中耳炎の危険因子である。
ヒトの気道粘膜の細胞は、粘液を分泌し線毛を運動させることで異物を排出する役割を果たしている。喫煙はこれらの細胞を破壊、あるいは機能を低下させるため、ウイルスなどの排出機能が低下する。
喫煙による免疫機能低下にニコチンが関与しているという説がある[12]。ニコチンで処置した白血球は、抗原に対して正常な反応を示さなくなることが実験的に示されている。また、ニコチンが脳に働き交感神経を興奮させノルアドレナリンの分泌を亢進させることで、間接的にT細胞の活性を低下させている可能性もある。
免疫低下は、感染症のみならず発癌にも関与する。これは免疫系が、遺伝子が変異した細胞を攻撃することで癌の発生を予防する働きを持っているためである。このことは、代表的な免疫低下疾患であるAIDS患者において子宮頸がんなどの発生が多いことからも伺える。喫煙者における発癌に、免疫低下も関与している可能性が指摘されている。
歯周病
喫煙者では歯周病罹患率が高く、歯の喪失本数も多いことが統計的に示されている。これは、タバコが歯肉の血管を収縮させることや、歯肉の炎症後の血管新生を遅らせること、炎症自体を起こしにくくさせることなどによると考えられている。海外では、たばこの容器には、進行した歯周病の写真と「タバコは歯周病を起こす」というメッセージが表示されている国もある。
歯周病は、口腔のみならず全身の動脈硬化を促進し、心筋梗塞や早産のリスクを高めることが知られており、喫煙による動脈硬化リスクを相乗的に高める可能性がある。
その他の疾患
- 勃起不全(ED):喫煙者は非喫煙者よりも2倍以上勃起不全の罹患率が高いという[13]。喫煙がEDを起こす仕組みは完全には明らかでないものの、血管内皮の傷害による陰茎海綿体の血管拡張障害によると推測されている。
- 認知症:かつては、「タバコには(ニコチンによって)アルツハイマー病の予防効果がある」とする報告もみられたが、その後の前向きコホート研究では、喫煙によってむしろ脳血管性痴呆やアルツハイマー病が増加することが示されている。また、認知症ではない高齢者17,610人を対象とした調査において、喫煙者の方が認知機能低下のペースが速いことが示されている[14]。
- クローン病
- 関節リウマチ
- 睡眠障害:ニコチンは覚醒作用を持つため、就寝前の喫煙は睡眠障害をきたす可能性がある。
- 創傷治癒の遅れ:喫煙者では、創傷部位の皮膚の回復が遅いことが知られており、手術後の回復日数も長いことが示されている。
- 美容上の問題:喫煙は皮膚のシワを増やすことが知られており、長期喫煙者はスモーカーズフェイスと呼ばれる独特な顔貌を呈するといわれている。また、煙に含まれるヤニが歯に付着したり、歯周病を増やす(前述)ことにより、美容上の問題が生じやすい。
- スポーツなどへの影響:ニコチンは血管を収縮させ血流を減少させる。またタバコの煙に含まれる一酸化炭素は、酸素よりもヘモグロビンと結合しやすく、末梢への酸素供給能力を低下させる。そのため、スポーツ選手や楽器奏者、ダンサーなどには職業上有害である。多くのプロスポーツ選手は非喫煙者だが、以下のような例外もある
喫煙と文化
喫煙行為はヨーロッパ人によるアメリカ大陸発見後に急速に世界中に広まったため、様々な地域で並列進化的に多様な喫煙方法が発達している。また、煙草の銘柄は相当数に上る。多様な喫煙方法や銘柄などの「喫煙文化」に関心を抱く人もおり、趣味性の高いとみなされる喫煙方法には少なからぬ思い入れを持つ愛好者も存在し、喫煙具や煙草の銘柄のコレクターも存在する。この他、喫煙具関連のノベルティも少なからず存在しており、企業文化との接点も存在する。このように、喫煙には文化的な側面もみられる。
また、喫煙の害が取り沙汰される以前には、モータースポーツなどの世界において、煙草産業は重要なスポンサーの1つであった。
喫煙と社会
タバコは健康に有害であるほか、喫煙によって直接的ないし波及的に発生する社会的な問題もある。例えば、タバコによる税収は年間2兆円を超えるが、一方で医療費増加や火災による損失はそれを上回るという試算もある。また、タバコによる貧困の悪化なども問題となっている。
喫煙率
- 国別にみると、全人口および男性の喫煙率は、東アジアで高く北米やヨーロッパで低い。逆に、女性の喫煙率は東アジア諸国の方が低い傾向がある。WHOの資料(2002年)によると、中国 35.6(男66.9、女4.2)%、韓国 35.0(男65.1、女4.8)%に対し、スウェーデン 19.0(男19.0、女19.0)%、米国 23.6(男25.7、女21.5)%であった[15]。
- 日本での成人の喫煙率は1966年頃(男性83.7%、女性18.0%)をピークに、2006年では全体で26.3%(男性41.3%、女性12.4%)と減少傾向にある(JTの資料による)。特に60歳以上の男性の喫煙率は、ピーク時の約5分の2に低下している。しかし先進国と比較すると、日本の全人口の喫煙率はまだ高く、特に男性に関してはトップレベルである。一方、女性の喫煙率は欧米諸国の方が高い。
- 日本においては男性の喫煙率がかなり高いが、2004年以降、男性の喫煙率は低下し、逆に女性の喫煙率は緩やかに上昇する傾向が見られている。女性全体での喫煙率は、ここ30年来15%前後を保持しているが、近年20代女性の伸びが顕著である(2003年度調査では23.1%となっている)。
- 年齢層別にみると、30代の喫煙率が性別や時代に関わりなく高い傾向にある。
- 世界的に、学歴が低く、低所得、失業中などの人において喫煙率が高いことが多数の統計的研究によって裏付けられている。(#喫煙と貧困にて後述)
- 統合失調症などの精神疾患患者において喫煙率が高いことが知られている。米国の研究によると、統合失調症患者の喫煙率は、入院中81.5%、外来通院中68.4%であり、米国全体の平均喫煙率23%を大きく上回っていた[16]。背景として、健康管理能力の低さ、喫煙のリスクの理解力低下や精神症状によるストレスなどの要因のほか、ドパミン受容体やアセチルコリン受容体の異常といった生物学的メカニズムが関与しているという説もある。
- 国内たばこ販売数量は、1996年度の3483億本をピークに少しずつ減少しており、2005年度には2852億本(国産1895億本・外国産957億本)となっている(日本たばこ協会の資料による)。
- 日本における喫煙率低下の要因としては、煙害の啓蒙や、健康志向の普及、鉄道駅などの公共空間における禁煙区域の明確化(後述喫煙規制や禁煙に関する動きの節参照)と並んで、たばこ税の増税に伴う値上げの影響が挙げられる。
- 海外では一般的に、頻繁なたばこ税増税や、法律による(国によってはカフェやバー、レストランなど飲食店を含む)禁煙区域の設定、たばこパッケージに貼付する健康警告表示(国によっては実写の肺がん患者の肺を表示)など、喫煙率低下のための施策が行われている。
紙巻タバコの生産量
国際連合の統計資料 (United Nations Industrial Commodity Statistical Yearbook 2001) によると、2001年の全世界の紙巻タバコの生産本数は5兆4710億本である。葉タバコの最大生産国である中国が、紙巻タバコにおいてもシェア3割を超える最大の生産国となっている。
葉タバコの生産量と比較すると、アメリカ、ロシア、日本、北ヨーロッパ諸国が原料の輸入国であること、インドネシア、ギリシャ、トルコは農業生産と国内の加工業までが一貫していることが分かる。
- 中国 - 1兆7000億本 (31.1%)
- アメリカ - 5800億本 (10.6%)
- ロシア - 3740億本 (6.8%)
- 日本 - 2372億本 (4.3%)
- インドネシア - 2300億本 (4.2%)
- ドイツ
- トルコ
- イギリス
- オランダ
- ブラジル
喫煙による経済的損失
厚生労働省は「健康日本21」の中で、喫煙によって国民医療費の5%が超過医療費としてかさむことや、煙草関連疾患による労働力損失を含め、「社会全体では少なくとも4兆円以上の損失がある」としている。通常、喫煙による経済的損失とは以下の事項を含む。
たばこ税自体は、個人から国庫への金銭の移動なので、国全体で見れば利益でも損失でもない。
喫煙と貧困
喫煙は、世界の貧困問題と不可分である。世界的に、学歴が低く、低所得、失業中などの人において喫煙率が高いことが多数の統計的研究によって裏付けられている[17]。複数の研究によると、貧しい国の中には家計の約10%が喫煙のために費やされていることもある。そのため、少ない所得から食費・健康管理費・教育費などがさらに削られ、栄養不良・医療費増大・早死・識字率低下をもたらし、社会階層の固定化に寄与している(WHOによる)。
喫煙による死亡数
タバコは、世界で2番目に多い死因であり、10人に1人がタバコが原因で死亡(毎年500万人)している。現在喫煙している者のおよそ半数(約6億5千万人)が最終的にはタバコが原因で死亡するといわれている(以上、WHOによる)。
厚生労働省は、「健康日本21」の中で、「最新の疫学データに基づく推計では、たばこによる超過死亡数は、1995年には日本では9万5000人であり、全死亡数の12%を占めている」としている。
またタバコは、世界で最大の予防可能な死因である。
日本の特徴
日本のたばこ行政の特徴として、タバコ事業を管轄しているのが 厚生労働省 ではなく、財務省であるということが挙げられる。他の先進国においては、タバコに関する行政を行うのは、衛生や医薬品を管理する厚生労働省にあたる省庁である。また財務省は、日本唯一のタバコ製造メーカーである日本たばこ産業(JT)の筆頭株主たることが義務付けられている。すなわち、筆頭株主が行政も担当しているということになる。また、財務省官僚が退職後に日本たばこ産業に再就職(いわゆる天下り)することが過去にみられている。
タバコの容器に表示が義務付けられている、健康に関する警告表示(後述各国の警告表示)といった、公衆衛生的な管理にあたっているのも財務省である。諸外国と比べ、日本の警告表示は写真なども含まれず、文面も穏やかである。
また日本の特徴として、自動販売機によるタバコ販売が活発であることが上げられる。2004年現在、全国に約62万台の自動販売機が設置されており、実質的に未成年でもタバコが購入できる状況である。そのため1996年頃から、タバコ自動販売機を23時~翌朝5時まで停止させる自主規制が行われている。だが、自販機における深夜帯の売り上げは10%程度しかなく、たばこ業界が批判をかわすためのカムフラージュであるという指摘がある。また、たばこ業界は、2008年中に全てのたばこ自動販売機をICカード「タスポ」による年齢認証を行った上で販売する方式に切り替えると発表した。現在、この方式は鹿児島県種子島で「たばこカード」として2004年5月10日から先行的に試験導入されている。
その他の社会的弊害
- ごみとしてのタバコ
- 東京都千代田区では2002年11月から生活環境条例が施行され、区内路上禁煙地区での喫煙及びポイ捨てが禁止された。違反すると2万円以下の過料を徴収される。同様の条例は横浜市などでも制定されている。
- 札幌市では、吸い殻の投げ捨てに対して罰金1000円を課す『ポイ捨て防止条例』を導入したところ、歩き煙草をする人が9割近く減ったことが市の追跡調査でわかり、罰金が煙草のポイ捨て防止に効果のあることが明らかになった。
- なお、路面、側溝、水路等へのポイ捨て(包装パッケージ含む)そのものはもとより軽犯罪法で禁じられている。
- 悪臭源としてのタバコ
- たばこの煙にはアセトアルデヒドやアンモニアをはじめとする臭いの元となる成分が200種類以上含まれており、消臭剤・芳香剤市場では主な悪臭源のひとつに「たばこの臭い」が挙げられている。
- 煙にはタールが含まれているため、頭髪や衣服、エアコンのフィルターなどに吸着した臭いは取れにくく、タール分を媒介に雑菌が繁殖し、さらなる悪臭の源となる。
- 消臭対策を行っている喫煙者も多いが、(嗅覚疲労によって)たばこの臭いに無頓着なヘビースモーカーも少なくない。
- 火災とタバコ
- 平成15年版消防白書によると、建物火災の10.6%、林野火災の14.7%がタバコが原因であり、放火に次ぐ主な出火原因となっている。かつてはタバコが出火原因のトップであった。タバコ火災のうち57.8%が投げ捨て、18.7%が火源の転倒、落下(寝タバコなど)によるものである。
- また放火などの犯罪において、火種としてタバコや喫煙具は良く利用されていることから、可燃性の危険物を安易に販売することを疑問視する人も多い。
- 歩行喫煙による傷害
- 周囲の状況を考慮しない歩行喫煙は、周囲の者に煙を浴びせかけることで精神的苦痛を与え、また、目や喉に肉体的な苦痛を与える。とくに、喉の弱い者、乾燥した環境等にあっては、希望しない煙の吸引により傷害を負うことが少なくない。
- また、歩行喫煙のタバコの火が、他の歩行者等の人体、衣服等を焦がす等の問題も指摘されている。とくに、歩行喫煙のタバコは、小さな子供等の顔面近くの高さで前後に振られながら移動しており、これが子供に傷害を負わせることがある。
- 歩行喫煙による傷害行為は第三者が知覚しにくい面もあり、また歩行者同士であればそれ以降の接触もないことから、受傷した者はその被害を訴え出る手段が少ないのが現状である。JT(日本たばこ産業)では、喫煙のマナー向上の広告を、タバコ自動販売機や電車の中吊り広告等に掲示している。
- 電子機器に対しての喫煙の害
- マイクロソフト社はハードウェアの問題を最小限に抑える方法のひとつとして、コンピュータの周囲で喫煙しないことを薦めている。(外部リンク参照) タバコの煙は精密機器であるハードディスク等に対し特に悪影響がありその寿命を縮めるともいわれている。これは磁気記録ディスクの表面にある磁性体の溝がタバコの煙の粒子より大きく、この溝に煙がかかることで読み書きが不安定になる等としたもので、現在の極めて密封性の高いハードディスクに関しては、この限りではないと言われている。
嫌煙・嫌煙権
かつては、喫煙の健康への有害性も知られておらず、職場、家庭、航空機や電車・バスなど公共の場などにおける喫煙が許容されていた。当時は、非喫煙者は通常の生活を営むだけで受動喫煙を避けられない状況であった。そのような状況を改善するため、禁煙活動や、喫煙者から非喫煙者が迷惑を被らないようにする嫌煙(分煙とも)活動もが行われ、一定の成果をあげている。喫煙は明らかに健康に被害を与える行為であり、タバコの煙の臭いなどを好まない人も多いため、非喫煙者が通常の生活を行うだけで健康被害にあわないような配慮を求めるのは当然の権利と言える。
なお一部の人たち、特に喫煙者においては、「嫌」煙という語感と、喫煙行為を制限されることに対する反発からか、「嫌煙運動」という語から、喫煙行為や喫煙者を憎悪したり中傷したりする活動のことを想起するようである。そのような誤解を避けるためか、嫌煙権活動推進者は「嫌煙」という語の代わりに主に「弱煙」ないし「分煙」と言い換えることもある。(→嫌煙・嫌煙権)
喫煙に関する議論
喫煙は、文化の側面・日常的な側面・依存薬物の側面などを持つ。この行為に関しては、喫煙によってマナー違反を平気で仕出かす者が、喫煙に対する社会状況の悪化を招いていると見られている。その一方で、前出の嫌煙と「喫煙を憎悪する事」を混同する向きが、感情的な喫煙行為への攻撃をするケースもある。この喫煙者と非喫煙者の双方に含まれる問題行動をする人が、対話と理解を妨害する様子は、しばしば見られる所である。
未成年者の喫煙の禁止
「未成年者喫煙禁止法」第三条(2001年12月改正法施行)では、未成年者に対し、その者が喫煙するとわかっていながら行ったタバコの販売や、親権者などが未成年者の喫煙を知っていながら制止しなかった不作為に対して罰則規定が定められている(喫煙した未成年本人に対しては刑事罰はなく、行政処分としての喫煙具の没収も、手続きが定められていない)。詳細は同法項目参照。
喫煙推進に関する動き
喫煙推進の動きは、たばこ産業によるもの以外は多くない。
- 未成年の喫煙推進
タバコ会社が子供が喫煙するよう仕向けていることが、米国の複数の訴訟過程で出されたタバコ会社の内部資料によって明らかになった。例えばRJレイノルズ社は、14~18才の市場で成功するためのブランドを確立すべきで、彼らに積極的に売り込むべき、との方針を持っていた。
- たばこ産業による世論操作
英国の哲学者であるロジャー・スクルートンは、過去にたばこを擁護する内容の記事を新聞や雑誌に投稿していたが、実は日本たばこ産業(JT)から資金援助を受けていたことが2002年に暴露された。スクルートンは他に、「マクドナルドの製品の方が健康に悪いと印象づけるべきだ」「WHOの信頼性を疑わせるような記事をメディアに載せるべきだ」などの助言をJTに対して与えていた。
喫煙規制や禁煙に関する動き
世界的にみると、公共の場所・交通機関等では禁煙化が進んでいる。日本は先進諸国の中で最も喫煙率が高いが、21世紀初頭から禁煙に関する運動が活発化している。また喫煙による周囲への影響や防災上の理由もあり、企業内での禁煙化・分煙化も進んでいる。飲食店・商店では店内原則禁煙で、別に設けた喫煙所を提供したり、または空調によって喫煙場所からの煙が他に流れないようにするなどの工夫も見られる。
公共交通機関は最も早く禁煙が進んだ施設の一つである。
鉄道
※喫煙席も参照。
- JRの場合、普通列車はほぼ全て禁煙、特急などの優等列車でも禁煙車両の割合は増加している。JRの特急、新幹線は旧国鉄時代の慢性的な赤字の一部をタバコの税収(たばこ特別税)で補填された経緯もあり、喫煙者に対する一定の配慮を行っているが、緩慢ながら禁煙化は進みつつある。
- JR北海道は、2006年3月18日のダイヤ改正から道内完結便の全列車(青森に発着する急行「はまなす」含む)が全面禁煙となった。本州まで乗り入れる列車のうち、スーパー白鳥、北斗星1・2号は対象外とされたが、2005年9月から北斗星、カシオペアのロビー、デッキ等の灰皿は順次撤去され禁煙化されてきている。(スーパー)白鳥は、2007年3月18日のJR東日本の全面禁煙化に伴い、全車禁煙にされた。
- 東海道・山陽新幹線は16両中12両が禁煙車、また次世代のN700系は、一部のデッキに喫煙所を設け、それ以外の客室内は全て禁煙とする予定である。
- JR東日本は2005年12月のダイヤ改正で比較的乗車時間の短い成田エクスプレス、しおさいなど房総半島方面への特急列車と、長野新幹線を全面禁煙とした。また、2007年3月18日以降、上越新幹線・東北新幹線をはじめ在来線特急列車も一部の他社直通・寝台特急以外は全車禁煙化された。
- JR東海・JR西日本・JR四国は、在来線特急列車の禁煙化には消極的である。ただし、JR西日本では2007年3月18日より比較的短距離の特急列車(主に「北近畿ビッグXネットワーク」を構成する列車)については、全面禁煙化された。
- JR九州の九州新幹線は、営業開始から全車禁煙である。また2007年3月18日以降、一部を除き全面禁煙化された。
- 私鉄や第三セクター鉄道の列車でも、普通列車を始めとする追加料金の不要な列車は地方の一部を除き全て禁煙、追加料金の必要な優等列車でも禁煙車両の割合は増加している。小田急電鉄の新型ロマンスカー50000形電車「VSE」ではロマンスカーカフェ(車内売店)の一部分にある喫煙コーナーを除き、全面禁煙である。なお、2007年3月18日より全ての小田急ロマンスカーで全席禁煙となる。
- 鉄道駅構内でも以前はラッシュアワーを中心としていた「禁煙タイム」を全営業時間帯に拡大し、所定の喫煙コーナー(分煙化)以外ではタバコの喫煙が禁じられるようになった他、
タクシー室内
- 社団法人全国個人タクシー協会の資料によると、2005年3月31日現在の個人タクシー4万4527台のうち禁煙タクシーは1852台、法人タクシーのうち禁煙タクシーは同じく2005年3月31日現在で約3500台である。以前はタクシー内を禁煙にするかは許可制だったが、届出制に変わってから台数が増加している。
航空機客室内
- 1999年4月より、全日空と日本航空が国内便・国際便をすべて禁煙化し、日本の航空会社の航空機における禁煙化は完了した。
- 一般的に日本の空港は、海外と比較して分煙が徹底していないという指摘がある。
- 豪華な設備を提供するサービスの一環として、全席での喫煙が可能な便を2007年春より成田~デュッセルドルフ間に飛ばす計画を立てているスモーカーズ国際航空がある。
市街地における規制
- 千代田区が2002年10月から主要な道路を歩行喫煙禁止にする「安全で快適な千代田区の生活環境の整備に関する条例」を施行した。同様の条例が各地で施行されている。
- 静岡市では、2006年10月から、歩きたばこや公共の場所などでの喫煙を禁止する「静岡市路上喫煙による被害等の防止に関する条例」が施行された。
官庁・役所の禁煙化
- 中央官庁庁舎は官庁・役所の中で最も禁煙化が遅れているが、厚生労働省は06年4月より庁舎を全面禁煙化した。また、それ以外でも完全分煙化は各自治体レベルで少しずつだが進んでいる。
学校の禁煙化
- 文部科学省の調べによると、2005年4月1日現在の全国の国公私立の幼稚園・小中高特殊学校における禁煙状況は、敷地内全面禁煙が45.4%・校舎などの建物内禁煙が23.6%、分煙が26.3%となっている。学校での禁煙化の前は、休み時間や始業前・放課後に職員室の自席や控え室などでタバコを吸う教職員が多く、職員室に出向くと室内は紫煙が充満していたが、2003年5月の健康増進法施行(第25条:受動喫煙の防止)以降対策が一気に進んだ。
- しかし、大学など学生が喫煙する確率が高い場においては全くといっていいほど禁煙対策がなされていない場合も多く、完全に喫煙室が完備されていない学校などでは、教室内は禁煙とされていても、キャンパス内では喫煙可能という状態が多いために、未成年学生が先輩などに進められて喫煙するようになる確率は非常に高いといわれる。
自動車の灰皿
- 自動車業界では、灰皿は機能部品であり喫煙可能は自動車の機能の1つであるともされ、「灰皿の標準装備は喫煙する事ができる機能が標準装備されていると同義」であると考えられている。このため全車の灰皿をオプション扱いとする事は困難とし、高級車、大型車などには依然標準装備されているが、全般的に灰皿の存在感を消すインテリアが主流になっている。
- 女性向け軽自動車や小型車、ユニバーサルデザイン車を中心に、灰皿を標準装備しない(例えば小物入れなどに交換してある)自動車が増加している。こうした自動車には灰皿がオプションとして設定されている。また、据付ではなく標準装備のドリンクホルダー部分にオプションの灰皿を設置するタイプの車種も存在する。
広告の規制
タバコの広告は西欧では規制を受けるようになっている。F1などのモータースポーツにおいては大手タバコ会社がスポンサーになっている場合があるが、広告の規制を受けている国で開催される場合、ロゴの表示ができない。
メディアでのコマーシャルに関して
日本では、以前タバコのコマーシャル(広告)が放送、新聞、雑誌などのメディアで頻繁に行われていたが、青少年の喫煙を促すとともに健康への悪影響を懸念する意見が多くなったことから、段階を追ってコマーシャルを規制する動きが出ている。 まず業界の自主規制として、
- 1985年4月から特に未成年者が多く視聴すると想定される18時~21時の時間帯のテレビコマーシャル放送、並びに女性・少年向け(読者層の50%以上が未成年のもの)の広告掲載禁止。また未成年者に人気のあるタレント等をCMに起用してはならない
- 1987年女性が喫煙するシーンの使用禁止
- 1989年テレビコマーシャルの放送禁止時間を早朝5時からに拡大
- 1995年10月より週末(土曜、日曜)の放送媒体を使ってのコマーシャルを終日禁止。平日についても放送禁止時間帯を23時まで拡大。また学校の正門から100m以内の地域に屋外看板広告を掲出することを禁止
- 1998年4月、放送媒体でのタバコのCMを全面禁止
- 2002年6月少年向け雑誌の広告規制を読者層の25%以上が未成年のものに強化
- これまで自主規制だったテレビ・ラジオ・インターネットや映画上映前広告などでの広告の法的禁止
- 駅構内・電車やバス・タクシーなどの公共交通機関や、屋外看板における広告の禁止(ただし、たばこ販売店での広告・自動販売機に貼付する広告は残存)
- 新聞での広告の制限(1年間で1社当たり12回以内)
- 味のテスト用見本たばこ(街頭でのサンプリング)の配布は、成人のみが利用できるところに限る(かつては秋葉原駅前などで良く行われていた)
などが順次実施されている。
- 通信カラオケシステムの背景映像に、普通列車の車内で喫煙しているシーンが映し出された映像がかつて使用されていたが、普通列車全面禁煙化にともない、別の映像に差し替えられたケースがある。しかし、最近DAM等の機種で採用されている歌手本人出演映像で歌手が歩き煙草をしているシーンが映し出されたりしているケースがあり、カラオケの背景映像で喫煙シーン自体を自粛する傾向は未だあまり広がっていない。
- 2006年に入ると、日本では日本医師会が「たばこをやめましょう」のキャッチフレーズで、禁煙を呼びかけるテレビコマーシャルの放映を開始した。(ただし、「医師の中に多数の喫煙者 - ともすれば愛煙家が存在するため、非常に説得力に欠ける」との批判が少なくない)
- また、現在は規制を定めていなかったり、あるいは自主規制をしている各種イベントのスポンサー活動へのタバコの銘柄露出などの規制を強化する動きも検討されている。
- しかし、たばこ会社が喫煙マナーを訴える間接広告は規制されておらず、ニュース番組などでたばこに関する報道がほとんど行われない・たばこ産業に有利になるような報道がされるのは、これらの番組にたばこ会社がスポンサーとしてついているからだという有識者の意見がある。
各国の警告表示
日本
日本においてはタバコの広告や包装には、たばこ事業法第39条と、これに基づく財務省令(同法施行規則第36条の別表第一・第二)で規定されている
- 「喫煙は、あなたにとって肺がんの原因の一つとなります。疫学的な推計によると、喫煙者は肺がんにより死亡する危険性が非喫煙者に比べて約2倍から4倍高くなります。」
など8種類ある警告文のうち、別表第一・第二から各1種類ずつ、計2種類を、たばこ製品の包装の主要な2面へそれぞれ30%以上の面積を使って表示することが義務づけられている。
- 別表第一
- 喫煙は、あなたにとって肺がんの原因の一つとなります。疫学的な推計によると、喫煙者は肺がんにより死亡する危険性が非喫煙者に比べて約2倍から4倍高くなります。(詳細については、厚生労働省のホーム・ページwww.mhlw.go.jp/topics/tobacco/main.htmlをご参照ください。)
- 喫煙は、あなたにとって心筋梗塞の危険性を高めます。疫学的な推計によると、喫煙者は心筋梗塞により死亡する危険性が非喫煙者に比べて約1.7倍高くなります。(詳細については、厚生労働省のホーム・ページwww.mhlw.go.jp/topics/tobacco/main.htmlをご参照ください。)
- 喫煙は、あなたにとって脳卒中の危険性を高めます。疫学的な推計によると、喫煙者は脳卒中により死亡する危険性が非喫煙者に比べて約1.7倍高くなります。(詳細については、厚生労働省のホーム・ページwww.mhlw.go.jp/topics/tobacco/main.htmlをご参照ください。)
- 喫煙は、あなたにとって肺気腫を悪化させる危険性を高めます。(詳細については、厚生労働省のホーム・ページwww.mhlw.go.jp/topics/tobacco/main.htmlをご参照ください。)
- 別表第二
- 妊娠中の喫煙は、胎児の発育障害や早産の原因の一つとなります。疫学的な推計によると、たばこを吸う妊婦は、吸わない妊婦に比べ、低出生体重の危険性が約2倍、早産の危険性が約3倍高くなります。(詳細については、厚生労働省のホーム・ページwww.mhlw.go.jp/topics/tobacco/main.htmlをご参照ください。)
- たばこの煙は、あなたの周りの人、特に乳幼児、子供、お年寄りなどの健康に悪影響を及ぼします。喫煙の際には、周りの人の迷惑にならないように注意しましょう。
- 人により程度は異なりますが、ニコチンにより喫煙への依存が生じます。
- 未成年者の喫煙は、健康に対する悪影響やたばこへの依存をより強めます。周りの人から勧められても決して吸ってはいけません。
EU
極太ゴシック体で、パッケージの表の30%、裏の40%に以下の警告文。
- Smoking kills(喫煙はあなたを殺す)
- Smoking can cause a slow and painful death(喫煙は長く苦しい死を引き起こす)
- Smokers die younger (喫煙者は若死にする)
- Smoking clogs the arteries and causes heart attacks and strokes (喫煙は動脈を詰まらせ、心臓発作や脳卒中の原因となる)
- Tobacco smoke can harm your children(たばこの煙はあなたの子供を傷つける)
- Smoking causes fatal lung cancer(喫煙は致命的な肺ガンの原因となる)
- Smoke contains benzene, nitrosamines, formaldehyde and hydrogen cyanide.(タバコの煙はベンゼン、ニトロサミン、ホルムアルデヒド、青酸ガスを含む)」
カナダ
16種類。イラスト、写真付き。
- Where there's smoke, there's hydrogen cyanide (タバコ煙のあるところにシアン化水素(青酸ガス)がある)
- Children see, children do (子どもは大人を見て真似する)
- Each year, an equivalent of a small city dies from tobacco use (毎年タバコによって小都市の人口に匹敵する人が死亡する)
- Cigarettes causes strokes (タバコは卒中の原因になる)
オーストラリア
表の90%写真警告、裏の20%にも写真表示。
- Smoking causes blindness(喫煙は失明の原因となる)
- Smoking doubles your risk of stroke(喫煙は脳卒中の危険性を倍増する)
- Smoking clogs your arteries(喫煙はあなたの動脈を詰まらせる)
- Smoking causes mouth and throat cancer(喫煙は口腔ガン・咽頭ガンをまねく)
台湾
- 行政院衛生署警告: 吸菸有害健康
- 行政院衛生署警告: 孕婦吸菸易導致胎兒早產及體重不足
- 行政院衛生署警告:抽菸會導致肺癌﹑心臟病﹑氣腫及與懷孕有關的問題。
- 行政院衛生署警告:吸於害人害己
- 行政院衛生署警告:懷孕婦女吸菸可能傷害胎兒、導致早產及體重不足。
韓国
19歳未満喫煙禁止の文と、2005年より以下の警告文。
- 건강을 해치는 담배 그래도 피우시겠습니까?(健康を害するたばこ、それでも吸いますか?)
ブラジル
2001年12月より 正面全体に警告、裏面にタバコブランド名。イラスト、写真付き。
- 妊娠中の喫煙は未熟児・低体重児の原因となる
- 喫煙は口臭や歯の脱落をもたらし口腔ガンの原因になる
- 喫煙は心臓発作の原因となる
- この壊死はタバコ使用によって起こった
- 妊娠中の喫煙は胎児に害を与える
- 喫煙時あなたは砒素・ナフタリンなど鼠やゴキブリ用の駆除剤と同じものを吸入している
- 彼はタバコの犠牲者だ。喫煙は手足の切断にいたる血管の病気をまねく
ロシア
すべてのパッケージ書かれる警告文:
- Минздрав России предупреждает: курение вредит Вашему здоровью(ロシア厚生省の警告:喫煙は健康を害する)
補足として以下の警告文:
- Курение — причина раковых заболеваний(喫煙は癌の原因となる)
- Курение — причина смертельных заболеваний(喫煙は死に至る病気の原因となる)
- Оградите детей от табачного дыма(たばこの煙から子どもを守ってください)
- Курение табака вызывает никотиновую зависимость(ニコチンは喫煙への依存を形成する)
- Курение — причина заболеваний сердца(喫煙は心臓病を引き起こす)
日本以外の喫煙規制
- アジア
- 中国 - 2005年にたばこ規制枠組み条約を批准したが、それ以前はたばこに対する規制はほとんど皆無であった。路上喫煙、未成年者の喫煙に対しても何ら罰則はなく、広くそれらが行われているため、批准以降の動向が注目される。
- シンガポール - 喫煙に寛容なアジアでは例外的にレストラン、ホテルなど屋内のほとんどが禁煙。吸殻に限らずいわゆるポイ捨てをすると高額の罰金(場合によっては鞭打ち刑)を課されるため、事実上路上喫煙も不可能。公園などに灰皿があり、ここで吸っているらしい。
- 大韓民国 - 鉄道各線、地下鉄、バス、飛行機(国内線)はすべて禁煙で、高速列車「KTX」にも喫煙席の設定はない。駅についてはホームは全面禁煙。駅舎は喫煙室以外では全面禁煙。
- タイ - 空調の効いた公共的な建物(空港、駅、バスターミナル、レストラン、ショッピングセンター等)はすべて禁煙。鉄道、バスの車内も禁煙。
- ベトナム - 公共的な建物(空港、駅、バスターミナル等)は禁煙。
- ブータン - 国内全面禁煙を目指しており、2004年よりブータン国内におけるたばこ販売が一切禁止された。海外観光客のたばこ持ち込みは可能だが、ブータン国民が個人輸入・持ち込みをした場合は100%の関税が課される。
- アメリカ合衆国 - 州によって異なる。タバコメーカーに対する喫煙被害に関する訴訟は広く知られている。
- カナダ - 喫煙室を除く屋内の公共空間、交通機関が禁煙。
- ヨーロッパ - 国によって異なるが、非常に高額なたばこ税が課されていることが共通している。
- アイルランド共和国・スコットランド - レストラン、パブ、企業を含む屋内の公共スペースは全面禁煙。2007年からはイギリス全国で屋内の公共空間の喫煙が一律禁止。ホテルの客室、刑務所を除く。
- フランス - 2007年2月に空港や病院、学校、駅(プラットフォームを除く)などの公共空間における禁煙が定められ、違反者に対する罰金も設定された。飲食店における禁煙を定める法律も2007年末までに施行される予定である。喫煙に対し比較的寛大な国であり、路上で喫煙し、吸い殻を路上にポイ捨てする行為がほとんどの地域でみられる(路上が毎日頻繁に清掃されるため、ポイ捨てがあまり問題とならない)。さらに、飲食店ではカフェ文化が根強いため分煙や禁煙区域の設定はほとんど進んでおらず、喫煙席・禁煙席の区分けで分煙している店舗もあるが、ほとんどの飲食店では気休め程度に「ここは禁煙」と貼り紙がされている程度である。
備考
煙草・喫煙に関する様々な社会現象を取り上げる。
- 天皇、皇后が各地を訪問した際の関係者(警備の警察官など)や、皇居の清掃関係者などに対し、皇室が感謝品(一種のノベルティ)として配布されてきた「恩賜のたばこ」(菊のご紋章の入った特別仕様品)について、タバコを吸わない人(非喫煙者)への配慮などから、2006年末をもって菓子(金平糖の詰まったボンボニエール)への切り替えが行なわれることとなった。
- 世界禁煙デーの5月31日から1週間は日本では「禁煙週間」とされている。
関連項目
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外部リンク
- 厚生労働省 ~たばこと健康に関する情報ページ~
- 「子どもに無煙環境を」推進協議会
- 健康増進法第25条(受動喫煙対策義務)違反
- 職場喫煙問題連絡会
- 世界保健機構(WHO)煙草規制セクション
- ニューヨーク市煙草規制局
- イギリス医学雑誌社(BMJ)発行雑誌 Tobacco Control
- ASH - Action on Smoking and Health
- 禁煙医師連盟
- 「禁煙タクシー訴訟」を支援する会
- 財政制度等審議会 たばこ事業等事業部会(第20回)議事録
- <受動喫煙にさらされる人の20人に1人は受動喫煙によって死亡する>
- タバコは有害物質の缶詰 喫煙のスポーツへの影響 禁煙の効果
- 受動喫煙に関する基礎的研究
- 禁煙公報センター
- 「タバコ病辞典」アクセスガイド完全版
- 大人たばこ養成講座 - 日本たばこ産業提供によるマナー教育サイト