乾癬
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乾癬（かんせん、英psoriasis）とは慢性の皮膚角化疾患である。
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[編集] 分類
- 尋常性乾癬（じんじょうせいかんせん、psoriasis vulgaris ） - 尋常性とは「普通の、ありふれた」という意味から来ており、乾癬では最も患者数が多いとされる。
- 関節症性乾癬 (かんせつしょうせいかんせん)
- 膿疱性乾癬（のうほうせいかんせん）
- 滴状乾癬（てきじょうかんせん）
[編集] 尋常性乾癬
[編集] 主な症状
目立つ皮膚症状を伴う非感染性の自己免疫疾患であり、極めて難治性である。
赤い発疹ができ、赤い斑の上に白色の鱗屑（りんせつ。皮膚上皮の角質細胞が剥がれ落ちること）を見る。皮屑(ひせつ)とも云う。やがて病変部は周りの皮膚よりすこし盛り上がった状態に変化する。頭皮、膝、肘など外部からの刺激が強い部分に出来やすく、しかし眼球と口唇を除けば全身どこにでも発症する。爪の表面に発症した場合は変形して凹凸や穿孔、荒れになり、爪切りすら容易な作業ではなくなる。
他の皮膚疾患にくらべて痒みが少ない、また痒みを生じない症例が多いとされているが、症状の度合や病変部位、使用する薬剤の刺激などによって非常に多様である。
男女比では主に男性がやや多いとされ、30～40代での発症が多いとされているが、女性では10代と50～60代の二峰性の発症が多いとも言われている。
伝染することはなく命にかかわることも全くないとされているが、その症状が皮膚へ目に見える形で現れてしまい、また現代の医学では「一生の付き合い」とも言われる病気であるために、肉体的なダメージよりも精神的に大きなダメージを負う患者が非常に多い。
- 発症部位をジロジロみられる（顔に出ている場合も通行人から遠慮なくみつめられる）、それは何か？ と知らない人から訊ねられる、感染しないといっても信じない人がいる、他人と風呂に入れない、プールや海水浴も躊躇する、頻繁に周りを掃除しなければならない、治療を始めても寛解と増悪をくり返して治療意欲を下げる…等々その苦痛は患者でない人々の想像を絶するものである。
[編集] 原因
皮膚の表皮を作るスピードが通常の10倍速を上回り（正常皮膚の細胞周期は約457時間、対して病変部位は37.5時間と1/10以下。癌細胞の増殖を超える速度）、真皮の血管が肥大しつつ組織を炎症しながら、表皮が角化し剥離する入れ換わり周期（ターンオーバーと呼ばれる）が通常なら4週間のところ3～4日で完了し、どんどん表皮が増殖し角化が亢進している状態によって白いカサブタ状の皮疹を多く生じる。
内外のストレス、気候の変化、高脂肪摂取など生活環境で増悪するが、その原因はまだはっきり解明されていない。
白色人種系に多く、ゲノムワイド連鎖解析では、HLA class I近傍のほか、6番染色体上のPSORS1、17番染色体上のPSORS2をはじめとする複数の遺伝子座が候補遺伝子領域として報告がある。
白血球の一種、ヘルパーT細胞の増加がみられることがある。血液検査では白血球数値が恒常的に10000を超える例が見られるが、これが病気に起因するものか、病気の原因であるかは不明である。白血球数値の正常値は 3500-10000 程度。4000-9000 とする例もある。
日本では戦後に増加した病気（日本では認知度の低い病であるが、WHOではこの病気の世界的な患者数などから世界乾癬デーを定めている）であり、家族内に同様の病気の者がいる場合でも5%と決して多い数字ではない。ただし、近年になって、元々の体質的な素因に精神的、肉体的なストレスや紫外線不足、西洋系の食生活などが関係して発病していると考えられている。
[編集] 治療
いま治療法とされているものはすべて対症療法であり、難治性である。効くのか否か個人差があるため一つずつ長い試用期間を要し、また効いていた治療が効かなくなったりと、まず根気と努力が必要である。完治した症例もないわけではないが、再発も珍しくない。同じ病気の同じ患者であるケースですら、発症部位や経過によって症状が異なり、そして治療をやめて自然に寛解したり逆に増悪もする。
この付き合い難い症状ゆえ「わがままな病気」とも謂われる所以である。
治療の基本に、副腎皮質ステロイド外用剤がある。他にビタミンD3誘導体の外用剤(オキサロール軟膏、ボンアルファ ハイローション等)などが有効であるために初診時はこういった薬が処方されることが多い。最近は、ビタミンA誘導体（レチノイド）や免疫抑制剤などの内服療法の保険適用により治療の選択肢が増え、患者のQOLは向上している。生物製剤(Biologic)の研究がさかんに行われており、抗TNFαキメラ抗体インフリキシマブによる治療の可能性が示唆されている。(Lancet 2005;366:1367-74) また、光線療法で紫外線の増感剤であるメトキサレン（オクソラレン）を患部に塗り、紫外線をあてるPUVA療法、特定の紫外線波長を利用したナローバンドUVB療法も行われる。
- これらは皮膚の異常に亢進した代謝へ外部から命令を与えて抑えるものである。
外用療法が奏効しない場合や関節炎を合併した場合は、内服による治療が行われる。通常使用される副腎皮質ステロイドの内服薬は、尋常性乾癬においては膿胞性乾癬を誘発することがあるので推奨されない。ビタミンA誘導体の「エトレチナート」（チガソン）という薬剤は有効な治療薬である。この薬は催奇形性が確認されており、男性女性ともパートナーを含めて同意書の記入が義務づけられている。 エトレチナート以前には、同様にビタミンA誘導体である女性ホルモンの一種エストラジオールなどが使用されていた。 免疫抑制剤であるシクロスポリン（ネオーラル®）、メトトレキサート（メソトレキセート®）が使用される。この二剤の有効性は同等であるが、後者は日本での適応はないので、通常前者が使用される（後者も試用はされていると思われる）。また、関節リウマチ、クローン病などで劇的な効果をあげている分子標的薬、インフリキシマブ・エタネルセプトは臨床試験において尋常性乾癬に対してもすばらしい効果を示しているが、日本での適応はない。
関節リウマチなどでは日、時間の単位で劇的な改善効果を認めるが、乾癬においては数ヶ月間程度、寛解するか否かの状況判断に時間がかかる。
- 患者が治療を独断で諦めたり医師から治療方針を切り換えられた際には、リバウンドのように増悪する。
[編集] 改善法
基本的に生活習慣病と同じく、肉体的にも精神的にもストレスを溜めないこと。睡眠時間を多く採る。疲労を避ける。風邪をひかない。痛くてつらくても皮膚を清潔に保つ。日光浴を多めにする。高脂肪摂取を避けて規則正しい食事を採る、怪我しない（外傷は新たな発症箇所を招きやすい）というストレス回避と矛盾した堅忍不抜の心掛けが大切である。
飲酒や喫煙との相関についてはデータがないものの、血管を拡張させたり収縮させたりする薬物が良い作用をするはずがない。
[編集] 関節症性乾癬
尋常性乾癬の諸症状に加え、全身の関節に炎症、強ばり、変形などが起こり、痛む。 関節症状はまさしく関節リウマチのそれと酷似しており、進行すると大変痛むものである。
代表的な部位は膝関節、指関節、手首、足首など。肋骨と胸骨の間の関節(胸鎖関節)、鎖骨と肋骨の間の関節、肩関節などに炎症が起こることもある。
又、関節炎に伴い全身の発熱をみることもある。
全身の痒みとともに関節に痛みがあるため、睡眠が妨げられたり、風呂・トイレなどの日常的な行動にも不自由を伴う場合があり、生活の質(QOL)の低下が見られる。筆記具や箸を持てなくなったり、着替えに介助がいることもあり、死に至る病ではないと理解していても、辛いものがある。
必ずしも尋常性乾癬が進行して、関節症性乾癬や下記の膿疱性乾癬となるわけではなく、いきなり関節症や膿疱が現れる場合もあり、病態の進行に関しては不明である。
治療薬は尋常性乾癬と同様である。内服薬は皮膚炎にも関節炎にも効果がある。
関節炎に関しては、通常整形外科でよく処方される鎮痛消炎剤(ロキソニン、モービックなど)を追加で用いることが多い。効用の現れる量を服用し続けると、消化器に薬剤性の潰瘍が出来ることがあるため、胃腸薬(ガスター、アルサルミンなど)を併用することがある。
又、外用薬(貼り薬:モーラステープ=サロンパスの治療施設向けの製品など)が処方となる場合がある。 この外用薬は、湿疹のある部位には基本的に使えないため、痒みを抑えることを優先するか、それとも痛みを抑えることを優先するかという究極の選択を迫られる場合もある。
[編集] 膿疱性乾癬
膿疱が皮膚内に出現する。尋常性乾癬の誤診による長期ステロイド投与で生じることがある。又、副腎皮質ステロイドなどの治療歴にかかわらず発症することもある。発熱などの全身症状が強いため、入院加療が必要。シクロスポリン・ビタミンAの内服などが必要となる。重症例では、ステロイドパルスなど短期大量ステロイド投与を行うこともある。
[編集] 滴状乾癬
皮疹は乾癬に類似するが、その一つ一つが小さい。菌状息肉症などの皮膚リンパ腫の前駆状態の場合がある。そのため、皮膚生検や異型リンパ球の有無を含めた精査が必要である。場合によっては、皮膚リンパ腫に準じた治療を早期に行うこともある。
[編集] 脚注
[編集] 関連項目
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