交通弱者
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交通弱者(こうつうじゃくしゃ)とは、日本においては概ね二つの意味がある。一つは、自動車中心社会において、移動を制約される人という意味である。もう一つは、交通事故の被害に遭いやすい人という意味である。
[編集] 移動制約者としての交通弱者
移動制約者という意味では、交通工学、まちづくり、福祉などの世界で用いられる。
その中心は、運転免許を持たない(持てない)か、自家用車を持たない(持てない)高齢者、子供、障害者、低所得者などである。一般に障害者とはされないが、てんかんなど特定の持病のため、法により運転免許を取得できない人も交通弱者と言えよう。
- 公共交通機関の廃止などで問題になるのがこの交通弱者の問題である。彼らは公共交通機関しか利用できないので、社会的に弱い立場に立っている。したがって、この交通弱者の問題を考えるのが今後のまちづくりの課題の一つである。
- 高齢者・障害者には例外(車を保有している実数)が多いが、率的には少ない。
- 障害者ではないが運転免許を取得できない人は、当人の選択の結果でなく、且つ障害者ではないため行政の保護の対象外でありながら、移動が制約されるという状況に置かれており、単純に高齢者や障害者への保障を深度化するだけで交通弱者の問題が解消するわけではない。
- 移動制約者たりえる原因のうちの一つである子供は、移動制約者でありながら通学など移動需要が極めて大きい。
なお、交通弱者であっても限られた地理的範囲ながら自身の意思で自由自在に移動できる交通手段として自転車があるが、坂道・凹凸など道路状態、降雨・降雪・暴風・炎天下など天候状態などに直接影響されるため、その多くが体力的問題を抱える交通弱者にとっては、あくまで代替手段に留まりがちである。また、転倒による負傷、まきこまれ事故のリスクも高齢者では無視し得ない。加えて、日本では自転車の「交通手段」としての位置付けが不明確なため、特に都市部で、自動車からも歩行者からも邪魔者として疎外され、交通行政からも自転車はその運行自体から税収が発生することがないこともあってか、単に邪魔者扱いされている例が多い。このため走りにくいのが実情である。放置自転車も、ある意味でその不明確な地位の現れと言える。
[編集] 交通事故の観点からの交通弱者
交通事故防止の観点から用いられる。子どもや高齢者など、歩行していて交通事故に遭いやすい人のことを指す。この場合、自動車が「強者」であり、加害者となるが、上記のように自転車が安心して通行できる走行レーンがきわめて不備な日本の都市では、状況によっては自転車ですら加害者になりうるので気配りが求められる。
ドライバー等にはこうした交通弱者に配慮した運転が要請される。