先任伍長
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
先任伍長(せんにんごちょう)とは、海上自衛隊の海曹士に共通する規律及び風紀の維持に係る体制を強固にするとともに上級海曹の活動を推進し、部隊等の任務遂行に寄与することを目的として、自衛艦など各部隊に置かれている海曹のことである。
目次 |
[編集] 概要
本来、士官と下士官・兵は異なった規律に服しており、下士官・兵の問題は、事情に通暁している古参下士官に処理させることが望ましい。そこで、米国海軍のマスター・チーフ制度(Master Chief Program)[1]をモデルとして、2003年(平成15年)4月に海上自衛隊に置かれたものである。
海曹士を取り締まるだけではなく、指揮官(艦長や司令官等)へ意見を具申することで部隊の融和団結等にも資する長所がある。先任伍長は、「先任伍長識別章」を着用する。
先任伍長の指定は、自衛艦にあっては、警衛海曹が指定される。自衛艦以外の部隊等にあっては、海曹長(当該部隊に配置されていない場合は1等海曹)の中から、責任感、協調性、規律、実行力、知識・技能、統率・指導力及び表現力の優れた者が指定される。
2004年(平成16年)3月26日には大湊衛生隊で海上自衛隊初の女性先任伍長(1993年(平成5年)に公募海曹として入隊した看護師)が指定された。
海上自衛隊の先任伍長制度は、陸上自衛隊及び航空自衛隊でも参考にされ、それぞれ「上級曹長」制度及び「准曹士先任」制度創設の契機となった。もっとも、陸空自衛隊が准尉を充てているのに対して、海上自衛隊のみ曹長を充てているという違いがある。
しかしながら、現在の海上自衛隊における先任伍長制度は、高齢化に伴い余剰となった曹長階級の雇用促進程度の意味合いしかなさない場合も多い。理想として、カリスマ的指導力による、部隊の有機的連携の強化が目されているが、事実上は定年退職前の名誉職の拡大に他ならないという意見もある。
代数 | 就任日 | 氏名 |
---|---|---|
初代 | 2003年(平成15年)4月 | 佐賀幾雄 |
第2代 | 2006年(平成18年)6月30日 | 畑中一泰 |
[編集] 任務
先任伍長は、部隊等の副長等の指導監督の下、海曹士の規律及び風紀の維持に当たるとともに、その服務を指導する。ただし、自衛艦にあっては、海曹士の規律及び風紀の維持並びにこれらに係る指導に関しては、その自衛艦の副長の調整の下、規定する警衛士官が指導監督を行う。
先任伍長は、前項の業務並びに海曹士の士気の高揚及び融和団結の強化に関し、副長等を通じ、その所属する部隊等の長に意見を述べることができる。
[編集] 海上自衛隊先任伍長会報
海上自衛隊先任伍長会報とは、先任伍長の活動状況の確認、要改善事項の摘出その他先任伍長制度の実施に関し必要な情報交換及び検討のため、海上幕僚長が、原則として毎年1回開催される会合である。
海上自衛隊先任伍長会報には、部隊等先任伍長を除く先任伍長を以て構成される。