千日手
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千日手(せんにちて)とは、将棋系のボードゲームにおいて駒の配置と手番が全く同じ状態が1局中に何回か現れること。将棋系のボードゲームではそれに対処するためのルールが存在する。
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[編集] 将棋における千日手
[編集] ルール
将棋においては駒の配置、両対局者の持ち駒の種類や数、手番が全く同じ状態が1局中に4回現れると千日手になる。千日手になった場合はその勝負をなかったことにして、引き分けとする。公式戦では先手と後手を入れ替えて、最初からやり直しとなる。ただし、一方が連続王手を繰り返したために千日手になった場合は、王手をかけていた方の負けとなる。
図の左側の盤面で、先手が後手玉に迫るには▲7一銀と打って詰めろをかける。後手は詰みから逃れるためには△7三銀打とするしかない。その後▲8二銀成△同銀と進むと、最初と全く同じ状態になる。この状態を繰り返すと千日手となる。
右側の盤面でも、▲2二龍△2四玉▲3三龍△1三玉と進むと元の局面に戻るが、この場合は先手が王手を繰り返しているため、先手が着手を変えなければならない。
[編集] 千日手を巡る出来事
かつて、木村義雄は名人戦で千日手回避を行い、それが元で敗北してしまった。観戦記者の坂口安吾はこれを厳しく批判し、「千日手を回避すると負けてしまう状況なら、勝負を重んじて千日手にするべきだ」と論じている。坂口の問題提起は千日手問題を論じるときに常に引き合いに出されるものであり、坂口の意見に反対するものとして「スポンサー側からお金をもらって棋譜を提供するのが棋士の仕事だから、千日手にしてしまうのはスポンサーに対して悪いのではないか」という意見が存在する。
以前は同一手順3回というルールであったが、同一局面に戻す手順が複数ある場合、このルールでは無限に指し手を続けることが可能であるため、1983年4月1日に現在のものに改定された。改定のきっかけになったのは1983年3月8日の米長邦雄-谷川浩司戦(名人戦挑戦者決定リーグ:現在の順位戦A級)であり、この対局では同一局面が9回出現している(谷川が打開し、米長が勝利)。
また、同一局面が4回現れなくても両対局者の合意があれば千日手が成立する。第59期名人戦(丸山忠久-谷川浩司)第3局(2001年5月8日)では、このルールによる千日手が成立した。
2006年7月2日に行われた丸山忠久-深浦康市戦(JT将棋日本シリーズ)では、同一局面が4回出現したが、対局者を含め関係者が気づかず、そのまま指し継ぎ、千日手とならなかった(丸山が打開し、深浦が勝利)。
[編集] その他のボードゲームにおける千日手
チェスでは千日手はパペチュアルと呼び、同一局面が3回現れた場合はどんな場合も引き分けとなる(ステイルメイトとは異なる)。連続チェックの千日手を特にパペチュアルチェックと呼ぶ。不利な側がパペチュアルチェックをかけ、強制的にドローに持ち込むこともできる。
シャンチーでは連続王手の千日手(長将、チャンジャン)は禁じ手であり、王手をかけている方は3回同じ局面が出現するまでに手を変えなければならない。
チャンギでは同一局面が3回現れた場合はどんな場合も引き分けとなる。
マークルックでは引き分けとなる。ただし、連続王手の千日手は王手をかけている側が手を変えなければならない。
将棋系のゲームではないが、囲碁でも三コウや長生などによって同一局面が反復されることがあり、日本のルールでは両対局者の同意によって無勝負とする。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 千日手考(もずいろ 風変わりな将棋の部屋)